連載

最終回

―地域とともに歩む―
ろうきん福祉財団と連携した活動

にいがた福祉リーダー塾

 一般財団法人新潟ろうきん福祉財団(ろうきん財団)は、新潟県労働金庫設立30周年を契機に1983年に設立された。持続可能な地域づくり事業、ライフプランセミナーなど県民の福祉向上や労働者に関わるセミナー、NPO等への助成や大学生・高校生への奨学金の貸与・給付など主な事業としている団体である。

 その中でも、NPO等助成に対する地域からの期待は大きいものがあり、年間1団体100万円前後(審査で確定)を助成するというものである。2013年に一般財団法人へ移行したことを機にさらに事業が拡大され、労福協運動と連携し、資金面でも大きなバックアップをいただいている事業がある。それが「ワーク&ライフフォーラム(以下、W&L)」と「にいがた福祉リーダー塾」である。

 人間らしく生き、働き、暮らすことのできる社会の再生をめざす取り組みが全国各地で芽生え、広がっている。W&Lの開催趣旨は、新潟県において、これらの取り組みを持ち寄り労福協運動に求められる今後の役割と機能発揮について、研究・確認する場とすることにあり、県内各地で持ち回り開催してきた。

 具体的には、①県民・勤労者の共感が得られる社会運動、②地域に根ざしたライフサポート活動、③労働者福祉運動の基盤強化とウィングの拡大、④協同事業の社会的価値と力量を高める活動など、4本の柱により組み立てられ、まさに労福協運動のめざす活動そのものである。毎年、フォーラムは県内500名規模、セミナーは地域200名規模(3ヶ所)で開催される交流イベントは6年が経過した。このフォーラム・セミナーを通じて労働者福祉運動に携わる諸団体をはじめ、地域課題に取り組むNPOや市民活動団体、自治体とのつながりは拡がっている。

 私は、様々な場で、「タテ糸、ヨコ糸で織り成す地域のセーフティネットをめざす」というフレーズをよく使ってきた。組織には、それぞれの特性があり、労福協の枠組みでいうと連合、労金、全労済を中心とした戦後労働運動のタテ組織の運営が軸となっている。しかし、NPOや市民活動団体の皆さんとのおつきあいの中で、組織性はないがタテ組織にはない、非常にフラットで自由気ままな意見が出やすい運営を知ることができた。
 このワーク&ライフフォーラムやセミナーは、タテ・ヨコ組織の特性を生かし、お互いの組織にないものを補完し合うという、まさにコラボレーションである。地域の課題を共有し活動をともにすることによって壁は低くなり融和・融合がはかれる。2013年から2022年までの10年計画のフォーラムであるが、終わる頃には、目的も達成され県内地域の景色も変わってくるのではないか。

 にいがた福祉リーダー塾は、東部ブロック労福協が設立40周年を記念して実施してきた福祉リーダー塾の新潟版として開催してきた。職場や地域、社会運動のリーダー育成を目的に、これまで6回開催し150名の仲間が受講している。戦後労働運動や労働者福祉運動、労働金庫運動、全労済運動の推移と検証など、昨今、労働組合も余裕がなくなったのか関心がないのか、こうした学習の機会は少なくなったようだ。その意味で、このリーダー塾の関心度は高く、「初めて聞いた」、「知ってよかった」、「目からうろこ」という、受講後の感想も新鮮味があり好評を得ている。

 にいがた福祉リーダー塾で学んだ知識を行動に移すことを目的に、「座学から実践へ」をコンセプトに毎年、「未来塾」と銘打って卒塾生の交流を兼ねた実践講座を実施している。卒塾生の中から年度単位の世話役を選出し、地域のNPO団体との交流や体験学習などを中心に講座の企画・立案を主体的に行っている。いずれこの福祉リーダー塾から次世代の労働者自主福祉運動を担う逸材が輩出できるのではないかと期待している。

 最後に、この連載を通じ新潟県労福協の活動をいくつか紹介してきた。繰り返しになるが、県内各地に拠点を置き地域で活動を展開しているLSCと培った地域ネットワークがこれらの活動を支えていることは疑う余地もない。そして、いずれの活動にも共通するキーワードは“地域”ではないだろうか。住んでいる地域をベースに人とひとがつながり、そこから運動は確実に拡がっていると確信できる。
 この間の労福協運動と多方面にわたる多くの方々との出会いと同時に、今回、新潟の労福協運動を紹介する機会を与えていただいた中央労福協に感謝したい。

山田 太郎 さん

一般社団法人 新潟県労働者福祉協議会 前専務理事

新潟県長岡市生まれ。JP労組新潟連絡協議会議長を経て、2011年6月から6年間、新潟県労福協専務理事に就任。厚生労働省の委託事業として、生活困窮者自立支援事業(パーソナル・サポート)や寄り添い型相談支援事業(よりそいホットライン)を受託。
その過程において毎日の食事にこと欠く相談者への食糧支援の必要性を感じ、民間団体と一緒に「フードバンクにいがた」を立ち上げ、現在も活動に携わっている。

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