政策・制度

政策・制度 2010-11年度政策制度要請

要求内容

1.格差・貧困社会の是正、セーフティネットの強化

(1) 貧困の削減目標・行動計画を策定し、政策を総動員する(総論)

  1. 今後も毎年、相対的貧困率や生活保護捕捉率を政府の責任において調査し公表するとともに、属性・地域別の調査、きめ細かな実態把握を行う。
  2. 国民の6人に1人が貧困(2007年度相対的貧困率15.7%)という現実を直視し、国連ミレニアム開発目標にならい、国内の貧困削減について具体的な数値目標をかかげ、それに向けての行動計画を策定し政策を総動員する。

(2) 「新たなセーフティネット」の運用改善と恒久制度化

  1. 職や住まいを失った人たちに対する総合的な相談と支援(就労・生活・住宅・緊急貸付・多重債務、職業訓練など)をワンストップで行う仕組みを、年末年始対応から通年対応へと拡充する。このため、相談者の立場に立ってマンツーマンで専門的なアドバイスを行い、横断的に行政や地域資源とのコーディネートを行う「パーソナル・サポート・サービス」をモデル事業として推進する。
  2. 雇用保険と生活保護との空白を埋めるため暫定的に行われている「新たなセーフティネット」を、利用者の視点に立って使いやすい制度に改善をはかる。
    1. 十分な広報周知をはかり、実際に利用される制度にする。
    2. 各窓口では、相談者のニーズに即して適切な選択と迅速な利用ができるようにする。
    3. 本制度への誘導によって、生活保護の利用が不当に抑制されないようにする。
    4. 最低生活費以下の収入しかない人や高齢者に対しては貸付ではなく給付を原則とする方向で、就職安定資金融資、訓練・生活支援融資制度、総合支援資金貸付制度(融資)と生活保護(給付)の関係を再整理し、それぞれの役割分担のもとに実効的な自立支援ができるようにする。
    5. 反社会的勢力などによる制度の悪用に対しては、行政・警察等の専門機関の連携をはかり迅速・厳格な対応を講じる。
    6. 「緊急人材育成・就職支援基金」訓練の中で新設された「社会的事業者コース」を一般の職業訓練全般にも拡大するなど、社会的事業の人材養成と地域における雇用創出を連動させる仕組みを整備する。
  3. 前項の運用改善を積み重ねつつ、「つぎはぎ状態」で複雑化した制度を整理・簡素化し、トランポリン型の「第2のセーフティネット」(就労・生活支援給付制度)として恒久化する。また、「住まいは人権」との観点から、「住まいの貧困」に対するセーフティネット(住宅の現物給付または家賃補助、住宅手当の拡充・制度化など)を強化する。

(3) ナショナルミニマムの確保と生活の底上げ

  1. 貧困・格差の放置は社会的損失(コスト増)につながることを計数的にも明らかにし、その解消に向けてナショナルミニマムを確保し、予算を重点的に投下する。
  2. 地方分権改革の推進にあたっては、生存権や安全の確保、人としての尊厳に関わるサービスについては国が最低基準を設けることを前提とするとともに、当事者・社会的弱者の声が反映されるよう留意する。
  3. 最低賃金を大幅に引き上げ、生活出来る賃金水準の確保をはかる。
  4. 公的機関が民間企業などへ委託・発注する全ての事業において、適正な労働条件とサービスの質を確保するため、低価格入札に拘束された発注、不当な人件費や人員の削減、不安定雇用、下請け業者へのしわ寄せを排除する公契約基本法や条例を制定する。

(4) 人間としての尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度への改善

  1. 生活保護制度は「最後の」セ-フティネットであり、国の責任において確実な財源保障を行う。このため、生活保護費の全額国庫負担も視野に見直しをはかるとともに、当面、生活保護申請が集中している自治体への財政負担を軽減する仕組み(調整交付金や基金創設など)を早急に創設する。
  2. 福祉現場の業務拡大や自立支援業務の高度化等を踏まえ、ケースワーカー(福祉事務所職員)の増員、専門性の確保をはかる。
  3. 申請権や受給権を侵害する違法な運用(いわゆる水際作戦)を是正し、生活保護法の本来の趣旨に添った運用を徹底する。受給者の権利擁護をはかるため、申請等に関する苦情や相談、不服申し立てを受け付け、調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。一方で、保護費をピンハネする貧困ビジネスへの規制を強化する。
  4. 生活保護制度を広く市民に知らせ、申請書やパンフレットを福祉事務所や行政の各相談窓口に設置するなど、誰もが利用しやすい制度にする。
  5. 自立支援プログラムにおいては、経済的自立(就労支援)のみならず、日常生活支援や社会生活支援も重視し、支援体制の強化や民間団体との連携をはかる。
  6. 資産を使い果たさなければ保護しないために自立をかえって困難にしているという観点から、資産要件の緩和や、余力を残した段階での多様な支援給付(住宅・医療・介護など)を創設する。
  7. 雇用政策と社会保障との連携・拡充、第2セーフティネットの恒久化を含めた総合的な視点から日本の生活保障のあり方を見直すとともに、生活“保護”の名称変更を含め生存権保障を実体化する方向で生活保護法の改正を検討する。

2.多重債務対策

(1) 改正貸金業法完全施行後においても多重債務対策を強化し、引き続き関係省庁と十分な連携のもとに、国・自治体・関係者が一体となって実効性のある施策を確実に実行する。

  1. 政府「多重債務問題改善プログラム」の一層の強化を図るため、次の施策を重点的に取り組む。
    1. 民間非営利組織等(労金・生協・NPO等)を活用し、低所得者や債務整理後の借りられない人に対する個人向けセーフティネット貸付の拡充をはかる。その際、政策的配慮により民間金融機関等への支援策として保証制度の確立を検討する。
    2. 金融経済教育の強化に向けて、高等学校、大学等におけるカリキュラムの標準化の施策を検討し、官民が連携して具体化をはかる。
    3. 相談窓口の整備・強化について、都道府県に設置された多重債務者対策協議会における各部局間の連携を含む検証機能、施策構築が不十分であると思われることから、多重債務対策本部における定期的なフォローアップ、有識者会議においてもその検証・評価・追加施策の検討を行う。
    4. 自治体に配置された消費生活相談員に対する十分な権限の付与と待遇の改善をはかる。
    5. ヤミ金融撲滅に向けて引き続き一層の強化をはかる。
  2. 都道府県に設置された「多重債務者対策協議会」を形骸化させず、全ての都道府県に労働者福祉団体や「被害者の会」の参加を求め、社協も含むネットワークとして強化する。
  3. 生活福祉資金貸付制度について、所得制限の緩和、手続きの簡素化など、窓口となる社協の体制面も含めて更に整備をはかる。

改正貸金業法に関する内閣府令改正(案)による施策については、「借り手の目線に立った方策の推進」の趣旨に沿い有識者会議による十分な検証と対策を行う。

3.消費者政策の充実強化

  1. 地方消費者行政支援策について、地方財政法の改正など、国が恒久的に財政支援できるあり方を検討する。また、地方の消費者行政に携わる人材の支援・育成、消費者相談体制の強化、行政処分の執行体制の強化など、地方消費者行政の充実・強化をはかる。
  2. 少額多数被害の救済を実効化するために、消費者団体訴訟制度への損害賠償請求権の導入等、不当収益剥奪制度に関する検討を進め、2011年度通常国会に法案を提出する。
  3. 消費者団体訴訟制度を担う適格消費者団体や、消費者相談を行っている消費者団体への財政の支援について、2011年度から支援を行えるよう予算措置を講じる。また、情報面についても、相談者の個人情報に配慮しつつ、消費者相談を行っている消費者団体による相談・苦情情報の閲覧ができるようにする。

4.「新しい公共」を担う協同組合の促進

  1. 国連が2012年を「国際協同組合年」とすることを宣言し、各国政府に協同組合の育成・促進を求めていることを踏まえ、協同組合を「新しい公共」の担い手として積極的に位置づけ、その社会的役割・価値を高めていくための政策について検討に着手する。
  2. 「国際協同組合年」に際しての支援や国際会計基準への統一的対応など、協同組合に関わる事項について、総合的な調整や連絡を担当する政府窓口を設置する。
  3. 税制や会計制度の適用において、協同組合の独自性や社会的役割を考慮する。
    1. 協同組合の非営利の相互扶助組織としての社会的役割・公共的な役割と経営基盤の確立の重要性に鑑み、協同組合税制を堅持する。
    2. 法人課税の見直しにおいて、普通法人の法人税の税率引き下げを行う場合は、協同組合の税率も同率の引き下げを行う。
    3. 国際会計基準への対応検討において、非上場企業の会計基準と同様に、協同組合組織の特質も考慮する。
  4. 上記改革を加速するため、新たなスキームでの財政措置の検討も含めて、国の支援事業を拡充する。
  5. 「協同労働の協同組合法」を速やかに制定する。また、社会的に排除された人々の就労を通じた社会参加や「地域雇用創造」を促進する担い手として、「協同労働の協同組合」や社会的企業の果たす役割を重視し、その育成・支援を充実させるとともに、コミュニティにおける就労と事業化を促進するための条例制定を推進する。
  6. 「新しい公共」を推進するにあたっての行政と非営利・協同セクターとの関係を、単なるコスト削減や下請け型の業務委託ではなく、目的や基準を明確にした上での対等なパートナーシップに基づく関係へと再編成する。

5.中小企業勤労者の福祉格差の是正

  1. 中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、国・自治体・事業主の役割・責務等の明確化、勤労者福祉に関する制度運用への労使の参画促進、ワーク・ライフ・バランスの推進等をはかる観点から、関係法制を整備する。
  2. 中小企業勤労者福祉サービスセンターの自立と再生に向けて、広域化を推進するとともに、勤労者の暮らしと福祉に関する総合福祉センターをも展望し、魅力あるサービス内容への抜本改革を進める。
    1. 全ての会員がいつでもサービスを気軽に利用できる仕組みを確立する。
    2. 既存の企業内福利厚生と重複せずに、従業員ニーズに合わせてサービス・会費が選択できる複数会員制度の導入を進める。
    3. 万一の時の保障を重視した大型の共済を選択できる制度の開発・導入を進める。
    4. 地域の福祉団体やNPO等とのネットワークにより、個別企業では提供困難な子育て・介護支援、生活福祉相談、生涯生活設計支援、自己啓発、健康増進、生きがいづくりなど、ワーク・ライフ・バランスの支援や勤労者の多様なニーズに応えるサービスを提供する。
    5. 国庫補助廃止を機に、大企業や公務部門からの福利厚生事業の受託化を積極的に進め、非正規労働者や退職者も含め地域の全勤労者を対象とした事業展開をはかる。
  3. 中小企業勤労者福祉サービスセンターの再編(広域化と改革)を進めるにあたって、都道府県が積極的な役割を果たすよう、国の支援・指導を強化する。また、地域における勤労者のライフサポート事業の促進やサービスセンターの統合・事務の集中化を支援するための基金の造成など、2010年度末での国庫補助廃止に変わる新たなスキームでの国の支援策を早急に検討し、2011年度から実施する。

6.勤労者の生活設計・保障への支援

財形制度の改善

  1. 財形貯蓄制度の導入促進と融資制度の利用促進をはかるために、実効性のある周知広報活動および支援を行う。
  2. 非正規雇用者に対して、一般財形、財形年金、財形住宅の制度が利用しやすいように対策を講ずる。
  3. 財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄の非課税限度額を1,000万円に引き上げる。
  4. 非課税限度額を超えた金額のみ課税となる積立を認める。
  5. 非課税財形(住宅・年金)契約時の年齢または期間制限(新規契約時・受取時)を撤廃する。
    年金・住宅共通
    ・新規契約 55歳未満
    年金
    ・積立終了後の最大据置期間 5年
    ・受取開始年齢 60歳以降
    ・受取期間 20年以内
  6. 育児休業・休職期間は、積立中断期間には算入しない。
  7. 財形住宅貯蓄の増改築等における適格払出しの費用要件75万円超を30万円超にする。
  8. 勤務先の都合により離職した失業者に対して、非課税適用継続期間の延長と非課税財形を払出し・解約する際の適格払出しの要件を緩和する。

共済制度の改善

  1. 遺族の生活資金確保のため、相互扶助の原理に基づいて支払われる生命共済および傷害共済(交通災害共済)の死亡共済金の相続税非課税限度額については、現行限度額(「法定相続人数×500万円」)に「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算する。
  2. 異常危険準備金の洗替保証率を現行の100分の40から100分の50に引き上げる。

7.安心・信頼できる社会保障の構築

(1) 子育て支援

 仕事と育児の両立支援のため、夜間や病児・病後児等の緊急預かりニーズの増大に応え、ファミリー・サポート・センターの未設置市町村の解消や緊急預かり対応の促進・拡充をはかるとともに、制度の再編にあたっては、既存制度での利用者がサービスを継続できるよう万全な移行措置を講じる。また、地域において住民が病児保育や緊急預かりも含めた適切な子育て支援サービスを確実に受けられるよう、市町村の責務の明確化とそれに見合う財源保障、政策プロセスへの多様な担い手の参画を促進する。

(2) 年金制度

  1. 新たな年金制度については、年金受給者の意見反映ができる場を設ける。
  2. 既裁定者(年金受給者)に基礎年金の保険料の追加負担を強いる制度としない。
  3. 年金額の改定にあたっては、マクロ経済スライドを廃止する。
  4. 公的年金は全額受給者本人に支給することを原則とし、税、保険料の天引きは本人の選択とする。
  5. 所得税の公的年金等控除の最低保障額を120万円から140万円に戻し、老年者控除50万円(65歳以上)を復活させる。

(3) 医療・介護

  1. 高齢者医療制度改革会議の議論を促進し、新たな医療制度への移行を速やかに行う。
  2. 介護従事者の人材を確保するため、賃金等の処遇を改善する。
  3. 介護サービスの自己負担は、定率1割を引き上げない。
  4. 2011年の介護保険制度の改定においては、「生活援助」の重要性を再確認し、介護報酬改定などで、「身体介護」と同等の位置づけとする。
    既存の企業による雇用労働に依存するだけでは就労機会が得られない、あるいは極めて不安定な就労を余儀なくされる人々が、協同して就労機会を創出しようとする事業活動を促進するとともに、市民による公共の充実と地域の振興に資する仕事おこしの推進を政策目的とする法律を制定する。

8.くらしの安全・安心の確保

(1) 食品の安全性確保

  1. 消費者庁は、関係省庁と調整を行い、食品安全行政における、リスク評価機関(食品安全委員会)と、リスク管理機関(消費者庁、農林水産省、厚生労働省、環境省)が担う役割を明確にする。また、消費者庁内の食品安全分野を担当する部署及び機能を明確にするため、「食品安全課」の設置など、組織再編を含めた検討を行う。
  2. 消費者庁・農林水産省・厚生労働省・食品安全委員会は、食品テロ等従来の想定の枠を超えた食品に由来する健康被害に対して、食品防御の観点からの研究を進める。

(2) フードバンク

 食品廃棄・ロスを削減し食品として有効に活用する観点から、「新しい公共」の担い手としてのフードバンク活動を促進するための補助事業を拡充する。また、食品をフードバンクに提供する企業への税制優遇措置や、国や自治体の備蓄米・食糧等の活用など食料安定供給策、災害時における食料支援システムとしての構築などについても検討する。

(3) 環境

 食品リサイクル法における「登録再生利用事業者制度」や「再生事業計画認定制度」にならい、生協や小売業者が行う資源回収・廃棄物資源化等の活動やそれらの事業者が、廃棄物処理法における特例と位置づけられる制度を創設する。

(4) 環境や防災に配慮した住宅整備の促進

  1. 新築、増改築に際し、国の指定するCO2削減等、環境に配慮した建築資材(サッシ類等)を使用した場合の助成金制度をさらに充実するとともに、適用基準の緩和を行う。
  2. 集合団地の建て替えにあたっては、災害時の避難場所機能を附加する等、地域全体の社会資本整備を行うよう事業主体に自治体が指導し、そのための容積率の緩和、道路整備費補助等を行う。

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