連載

第3回

<よりそいホットライン>
相談者に寄り添い、社会的排除・孤立を救済!

よりそいホットライン電話対応の様子

 今回、紹介する「よりそいホットライン(以下、YHL)」事業は、2011年の3・11東北大震災を契機に「(一社)社会的包摂サポートセンター」が厚労省及び復興庁の補助金を得て実施している事業である。災害による避難者・被災者をはじめ、生活困窮者、DV・性暴力被害者、障がい者、ホームレスなど、様々な困難を抱えながら支援にたどりつけずにいる人や社会的に排除されがちな人から電話による相談を受け傾聴する。と同時に、必要に応じ面接相談や同行支援を実施して具体的な解決につなげる24時間、年中無休の「いつでも」「どこでも」「無料」の電話相談である。

 2012年、新潟県には、YHLの拠点がなかった。「新潟県は地域も広いし、高齢化率、自殺率ともに高い県であり、福島県からの被災者・避難者も多く抱えている地域である。それなのにYHLの拠点がないのは残念。PS事業を実施している労福協には是非、YHLセンターを立ち上げてほしい」と、社会的包摂サポートセンター(東京)から何度かオファを受けてきた。しかし、この年は、PS事業をスタートさせたばかりで、軌道に乗っておらず新規事業に手を出す余裕もなく「チョット待ってほしい」、というのが本音であった。

 年が明け2013年、YHL事業に対する中央労福協の活動方針も追い風となって、長岡市地域のNPOや福祉関係の相談員経験者の協力をいただき、十数名のスタッフをそろえ、「YHL新潟センター」を立ち上げた。当初、事業運営は中央・地方の連携がうまくいかず、“朝礼暮改とローカルルール”がまかり通っていた。それでも毎年、試行錯誤を重ねていく中で何とか落ち着き運営は定着してきたようだ。

 現在、北信越・南近畿ブロックの地域センターとして長岡市に拠点を構え、60数名(長野・富山・新潟・三重センター)の相談員とスタッフに支えられ事業展開している。 過去3万人を超えていた自殺者数は、全国自治体の自殺対策が本格化してきた時期とも重なるが、本事業のスタート後、減少傾向に推移していることからも自殺対策に一定の役割を果たしているものと確信できる。

 また、昨今は時代の流れを捉え若者のニーズを先にキャッチして、電話による対応だけでなく、SNS相談やアプリケーションによる相談にも取り組んでいる。直接、生の声が聴けず臨場感や相談者の感情等が把握しづらいという欠点もあるが、話をすることが苦手な若者にとっては、相談しやすいアイテムとなっている。従って、対応する相談員も必然的にパソコンやスマホのスキルアップが求められる。

 現在のブロック「北信越・南近畿地域センター」に至るまでには幾度となく変遷があった。スタート時の2012年度に、「YHL新潟センター」として立ち上げてからの3年間は、労福協から役員派遣はしていたが、直接の受託団体ではなかった。受託していた団体の組織事情により、2015年度から2018年度までの4年間、その団体に代わって新潟県労福協が受託してきた。

 しかし、北信越から南近畿までと活動エリアが広域(複数の他県)に及ぶようになって、「新潟県内労働者の福祉向上をめざす」という労福協の事業目的から、拡大解釈も限界にあり、労福協に代わる事業の受け皿として新たな団体の確保が求められていた。
 当センターは、労福協として最後の受託となる2018年度の事業推進と並行して、NPO法人立ち上げの準備を進め、労福協に代わる受託団体、「NPO法人場作りネット(長野県上田市)」を立ち上げ、2019年度事業から受託している。このことにより、7年間におよんで関わってきたよりそいホットライン事業は、役員の派遣も含め、直接的には労福協とは縁が薄くなったがNPOの団体会員として協力関係は維持している。

山田 太郎 さん

一般社団法人 新潟県労働者福祉協議会 前専務理事

新潟県長岡市生まれ。JP労組新潟連絡協議会議長を経て、2011年6月から6年間、新潟県労福協専務理事に就任。厚生労働省の委託事業として、生活困窮者自立支援事業(パーソナル・サポート)や寄り添い型相談支援事業(よりそいホットライン)を受託。
その過程において毎日の食事にこと欠く相談者への食糧支援の必要性を感じ、民間団体と一緒に「フードバンクにいがた」を立ち上げ、現在も活動に携わっている。

戻る

TOPへ