2006年12月13日

貸金業法等改正法の成立にあたって(声明)

労働者福祉中央協議会
会長  笹森 清

  1.  本日、参議院本会議において、貸金業法等改正法が全会一致で可決・成立した。金利引き下げまで3年を要するものの、出資法上限金利を20%に引き下げ、みなし弁済規定を撤廃する道筋をつけ、あわせて貸金業の過剰与信や過酷な取り立て等に対する包括的な規制強化を打ち出す画期的な法改正が実現した。341万人の署名、43都道府県議会、1,136市町村議会での意見書採択などによる国民運動の成果として高く評価する。ご協力いただいた労働組合・事業団体をはじめ多くの勤労国民、法改正にご尽力いただいた政党、議員の方々に敬意を表し、心から感謝申し上げる。

  2.  懸念された課題について、非営利・低利で融資活動している市民バンクが存続できるよう見直し(参入要件の適用除外)を行うとの答弁・附帯決議が得られるなど、前進が見られた。また、3年後の見直しについては、「上限金利引き下げ・みなし弁済規定撤廃といった法律の根幹部分は見直さない」との大臣答弁を得て、一定の歯止めをかけることができた。特例金利や利息制限法金利の実質的引き上げが再浮上する可能性は完全には消えていないが、セーフティネット拡充等の取り組みにより、逆戻りさせない実態をつくりあげていくことが必要である。

  3.  概ね3年を目処とする上限金利引き下げについては、「可及的速やかな施行に努める」(附帯決議)とともに、利息制限法の上限を超えた違法な金利の広告は認めないなどの措置を通じて、施行前の段階から実質的な貸出金利の引き下げを促す取り組みが必要である。
    審議の過程で問題となった貸金業界によるカウンセリング・消費者教育の中立性の担保や、不当利得である過払い金の返還の必要性についても、政府・業界の真摯な対応を求めたい。

  4.  今回の法改正をもって「脱・高利貸し元年」の新たな歴史が幕を開ける。しかし、残された課題は多く、多重債務社会からの脱却に向けた取り組みは、これからが本番だ。内閣官房に設置される予定の多重債務者対策本部において、現場の声を反映した実効的な施策を早急に具体化し、官民挙げての取り組みに邁進しなければならない。

  5.  多重債務者の相談体制やセーフティネットの拡充、多重債務に陥らないための「賢い消費者教育」など、私たち労働者自主福祉活動に関わる領域も大きい。「高利貸しのない社会の実現」は労働者福祉運動の原点のひとつでもあり、中央労福協としても、今回の運動を通じて広がった法曹界や市民団体とのネットワークを生かし、連携して一層の取り組みを進める。

以上


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