連載

第2回

先進県から学び・熱い思いで創りあげた・寄り添い型支援システム

ファミリーサポートセンターのみなさん

● 就職支援、生活支援等の取組みのきっかけや経緯を教えてください。

 まず、石川県労福協から学んだ子育て支援です。急な残業やシフト勤務を含め、制度の隙間で困っている働く人々を支援するため、予定外や病児・病後、宿泊を伴う託児等の企画を厚労省に提案しました。その中で、ひとり親や生活の苦しい方々から「生活に困っている、仕事を紹介してほしい」といった相談を受け、制度活用以外もできる限りの支援を行い、3年で約200人を就職に繋ぐことができました。
 一方、徳島や山口の労福協の情報も参考に、就労支援に取り組みました。当時、連合と経営団体が共同で行っていた労使就職支援センターで、生活の安定には生活支援と就職支援を同時に行うことが必要という経験と知見を得ていました。リーマンショック後は政府の基金もでき、生活支援、職業訓練、就職支援、生活安定までの出口戦略を描いた事業を企画し、一人一人に寄り添い、行政や社協の制度を活用し、NPОとも連携する支援を実践しました。
 資金が足りない分は職員カンパやフリマも行うなど、悩みながらも明るく楽しく元気のある職場でした。自立に向かって歩みだす相談者の姿が私たちのやりがいの原動力です。
 ちょうどその頃、パーソナルサポートサービスを創ろうという動きの中心にいた内閣府参与の湯浅誠さんが沖縄の取組みに着目し、来県することになりました。行政・経営者団体・NPО等とも連携し、出口戦略を明確にしている取組みが、湯浅さんの描く新しい支援の姿と重なり、モデル事業がスタートしました。これが、連合や中央労福協の強力な取組みも得て、後に生活困窮者自立支援法に繋がったと思います。

エピソード②

相談支援より地域へのチラシ配布からスタート

チラシ配布メンバー

就職支援センター開所式

 「就職支援センター」は、2009年7月から県への事業提案が認められ困難者の生活支援と就職支援をワンストップで行う新たなシステムでスタートしました。しかし、開設したものの相談者はほとんど来ない状況の中、県営団地や市営住宅などへの周知広報のチラシ配布の日々が続いていました。
 一方。ハローワーク、市町村保護課や社協、ハローワークなど関係機関からは、新たな生活保護支援団体(怪しい組織)とみられ、協力要請に対しても冷ややかに「お手並みは拝見ですね」と言われて苦戦の連続でした。
 半年を経過するころから、保護課や社協などは対応できない困難者の就職実績が上がり始めると関係が良くなり、1年を過ぎる頃からはまともな団体(笑)と認知されるようになり徐々に連携もとれるようになりました。

エピソード③

マップおじさんと世話焼きお姉さん
(NHK「ハートネットTV」と、地元民放テレビの放送で一気にブレーク)

 2010年から始まったパーソナルサポートモデル事業は、ハローワークや自治体の支援機関では解決できないような、困難なケースの相談が寄せられてきます。
 人手不足のいまでは考えられませんが、リーマンショックの長引く影響のころは、働き盛りはもちろん若者や女性は、力量があっても仕事がない時期でした。働きたくても複雑な事情を抱える相談者、経済的な問題に加え高齢や病気などが重なり対応が難しいケースが数多くありました。
その相談者に真摯に向き合いその人に合わせた仕事の開発と紹介をする様子がNHK、と地元テレビ局で放映され新聞にも取り上げられました。
 高齢の女性で何か月もかかりやっと見つけた仕事、清掃の仕事するには床拭きマップを絞る力が弱く、企業実習での継続が難しくなっていました。それを見た男性相談員がホームセンターを何軒も廻り、足の力でマップを絞ることのできる安価な機材を探してきました。相談者に合わせた仕事のやり方を企業に提案することで就職が決定するストーリー。
 また、女性相談員が、住む家も食事もなく当方にくれた中高年の男性を優しく、ある時は厳しく相談者に寄り添い「相談者×相談員」で力を合わせ、先ずは住宅確保し、企業実習でつまずきながらも就職し自立に向かう様子が、リアルに心温まる雰囲気で放映されました。
 「マップおじさん」と「世話焼きお姉さん」のおかげで相談者の急増と関係機関や社会からの認知度が格段に高まりました。

玉城 勉

公益財団法人 沖縄県労働者福祉基金協会 前専務理事

1955年沖縄県生まれ。沖縄県職員労働組合委員長を経て、2002年に連合沖縄政策事務局長(副事務局長)。2002~2004年、任意団体の沖縄県労福協事務局長(非常勤)。2011年11月~2017年6月まで専任の専務理事。その間、数々のNPO設立や支援等に取り組む一方、内閣府パーソナルサポート検討委員会構成員として生活困窮者自立支援法の制度設計にも携わる。

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