政策・制度

政策・制度 2009-10年度政策制度要請

要求内容

1.格差・貧困社会の是正、セーフティネットの強化

  1. 雇用悪化により職や住まいを失った人たちに対して、総合的な相談(就労・生活・住宅・緊急貸付・多重債務、職業訓練など)をワンストップで行う仕組み、体制を整備する。
  2. 社会保障費抑制路線(毎年2200億円削減する2006年骨太方針)からの転換を明確に示し、国民生活の底上げやセーフティネットの強化を重視した予算編成を行う。
  3. 最低賃金を大幅に引き上げ、生活出来る賃金水準の確保をはかる。
  4. 労働者派遣法改正など、不安定雇用の解消や均等待遇を実現する法改正を行う。
  5. 雇用保険と生活保護との空白を埋めるため、雇用保険が適用されない非正規労働者や長期失業者等に対する公的扶助制度(第2のセーフティネット)として、「就労・生活支援給付制度」を恒常的な制度として創設・拡充する。
  6. 人間としての尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度への改善をはかる。
    1. ミニマム保障としての水準の確保
      生活扶助基準については、現行の給付水準の切り下げは行わない。基準のあり方については、国民生活のミニマム保障としての役割や国民生活全体に及ぼす影響も考慮し、当事者も含め国民各層による幅広い検討の場を設ける。
    2. 貧困に関する公的な調査
      生活保護基準以下での生活を余儀なくされている人たちの実数や生活実態について、既存の資産・所得、家計・消費調査等の統計も活用しつつ、政府の責任において調査し公表する。
    3. 制度の運用の改善
      1. 生活保護法の本来の趣旨に添った運用を徹底し、申請権や受給権を侵害する違法な運用(いわゆる水際作戦や硫黄島作戦)は、直ちに是正する。
      2. 生活保護のパンフレットや申請書を行政の各相談窓口に設置するとともに、ホームページや広報紙誌などにより市民に制度を周知させる取り組みを行う。
      3. 生活困窮者への電気、ガス、水道などのライフラインの供給停止は機械的に行わず、生活保護制度の紹介や福祉事務所への連絡・誘導を行うよう関係機関に徹底する。
      4. 受給者の権利擁護をはかるため、申請等に関する苦情や相談、不服申し立てを受け付け、調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。
      5. 自立支援プログラムにおいては、経済的自立(就労支援)のみならず、日常生活支援や社会生活支援も重視する。
      6. 福祉現場の業務拡大や自立支援業務の高度化等を踏まえ、ケースワーカー(福祉事務所職員)の増員、専門性の確保をはかる。
      7. 急増する生活保護需要に自治体が対応できるよう、生活保護給付費の自治体負担金の交付税算定を改善するなど、自治体財政を援助する措置を緊急に講じる。
    4. 以下の観点から、生活保護法の改正を行う。
      1. 水際作戦を不可能とする制度的保障を設ける。
      2. 保護基準の決定に対して、国会による民主的コントロールを行う。
      3. 「生活保護」から「生活保障」へと、名称変更も含め権利性を明確にする。
      4. 政府に毎年、最低生活の保障(捕捉率)に関する調査と国会への報告を義務づける。
      5. 「丸裸」にならないと保護しないために自立をかえって困難にしているという観点から、資産要件の緩和や、余力を残した段階での多様な支援給付(住宅・医療など)を検討する。
      6. 地方の財政負担を軽減する方向で見直す。
  7. ネット・カフェ難民やホームレス等への住宅・就労支援を拡充する。
  8. 貧困の世代間連鎖を絶ち、一人親世帯の子どもの教育と安定的就労の機会の拡大をはかるため、民間金融機関が取り扱う「教育ローン」利用者への国の助成制度を創設する。
  9. 非正規雇用労働者や職を失った人に対する生活支援的共済制度を整備するにあたり、一定の公的支援を検討・実施する。

2.多重債務対策

  1. 「多重債務問題改善プログラム」に基づき、関係省庁の十分な連携のもとに、国・自治体・関係者が一体となって実効性のある施策を確実に実行する。
    1. 相談窓口の整備・強化について、体制の拡充、相互の連携、質の向上をはかるなど可能な限り前倒しをはかるとともに、各施策についても期限を設定して速やかに実行する。国の多重債務者対策本部において、定期的に施策の進捗状況のフォローアップを行うとともに、有識者会議において検証・評価、追加施策の検討を行う。
    2. 自治体に配置する消費生活相談員の期待される役割に鑑み、十分な権限の付与と待遇の改善をはかる。
    3. 民間非営利(労金・生協・NPO等)の活用による低利融資制度の構築によって、勤労者向けセーフティネット貸付の制度拡充をはかる。その際、緊急経済対策で中小・小規模企業等に30兆円(09年度補正予算案でさらに15兆円の上積み)の保証枠が設定されたことに鑑み、同様の政策的配慮による保証制度の支援策を検討する。
    4. 低所得者向けの給付と貸付制度の棲み分けをはかるとともに、生活福祉資金貸付制度については、貸付制度の保証人要件の撤廃、手続きの簡素化、実行期間の短縮など使い勝手の良い制度に見直しをはかる。なお、多重債務者向けのスキームにあっては、生活再建途上の見守りなどサポート体制を構築する。
    5. 各都道府県に設置された「多重債務者対策協議会」を形骸化させず、実効的な施策を検討・推進するため、労働者福祉団体や「被害者の会」、社会福祉協議会も含めたネットワークとして強化する。
    6. ヤミ金融の撲滅に向けて取締りの一層の強化をはかる。とくに、ヤミ金融の「三種の神器」のうち、預金口座凍結・携帯電話の利用停止と利用者捕捉はヤミ金融の道具を奪い追い詰める重要な手段となるので、関係法令の整備に加えて関連監督官庁・関係機関との連携により一層の有効な施策をはかる。
  2. 改正貸金業法を早期に完全施行し、出資法の上限金利の引き下げ、総量規制の導入を実施する。(改正貸金業法が本年12月を目処に完全施行を迎える。2006年12月の同法成立時に『附則』として「見直し条項」が盛り込まれたが、この趣旨は改正に向けた前向きなものであって議論の後退を保証したものではない。よって、完全施行にむけての適切な対応を求める。)
  3. 自殺総合対策大綱の実施にあたっては、「借金は必ず解決できる」ことの啓発や相談窓口への誘導が緊急かつ有効な自殺防止策であるとの観点から、予算の配分・施策の実行にあたっては多重債務対策とも連携して重点的に取り組む。また、民間団体による自殺防止看板設置活動を政府としても積極的に評価し、全国的に広げるための環境整備を行う。

3.消費者政策の充実強化

  1. 消費者行政を一元化した新組織(消費者庁ならびに消費者委員会)を2009年度の早期に創設し、業務を滞りなく開始する。
  2. 消費者行政の一元化と合わせて、新組織が計画的・効率的に業務がすすめられるよう、消費者基本計画のありかたを抜本的に見直す。
  3. 各省庁に消費者政策専任セクションを設置するなど、各省庁の行政執行全体における消費者視点の強化策を講じる。
  4. 地方の消費者行政に携わる人材の支援・育成、相談体制の強化、行政処分の執行体制の強化、予算の確保など地方消費者行政の充実・強化をはかる。地方消費者行政活性化事業について、人件費等へ活用などを含め用途のあり方を拡充する。また、地方消費者行政支援策について、地方消費者行政活性化事業終了後の4年後以降のあり方を検討する。
  5. 少額多数被害者を救済するために、消費者団体訴訟制度への損害賠償請求権の導入や違法収益の剥奪に関する検討を進める。
  6. 各省庁が自治体・教育機関・消費者団体等と連携し、消費者教育の充実をはかる。
  7. 消費者団体訴訟制度を担う適格消費者団体や、消費者啓発を行っている消費者団体への助成、消費者団体向けの研修など、消費者団体の育成・機能強化を行う。

4.中小企業勤労者の福祉・福利格差の是正

  1. 国庫補助廃止に伴い、中小企業勤労者福祉サービスセンターの自立と再生に向けて、広域化を推進するとともに、勤労者の暮らしと福祉に関する総合的福祉センターをも展望し、魅力あるサービス内容への抜本改革を進める。
    1. 全ての会員がサービスを気軽に利用できるサービス体系に改革する。
    2. 万が一の時の保障を重視した選択型の大型共済の開発・導入を進める。
    3. 地域の福祉団体やNPO等とのネットワークにより、生活福祉相談、子育て・介護支援、自己啓発、生涯生活設計支援、ワーク・ライフ・バランスなど、勤労者の多様なニースに応えるサービスを展開する。
    4. 大企業や公務部門、非正規労働者も含めた地域の全勤労者を対象とした総合福祉サービス(選択するサービスに応じて会費も異なるシステム)をモデル事業として進める。
  2. 上記改革を加速するため、新たなスキームでの財政措置の検討も含めて、国の支援事業を拡充する。
  3. 中小企業勤労者福祉サービスセンターの再編(広域化と改革)を進めるにあたって、都道府県が積極的な役割を果たすよう、財政的措置も含め国の支援・指導を強化する。
  4. 中小企業勤労者福祉サービスセンターに法的根拠を与え、国、地方公共団体、事業主の役割、責務等を明確化するため、中小企業勤労者福祉法(仮称)を制定する。

5.子育て支援の促進

 仕事と育児の両立支援のため、ファミリー・サポート・センターの対応エリアや機能を2年間で重点的に整備拡充し、「病児・緊急預かり対応基盤整備事業」(2年間の時限措置)からの円滑な移行が可能になるようにする。

6.高齢者の暮らしの安心確保

  1. マクロ経済スライドを廃止する。また、年金額の改定にあたっては、物価スライド特例措置による減額改定は行わない。
  2. 後期高齢者医療制度を直ちに廃止する。また、医療費の患者一部負担は、70歳以上は1割負担とする。
  3. 介護従事者の新規不参入・離職を防止するため、賃金をはじめとする処遇の改善をはかる。
  4. 公的年金は全額受給者本人に支給することを原則とし、税、保険料の支払い方法は特別徴収と普通徴収の選択制にする。
  5. 所得税の公的年金等控除の最低保障額を120万円から140万円に戻し、老年者控除50万円を復活する。また、各種控除の縮小、廃止は行わない。

7.財形制度の改善

 魅力ある財形制度とするために以下の改善を行う

  1. 財形貯蓄制度の導入促進と融資制度の利用促進をはかるために、実効性のある周知広報活動および支援を行う。
  2. 非正規雇用者に対して、一般財形、財形年金、財形住宅の制度が利用しやすいように対策を講ずる。
  3. 財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄の非課税限度額を1,000万円に引き上げる。
  4. 非課税限度額を超えた金額のみ課税となる積立を認める。
  5. 非課税財形(住宅・年金)契約時の年齢または期間制限(新規契約時・受取時)を撤廃する。
    (年金・住宅共通)
    ・新規契約 55歳未満
    (年金)
    ・積立終了後の最大据置期間 5年
    ・受取開始年齢 60歳以降
    ・受取期間 20年以内
  6. 育児休業・休職期間は、積立中断期間には算入しない。
  7. 財形住宅貯蓄の増改築等における適格払出しの費用要件75万円超を30万円超にする。

8.共済制度の改善

  1. 遺族の生活資金確保のため、相互扶助に基づいて支払われる死亡共済金の相続税非課税限度額については、現行の法定相続人1人につき、500万円から1,000万円に引き上げる。
  2. 異常危険準備金について、火災共済等の損金算入限度を現行の100分の2.5から100分の5に引き上げる。
  3. 異常危険準備金の洗替保証率を現行の100分の40から100分の50に引き上げる。

9.食品の安全性確保

  1. リスク管理機関とリスク評価機関は、意見交換会、インターネット、パンフレットなどを用いて、全ての関係者とのリスクコミュニケーションを強化する。特に、消費者にとってわかりやすい情報提供を行う。
  2. リスク管理機関とリスク評価機関が違反事例を公表する際には、その違反によって生じる食品安全上のリスクを消費者が適切に判断できるような情報提供に努める。さらに、テレビや新聞等のマスメディアが消費者の主な情報源であることをふまえ、報道関係者向けにはより丁寧な情報提供を行う。
  3. リスク管理機関とリスク評価機関は、リスク分析のプロセスを効果的に進めるために、リスク評価とリスク管理の共通の作業計画を作るなど相互の情報の共有化や連携を強化する。加えて、リスク管理機関とリスク評価機関は、想定の枠を超えた食品に由来する健康被害に対して、食品防御の観点からの研究を進める。
  4. 食品安全委員会は、「食品安全委員会の改善に向けて(案)」で示した改善方策の実施期限と、作業スケジュールを明確にする。また、リスク評価機関として試験・研究機関の保有等の機能面や人材面などの体制を強化する。
  5. 食品安全委員会は、消費者行政を一元化した新組織創設後の食品安全行政において、新組織、食品安全委員会、リスク管理機関が担う役割について関係省庁と調整を行い、リスク分析の枠組みにおけるそれぞれの役割を早急に明確にする。

10.環境や防災に配慮した住宅整備の促進

  1. 新築、増改築に際し、国の指定するCO2削減等、環境に配慮した建築資材(サッシ類等)を使用した場合の助成金制度をさらに充実するとともに、適用基準の緩和を行う。
  2. 集合団地の建て替えにあたっては、災害時の避難場所機能を附加する等、地域全体の社会資本整備を行うよう事業主体に自治体が指導し、そのための容積率の緩和、道路整備費補助等を行う。

11.「協同労働の協同組合」の法制化

 「協同労働の協同組合」に法人格を与える法律を制定し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と就労機会の創出、仕事おこしを通じた働く者・市民による地域振興と公共の充実を推進する。

  1. 働く人々・市民による就労創出の促進と公共の充実を目的とする法律の制定
    既存の企業による雇用労働に依存するだけでは就労機会が得られない、あるいは極めて不安定な就労を余儀なくされる人々が、協同して就労機会を創出しようとする事業活動を促進するとともに、市民による公共の充実と地域の振興に資する仕事おこしの推進を政策目的とする法律を制定する。
  2. 協同労働を通じた、ディーセント・ワークの実現
    みんなが労働者でみんなで出資し経営するしくみを日本で整備し、自らの労働の質と人間性を主体的に高め、働きがいをもって働ける労働環境を働く者が自ら協同して創造し、ディーセント・ワークを実現する。
  3. 労働者・市民の社会連帯による仕事おこしと地域づくり
    剰余金の一定部分を組合員に分割しない社会連帯基金として、就労創出・仕事おこし能力の開発・地域福祉の向上に活用するしくみを整備し、必要な場合には、働く組合員と共に利用者・賛同する市民が組合員となる「マルチステークホルダー協同組合」を形成し、仕事おこしと地域づくりを推進する協同組合として設計する。
  4. 市民主体・自治体との協働による公共の充実
    行政サービスが民営化される時代に、市民が主体となって豊かな公共を充実させる事業活動に従事する上でもっともふさわしい仕組みとして、協同労働の協同組合の法律を整備する。

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