相談事例Q&A

病気やけが(健康保険)

Q1

傷病手当金の報酬との調整

 先日、休日中に交通事故にあい、3か月以上入院しなければならなくなりました。
 このような理由で会社を休んだ場合、保険がもらえるそうですが、いくらもらえるのでしょうか?会社は、保険の差額として給料の4割を支給してくれるそうですが、それでも保険はもらえるのでしょうか?

A1

傷病手当金と報酬との差額が支給

 健康保険の被保険者が業務以外の理由の病気やけがのため、会社を休んだ場合には傷病手当金が支給されます。
 傷病手当金は次の要件を満たしたときに支給されます。

1)病気やけがのため療養中であること(自宅療養を含む)
2)労務に服することができないこと
3)休んだ日から起算して3日を経過していること
 (3日続けて休業した場合に第4日目から支給されます。)
4)報酬が受けられないこと

 ご質問の場合、会社を休んだ日の第4日目から1年6カ月の間、けがのため仕事ができず、会社を休んだ日について傷病手当金が支給されます。最初の3日間は待期期間といって、傷病手当金は支給されません。

 傷病手当金の額は、通常は休業1日につき、支給開始日以前12ヵ月を平均した標準報酬日額の3分の2が支給されます。
※標準報酬日額とは、標準報酬月額を日額にしたものです。(→健康保険・短期共済 解説/標準報酬月額

 支給額:支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)×日数
支給開始日とは、一番最初に傷病手当金が支給された日のことをいいます。

 支給開始日の以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次の[1]と[2]を比べて少ない方の額を使用して計算します。

[1]支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
[2]28万円(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額)

 ただし、傷病手当金は、報酬の全部又は一部を受けることができる場合には、支給されません。ご質問のように、会社が通常の給料と傷病手当金の支給額との差額を支給して通常の給料の額と同じ額にしようとした場合でも、その差額は報酬が支払われたことになってしまいます。

 このように、報酬の一部が支給され、その額が傷病手当金の額よりも少ないときは、その差額が支給されることになっています。
 したがって、ご質問の場合の支給される傷病手当金は、標準報酬日額の3分の2から報酬の4割相当を引いた差額が支給されることになります。

図解

社会保険労務士 根岸 純子

Q2

高額療養費について

 先日、癌と診断され、手術を受けました。
 早期に発見されたため、手術も簡単で2カ月ほどで退院できるそうですが、治療費がかなりかかってしまいました。治療費が高額の場合、戻ってくると聞きましたが、いくら位もどってくるのでしょうか?8月25日に入院したのですが、10月10日には退院できるそうです。

A2

一定額を超える場合は、高額療養費が支給。

 健康保険の被保険者の一部負担金は現在3割となっていますが、その負担額が高額になった場合には、高額療養費が支給されます。

 高額療養費は、同一医療機関で同一月に支払った額が下表の高額療養費算定基準額を超えた場合に超えた分が支給されます。高額療養費算定基準額は、標準報酬月額によって、ア~エの区分と市町村民税非課税者等の低所得者(区分オ)の5区分に分けて定められています。

○70歳未満の場合の高額療養費算定基準額

区分 標準報酬月額 高額療養費算定基準額
原則 多数回該当
83万円以上 252,600円+(総医療費-842,0000円)×1% 140,100円
53万円~79万円 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
28万円~50万円 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
26万円以下 57,600円 44,400円
低所得者 35,400円 24,600円

(注)1.低所得者とは、市町村民税の非課税者及び免除者とその被扶養者。
   2.「区分ア」または「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、
   標準報酬月額での「区分ア」又は「区分イ」の該当となる。

 例えば、かかった医療費が同一月に50万円とした場合、標準報酬月額28万円~50万円の方の場合は次のとおりになります。

80,100円+(500,000円-267,000円)×1%=82,430円(自己負担限度額)

500,000円-82,430円=417,570円(高額療養費)

 したがって、417,570円が高額療養費として支給されます。

 ご質問の場合も入院された医療機関で同一月に支払った医療費が所得区分による上記の表の金額を超えた場合は、超えた分が支給されます。

 ただし、高額療養費の同一月とは暦月単位になります。医療費の合計が高額でも2月またがって支払った場合は、それぞれの月ごとで計算されます。したがって、同一の疾病でも高額療養費の対象外になってしまう場合もありますので、ご注意ください。
 また、同一世帯(被保険者本人とその被扶養者)で同一月に21,000円以上支払った人が2人以上いるときは、それらを合算することができます。

社会保険労務士 根岸 純子

Q3

退職後の傷病手当金と失業手当

 現在、うつ病のため、長期間会社を休んでいます。
 大学を卒業して6年間、今の会社に勤めていましたが、回復の見通しもたたず、退職することにしました。今は、傷病手当金を受けています。支給を受けてから1年6カ月を過ぎていないのですが、退職をした後でも傷病手当金は受けることができるのでしょうか?また、退職をしたら失業手当はもらえるのでしょうか?

A3

傷病手当金は支給可能、失業給付は病気が回復後。

○傷病手当金
 退職をすると被保険者の資格は喪失してしまいますが、一定の要件を満たしたときは、支給開始日から1年6ヵ月を限度に傷病手当金が支給されます。
 一定の要件とは次のとおりです。
(1)資格を喪失した日の前日までに引き続き1年以上被保険者であったこと
(2)資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていたこと(報酬を受けていて支給が停止されていた場合でも支給されます)
 したがって、ご質問の場合は、引き続き支給開始日から1年6ヵ月を限度に傷病手当金が支給されます。

○失業給付
 雇用保険の基本手当を受けるには次の要件が必要です。
(1)失業していること
(2)離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上あること
 「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいいます。
 ご質問の場合のように、病気によって仕事ができない場合は「失業」には該当しないので、基本手当の支給を受けることができません。また、傷病手当金の支給を受けている場合は、その期間中は基本手当の支給は停止されてしまいます。
 このように病気などのため、すぐに仕事をすることができない場合は、受給期間の延長をすることができます。
 基本手当の受給期間は、原則、離職の日の翌日から起算して1年間となっています。基本手当はこの1年間の失業している日について支給されます。
 しかし、妊娠、育児、負傷、疾病等の理由により引き続き30日以上職業に就くことができない日がある場合には、職業に就くことができない日数を1年間の受給期間に加えることができ、最大4年間まで延長することができます。
 したがって、ご質問のケースでは受給期間の延長の申請をすることによって、4年間の間に病気が回復し仕事ができるようになった場合に、失業の認定を受けて基本手当の支給を受けることができます。
 なお、この受給期間の延長は、該当するに至った日(離職後において職業に就くことができない状態が30日を経過した日)の翌日から1ヵ月以内に、受給期間延長申請書に離職票を添えて、住所地を管轄する公共職業安定所に申請します。

社会保険労務士 根岸 純子

扶養

Q1

被扶養者について

 現在、妻は働いておらず、健康保険は自分の扶養に入れています。この4月から子供も小学校に入学し、時間もできそうなので、1日2時間から3時間ぐらいパートで働きたいと言っています。
 しかし、パートで働いても、収入が少ないので、引き続き扶養に入れておきたいと思っているのですが、できるのでしょうか?

A1

年収が130万未満で、被保険者の年収の2分の1未満であれば、被扶養者になれます。

 健康保険の被扶養者になることができるのは、主として被保険者の収入により生計を維持している一定の家族です。(参照→社会保険制度の要点/健康保険/被保険者等/被扶養者

 主として被保険者の収入により生計を維持している状態とは、次の基準をもとに判断されています。

・原則-年収が130万円未満であること。
 被扶養者の認定を受けようとする者の年収が130万円未満で、かつ被保険者の年収の2分の1未満であれば原則として被扶養者になることができます。

・例外-年収が被保険者の2分の1以上であっても130万円未満である場合、被保険者の収入によって生計を維持していると保険者に認められれば被扶養者になれることもあります。
(別居の場合、60歳以上、障害者の場合は別に認定基準があります。)

 したがって、パート社員として働いても上記の基準を満たしていれば、引き続き被扶養者になることができます。
 ただし、パート社員でも勤務時間、勤務日数がそれぞれ一般の社員の4分の3以上である場合は、パート先の社会保険の被保険者に該当しますので、ご主人の社会保険の被扶養者にはなれません。

社会保険労務士 根岸 純子

Q2

年金受給の被扶養者

 現在、同居をしている両親がいるのですが、父が退職をすることになりました。
 父は、定年退職後年金を受給しながら嘱託で働いていました。今後は両親を自分の健康保険の扶養に入れたいと思っているのですが、扶養に入れることはできるでしょうか。父は満63歳で、年150万円くらい、母は61歳で、年8万円くらい年金をもらっているそうです。年金をもらっていても扶養にいれることはできるでしょうか。

A2

年収が180万円未満で、被保険者の年収の2分の1未満であれば、被扶養者になれる。

 被保険者の実の父母の場合、主として被保険者の収入により生計を維持していれば、同居、別居を問わず被扶養者になることができます。
 主として被保険者の収入により生計を維持している状態とは、原則として次の基準をもとに判断されています。

・原則
 年収が130万円未満であること
 被扶養者になろうとする人の年収が130万円未満で、かつ被保険者の年収の2分の1未満であれば、原則として被扶養者になることができます。年収が被保険者の2分の1以上であっても、130万円未満である場合は、被保険者の収入によって生計を維持していると保険者に認められれば、被扶養者になれることもあります。

・60歳以上の場合
 被扶養者になろうとする人が60歳以上の場合や障害者の場合は、上記の「130万円未満」が「180万円未満」となります。

 したがって、ご両親とも60歳以上になっているので、年収が180万円未満でしたら、被扶養者になることができます。年金も収入に入りますので、年金のみの収入でしたら、ご両親とも被扶養者になることができます。
 ただし、お父様の場合、今まで嘱託で働いていたということですので、働いていた期間よりも年金額が増える可能性があるので、180万円を超えないか確認してください。
 また、お父様が退職をして雇用保険の基本手当の支給を受ける場合は、被扶養者になると基本手当の支給が受けられないので、基本手当の支給を受ける場合は、ご自身で国民健康保険に加入するか、任意継続被保険者になる必要があります。

社会保険労務士 根岸 純子

Q3

内縁の妻とその両親は被扶養者に入るか

 10年一緒に暮らしている内縁の妻がいます。
 妻はずっと働いていたのですが、体調を壊し、退職することになりました。妻には別に暮らしている両親がいるのですが、今まで妻の扶養に入っていました。(1)妻を私の扶養に入れようと思うのですが、できるのでしょうか?(2)また、妻の両親は被扶養者にできるのでしょうか?

A3

(1)内縁の妻でも被扶養者になることができる。
(2)内縁の妻の両親は同一世帯であることが必要。

 健康保険の被扶養者になれる家族の範囲は、被保険者の収入により生計を維持している人で次のように定められています。

(1)被保険者に生計を維持されていれば、同居でも別居でもよい人
 ・配偶者(届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
 ・子、孫、および兄弟姉妹
 ・父母、祖父母など直系尊属

(2)被保険者に生計を維持されていて、かつ、同一世帯に属する人
 ・伯叔父母、甥姪等とその配偶者、孫
 ・弟妹の配偶者、配偶者の父母や連れ子、など(1)以外の三親等内の親族
 ・内縁関係の配偶者の父母及び子

 したがって、内縁の妻の場合は「事実上婚姻関係と同様の事情がある者」として被保険者によって生計を維持されていれば、被扶養者になることができます。
 しかし、内縁の妻の父母の場合は、被保険者によって生計を維持されているだけでなく、「同一世帯に属する」ことも条件になります。
 ご質問の場合は、今は別に暮らしているということですので、今後、妻の父母の生計を維持することになったとしても同居をしない限り、被扶養者にすることはできません。

社会保険労務士 根岸 純子

出産

Q1

出産予定日と実際の出産日がずれた場合

 先日、妊娠が判明しました。
 予定日は11月15日です。出産の日の42日前から産前産後休業がとれるので、10月5日から休業に入ろうと思っています。産前産後休業中は出産手当金が支給されると聞いたのですが、もし、予定日が遅れてしまったり、早くなったりした場合は、出産手当金はどうなるのでしょうか?

A1

産前の起算日は遅れた場合は「予定日」、早い場合は「出産日」

 出産手当金は、被保険者が出産したときに、出産の日以前42日(多胎妊娠の場合98日)、出産の日後56日までの間において、労務に服さなかった期間に対して支給されます。
 産前の起算日は、出産した日が予定日以前の場合は「実際の出産日」、予定日後の場合は「予定日」となっています。産後の起算日は、予定日より早くても遅くても「実際の出産日」となります。

○出産日が予定日よりも遅れた場合

出産日が予定日よりも遅れた場合

 出産日が予定日よりも遅れた場合は、産前の出産手当金は、予定日以前42日間が支給されます。そして産後の出産手当金は、出産日から56日間が支給されます。この場合、予定日から出産日までに空白期間ができてしまいますが、出産手当金の支給は「産前休業の始まりの日から産後休業の終わりの日までの間」と解されていて、予定日から出産日まで分も支給されます。

○出産日が予定日よりも早い場合

出産日が予定日よりも早い場合

 出産日が予定日より早い場合は、産前の出産手当金は、出産日以前42日間が支給され、産後の出産手当金も出産日後56日間が支給されます。
 たとえば、予定日以前ちょうど42日前から産前休業を開始した場合、出産手当金の産前の起算日が早くなるので、予定日以前42日前の休業開始前は労務に服しているため、実際の産前休業は42日に満たなくなります。したがって、実際は42日分の産前の出産手当金の支給を受けられないことになります。
 この場合、既に産前休業分(42日分)の出産手当金の支給を受けているときは、その42日分の中に実際の出産日後の期間に相当する部分があることになるので、出産日後の出産手当金の支給とみなされます。したがって、産後の出産手当金は56日から出産日から予定日までの期間を引いた額が支給されます。

社会保険労務士 根岸 純子

Q2

流産した場合の出産手当金

 1か月ほど前、流産してしまいました。妊娠5か月目(130日)でした。
 妊娠をしてから、つわりがひどく、妊娠3か月目ぐらいから休業に入っていました。流産のあとは、しばらく休む予定です。この場合、出産手当金等の支給は受けられるのでしょうか?

A2

出産に関する給付は、妊娠4か月を超える出産について支給される。

 健康保険の被保険者が出産したときは、出産手当金と出産育児一時金が支給されます。

○出産手当金
 被保険者が出産したときに、出産の日以前42日(多胎妊娠の場合98日)、出産の日後56日までの間において、労務に服さなかった期間に対して支給されます。

○出産育児一時金
 被保険者が出産したときに、一時金として42万円が支給されます。

 出産に関する給付は、妊娠4か月を超える(85日以上)出産に限られています。
妊娠4か月を超えて(85日以上)いれば、生産・早産・死産・流産(人工流産を含む)を問わず、出産手当金、出産育児一時金は支給されます。
 したがって、ご質問の場合のように残念なことに流産された場合でも4か月を超えていれば、出産手当金と出産育児一時金は支給されます。
 出産手当金の支給に関しては、流産された日を出産日として起算します。3か月目ぐらいから休業をされているということですので、流産された日以前42日とその日後56日間について労務に服していない期間、出産手当金は支給されます。

社会保険労務士 根岸 純子

Q3

退職後の出産手当金

 12月に出産する予定になっています。今の会社には昨年の10月1日に入社しました。出産を機会に退職をするつもりです。
 会社にはその旨を伝えて了解を得ています。ぎりぎりまで働きたいと思っているのですが、体調が優れず、少し前に退職をしたいと考えています。退職をした場合、出産手当金等はどのようになるのでしょうか。また、退職後の健康保険はどのようにしたらよいのでしょうか?

A3

喪失前1年以上の被保険者期間が必要。

 被保険者が退職をして被保険者資格を喪失した場合、次の要件を満たしたときは、被保険者として受けることができるはずであった出産に関する給付(出産育児一時金)を最後の保険者から受けることができます。
[1]被保険者の資格を喪失した日の前日までに引き続き1年以上被保険者であったこと
[2]資格を喪失した日後6ヵ月以内に出産したとき

 したがって、ご質問のケースでは、9月30日以降に退職をすれば、出産育児一時金が支給されます。
 また、9月30日以前に退職をしても支給される場合があります。
 「被保険者の資格を喪失した日の前日までに引き続き1年以上」というのは、同じ会社である必要はありません。もし、今の会社の前の会社を退職して1日も空けずに今の会社に入社した場合は、「引き続き1年以上」被保険者であったことになるので、喪失した日後6ヵ月以内に出産した場合には、出産育児一時金は支給されます。

 次に退職後の健康保険についてですが、次の3通りが考えられます。
[1]ご主人に被扶養者になること
[2]国民健康保険に加入すること
[3]任意継続被保険者になること

 [1][2]の場合は、出産に関する給付は上記の喪失後の給付として支給されますが、その他の給付は加入の保険者から支給されることになります。保険料は[1]の場合は徴収されませんが、[2]の場合は前年の所得によって徴収されます。ただし、ご主人の被扶養者になる場合、出産手当金は収入とみなされるので、出産手当金の日額が被扶養者になることができる収入を超えるときは、被扶養者になることができない場合があります。
 [3]の場合は、喪失した日の前日までに継続して2ヵ月以上被保険者期間があり、喪失した日から20日以内に申請することによって継続して2年間、任意継続被保険者になることができます。任意継続被保険者になった場合は、健康保険の給付は一般の被保険者と同様の給付が支給されます。ただし、保険料は全額自己負担となります。

方法 [1]ご主人の被扶養者 [2]国民健康保険に加入 [3]任意継続被保険者
出産に関する給付 出産育児一時金は喪失後の給付として今までの健康保険から支給 支給されない
その他の給付 その他の給付は被扶養者として支給 その他の給付は国民健康保険の給付が支給 その他の給付も健康保険の被保険者同様に支給(傷病手当金は対象外)
保険料 保険料の負担なし 前年の所得による 全額自己負担で今までの保険料の2倍
一部負担金 医者にかかったときの一部負担金はすべて3割負担
その他 出産手当金の日額によっては、被扶養者になれない場合がある。 保険料は1年目は前年の所得があるため高くなることもあるが、2年目以降は仕事を辞めて収入が下がるので低くなることがある。 喪失した日の前日までに継続して2ヵ月以上被保険者期間があり、喪失した日から20日以内に申請することによって継続して2年間、任意継続被保険者になることができる。

社会保険労務士 根岸 純子

派遣社員・パートタイム

Q1

パートタイム労働者の雇用保険

 おととしまで働いていたのですが、一身上の都合により、退職をして失業手当を受給しました。
 現在、また仕事を探しているのですが、正社員での就職が見つかりません。しかたがないので、パートで働こうと考えています。でも、また失業したときのことを考えると、雇用保険に加入しておきたいのですが、パートでも雇用保険に入ることができるのでしょうか?

A1

パートタイム労働者も雇用保険が適用

 パートタイム労働者については、労働時間、賃金等の労働条件が就業規則、雇用契約書、雇入通知書等に明確に定められていて、次のいずれにも該当するときに、雇用保険の被保険者として取り扱うことになっています。

(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)31日以上引き続き雇用されることが見込まれること

 「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる場合」とは31日以上雇用が継続しないことが明確な場合を除き、この要件に該当することになります。
 例えば、次の場合には雇用契約期間が31日未満であっても原則として31日以上雇用が見込まれるものとして雇用保険が適用されます。

[1]雇用契約を更新する場合がある旨の規程があり、31日未満での雇止めの明示がないとき
[2]雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績があるとき

 この基準が適用されるパートタイム労働者とは、「その人の1週間の所定労働時間が、同一の適用事業に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間よりも短く、かつ30時間未満である」人をいいます。
 この基準を満たす労働条件によって、適用事業に雇用され雇用保険の被保険者になった場合には、その人が失業したときの被保険者期間の計算、基本手当の支給等について通常の労働者と同様になります。

社会保険労務士 根岸 純子

Q2

派遣社員の雇用保険の被保険者となる範囲は?

 先日、派遣社員として登録をして、このたび3ヵ月契約で派遣社員として働くことになりました。
 今までは、正社員としてしか働いたことがありません。派遣社員として働く場合、雇用保険はどのようになるのでしょうか?3ヵ月契約で9時から17時まで週5日働きます。3ヵ月後は更新となっています。

A2

一定の基準を満たせば被保険者となる

 登録型派遣労働者については、その就業形態は多種多様であり、臨時内職的にしか就労しない者等雇用保険の被保険者として取り扱うことが適当でない者が含まれているため、一定の基準を設けて、この基準を満たした場合に被保険者となることとなっています。
 適用基準は次のとおりです。

(1)31日以上雇用見込みがあること
 31日以上雇用が継続しないことが明確な場合を除き、この要件に該当することになります。
 例えば、次の場合には雇用契約期間が31日未満であっても原則として31日以上雇用が見込まれるものとして雇用保険が適用されます。

[1]雇用契約を更新する場合がある旨の規程があり、31日未満での雇止めの明示がないとき
[2]雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績があるとき

(2)1週間の所定労働時間が20時間以上であるとき

適用される場合の具体例

[1]同じ派遣元A社から、派遣先B社に1ヵ月、その後更新して同じB社に1ヵ月で通算して31日以上引き続き派遣されることが見込まれる場合

[2]同じ派遣元A社から、派遣先B社に1ヵ月、C社に1ヵ月、1ヵ月あけて通算して31日以上派遣されることが見込まれる場合

 派遣元事業主が、派遣労働者に対して雇用契約期間が満了するまでに次の派遣就業を指示しない場合には、派遣労働者が同ーの派遣元事業主のもとでの派遣就業を希望する場合を除き、雇用契約期間満了時に被保険者資格を喪失することとなっていますが、派遣労働者が引き続き同ーの派遣元事業主のもとでの派遣就業を希望している場合には、原則として、契約期間満了後1か月間は被保険者資格を継続することができ、契約期間満了時から1か月経過時点において、次の派遣就業(派遣先)が確定している場合には、被保険者資格を喪失させることなく、次の派遣就業が開始されるまでの問、被保険者資格を継続することができます。
 ご質問の場合、1ヵ月後にまた更新されるということですので、31日以上雇用見込みがあるものとして、雇用保険の被保険者になることができます。

社会保険労務士 根岸 純子

Q3

パートタイムの社会保険

 3月からパートタイムで勤務時間が5時間で週に3日働いています。
 今は夫の健康保険の扶養になっています。パート先の仕事が忙しく、1日6時間で週4日、来てもらえないかと言われています。そうすると、年収が130万円を超えてしまいます。その場合は夫の扶養から外れなければならないのでしょうか?そうした場合、健康保険や年金はどうしたらよいのでしょうか?

A3

パート先の社会保険か国民健康保険・国民年金に加入

 年収が130万円を超えてしまう場合は、ご主人の被扶養者になることはできません。その場合は、ご自身で社会保険(健康保険・年金)に加入することになります。
 パートタイムでも一定の基準を満たすことにより、健康保険・厚生年金保険に加入することができます。
 パートタイムの健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取扱い基準は次のようになっています。

[1]労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を総合的に勘案して、常用的使用関係にあると認められる場合は被保険者とする
[2]その場合、1日または1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数が当該事業所において同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間及び労働日数の概ね4分の3以上である場合は原則として被保険者とする

 例えば、通常の労働者の所定労働時間が8時間とすると、6時間以上が被保険者となることができます。日によって勤務時間が変わる場合は、1週間にならして判断します。
 ご質問の場合、現在は1日の労働時間が5時間ということですので、もし通常の社員の労働時間が8時間とすると、4分の3以上にはならないので、パート先の健康保険・厚生年金保険には加入することはできません。
 今後、労働条件が変わって、1日6時間で週5日勤務することになれば、通常の社員の労働時間が8時間で週5日勤務とすると、4分の3以上になるのでパート先の健康保険・厚生年金に加入することができます。
 なお、もしパートタイムの被保険者の基準に満たない場合でも、年収が130万円を超えてしまう場合は、ご主人の被扶養者になることはできません。その場合は、ご自身で国民健康保険・国民年金に加入する必要があります。

社会保険労務士 根岸 純子

失業

Q1

失業とは

 先日、会社を退職しました。失業給付をもらうために公共職業安定所に行きました。
 公共職業安定所で失業の状態であるかどうかについて質問をされたのですが、失業とは、どのような状態をいうのでしょうか?

A1

意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態

 雇用保険では、「失業」とは「意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること」をいいます。
 「労働の意思」とは、就職しようとする積極的な意思をいうもので、公共職業安定所に出頭して求職の申込みを行い、また本人自らも積極的に求職活動を行っている場合に労働の意思があると判断されます。
 「労働の能力」とは、労働(雇用労働)に従事して、その対価を得て自己の生活に資し得る精神的、肉体的及び環境上の能力をいい、本人の体力、知力、技能、経歴、生活環境等を総合して判断されます。
 「職業に就くことができない状態」とは、公共職業安定所が求職の申込みに応じて最大の努力をしても就職させることができず、また、本人の努力によっても就職できない状態にあることをいいます。
なお、就職とは、雇用関係だけでなく、請負、委任により常時労務を提供する地位にある場合、自営業を開始した場合等をいい、現実の収入の有無を問いません。
 失業給付の支給を受けるには、「失業の状態であること」が要件となります。したがって、公共職業安定所では、「失業」の状態であるかどうかについて確認する必要があり、この確認(「失業の認定」といいます。)を行うために、所定の認定日に失業認定申告書を提出し、必要に応じて質問をして失業の状態にあるかどうか判断することになります。

社会保険労務士 根岸 純子

Q2

退職前に無給の期間があった場合の受給資格

 10年間勤めていた会社を退職することになりました。
 退職の2ヵ月程度前まで病気のため6ヵ月間休職していました。その間は無給で傷病手当金を受給していました。このような場合、失業給付は受けることができるのでしょうか?

A2

受給資格の緩和の措置が受けられる

 基本手当は、被保険者が失業した場合において、原則として離職の日以前2年間(この期間を「算定対象期間」といいます)に被保険者期間が通算して12ヵ月以上あったときに支給されます。
 ※被保険者期間とは、離職の日から遡って1ヵ月ごとに区切り、その1ヵ月間に賃金支払基礎日数が11日以上の場合、被保険者期間を1ヵ月とし、1ヵ月未満の端数があるときはその期間が15日以上あり、かつ賃金支払基礎日数が11日以上あるときに1/2ヵ月とします。
 この算定対象期間に病気やけがなどの理由によって引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった被保険者については、受給要件の緩和の措置が行われています。
 この緩和措置とは、原則の1年間に病気やけがなどの理由により賃金の支払を受けることができなかった日数を加算することができ、最長4年間まで算定対象期間を延長することができます。つまり、その延長された算定対象期間に被保険者期間が通算して12ヵ月以上あれば、基本手当は支給されることになります。
 したがって、ご質問の場合でも、離職の日以前1年間と病気で休業した期間の6ヵ月を加算した期間に被保険者期間が12ヵ月以上あれば基本手当は支給されます。
 なお、この緩和措置が認められる理由は次の場合があります。
 [1]疾病又は負傷(業務上外を問いません)
 [2]事業所の休業
 [3]出産
 [4]事業主の命令による外国における勤務
 [5]上記[2]~[4]に準ずる理由で管轄公共職業安定所長がやむを得ないと認めるもの

社会保険労務士 根岸 純子

Q3

失業認定日に出頭できない場合

 現在、基本手当の支給を受けています。
 失業の認定日には必ずハローワークに行かなければいけないと聞きましたが、万が一、病気などで行けなくなってしまった場合は、どうなるのでしょうか?失業の認定は受けられるのでしょうか?

A3

やむを得ない理由の場合は、失業の認定を受けられる

 失業の認定とは、受給資格者が「労働の意思及び能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」ことを確認するものです。したがって、受給資格者本人が所定の失業の認定日に公共職業安定所に出頭して、失業の認定を受けるのが原則となっています。
 しかし、やむを得ない理由により出頭できない場合は、所定の手続きをすることによって所定の失業認定日に公共職業安定所に出頭しなくても失業の認定を受けることができます。
 やむを得ない理由とその手続きは次のとおりとなっています。

[1]疾病又は負傷のために公共職業安定所に出頭することができなかった場合において、その期間が継続して15日未満であるとき。
 この場合の手続きは、疾病又は負傷が治ゆした後の最初の失業認定日に出頭して、医師その他診療を担当した者の証明書に受給資格者証を添えて提出します。
疾病や負傷の期間が15日以上に及ぶ場合は、この証明書による失業の認定は受けられませんが、基本手当に代えて傷病手当が支給されます。

[2]公共職業安定所の紹介に応じて求人者に面接するために公共職業安定所に出頭できなかったとき。
 この場合は、求人者に面接した後における最初の失業認定日に公共職業安定所に出頭し、求人者の面接証明書に受給資格者証を添えて提出します。求人者の行う採用試験を受験する場合においても、同様の取扱いをします。

[3]公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受講するために公共職業安定所に出頭できなかったとき。
 この場合は、所定の失業の認定日に、代理人(通常は公共職業訓練施設等の職員)をして公共職業訓練等を行う施設の長の公共職業訓練等受講証明書を添えて受給資格者証、失業認定申告書及び委任状を提出します。

[4]天災その他やむを得ない理由のために公共職業安定所に出頭できなかったとき。
 この場合は、その理由がやんだ後における最初の失業認定日に公共職業安定所に出頭して、受給資格者証に添えて官公署(例えば市町村長、JRの駅長等)の証明書又は公共職業安定所長が適当と認める者の証明書を提出します。

社会保険労務士 根岸 純子

Q4

受給期間の延長

 5年勤めていた会社を退職することになりました。現在、妊娠5ヵ月です。
 出産の場合、労働の能力がないとみなされ、失業給付はもらえないと聞きました。でも、ずっと雇用保険の保険料を払ってきたのに、何ももらえないのでしょうか?もらえる方法はあるのでしょうか?

A4

受給期間の延長の手続きによって受給可能

 会社を退職して受給資格の要件を満たした場合は、所定給付日数分の基本手当の支給を受けることができます。ただし、支給を受けられる期間は、原則として受給資格に係る離職の日の翌日から起算して1年間となっています。この期間を受給期間といいます。
 しかし、この受給期間は一定の場合には例外的に延長が認められています。
 受給期間の延長は、次の場合が認められています。

[1]受給資格に係る離職の日の翌日から起算して1年間に妊娠、出産、育児、疾病、負傷等の理由により引き続き30日以上職業に就くことができない場合
 この場合は、受給資格者の申し出によって、職業に就くことができない日数が1年間に加算され、最大4年間まで延長されます。
 この受給期間の延長をしようとするときは、その要件に該当するに至った日の翌日から起算して30日以内に受給期間延長申請書に受給資格者証(受給資格者証の交付を受けていないときは離職票)を添えて居住地を管轄する公共職業安定所へ提出しなければなりません。

[2]受給資格に係る離職理由が次のいずれかによるもので一定期間求職の申込みを希望しない場合
 (ア)60歳以上の定年に達したこと
 (イ)60歳以上の定年に達した後の勤務延長又は再雇用の期限が到来したことによるもの

 この場合は、その期間が1年間に加算され、受給期間は最大2年間まで延長できます。
 この受給期間の延長を受けようとするときは、離職の日の翌日から起算して2ヵ月以内に受給期間延長申請書に離職票を添えて居住地の公共職業安定所へ提出しなければなりません。

 したがって、ご質問の場合は受給期間の延長の申し出の手続きをすることによって、出産後職業に就くことができるようになったときに、失業の状態であれば基本手当の支給を受けることができます。

社会保険労務士 根岸 純子

Q5

給付制限期間中の就職について

 12月31日付けで自己都合退職をし、1月10日に職安に行って手続きをしました。
 自己都合退職の場合は、3ヵ月間の給付制限があり、その間、失業手当は給付されないそうです。就職活動をしたところ、職安の紹介で就職が決まりました。3月1日から就職の予定ですが、失業給付は、もらえないのでしょうか。今まで払った保険料はどうなるのでしょうか。

A5

[1]再就職手当の受給、
[2]次の受給資格に係る被保険者期間に通算の2通りの方法

 ご質問のケースの場合、次の2通りの方法があります。

[1]再就職手当の受給
 再就職手当は、受給資格者が安定した職業に就いた場合で、一定の要件を満たしたときに支給されます。

 [ア]就職日の前日における基本手当の支給残日数が、45日以上、かつ、所定給付日数の3分の1以上であること

 [イ]1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる職業に就き、又は事業(その事業により受給資格者が自立することができると公共職業安定所長が認めたものに限ります。)を開始したこと

 [ウ]離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと

 [エ]待期期間が経過した後に職業に就き、又は事業を開始したこと等の要件があります。(参照→雇用保険/就職促進給付/再就職手当

 再就職手当の額は、支給残日数×60%(3分の2以上のときは70%)×基本手当日額に相当する額が支給されます。

[2]次の受給資格に係る被保険者期間に通算
 3月からの新しい会社で雇用保険の被保険者期間が12ヵ月以上で離職をした場合(新しく受給資格を取得した場合)は、基本手当の給付日数を算定する被保険者期間に、前の会社の被保険者期間を通算することができます。また、万が一、12ヵ月未満で離職をした場合(新しく受給資格を取得できない場合)は、前の会社の受給資格に基づいて基本手当を受給することができます。

 したがって、再就職手当として受給するか、将来の失業に備えて被保険者期間を通算するか、いずれかの方法が選択できます。ただし、いずれの場合も居住地を管轄する公共職業安定所で所定の手続きを行ってください。

社会保険労務士 根岸 純子

海外

Q1

海外勤務の者の雇用保険の適用

 このたび、当社では旅行業を開始し、海外の企業に社員を派遣することになりました。
 社員を交代で派遣する予定なので、何年後には帰国します。帰国後も引き続き雇用するつもりですので、雇用関係は継続したままで休職扱いとします。この場合、海外に派遣する者の雇用保険はどのようになるのでしょうか?

A1

被保険者資格はそのまま継続

 海外で勤務する場合、さまざまな実態があり各企業における取扱いもさまざまですが、雇用保険の適用の面では、次の場合が考えられます。

[1]海外へ出張して働く場合や国内の適用事業の事業主に雇用され、その事業主の海外の支社、支店などに勤務する場合
 この場合は、適用事業主との間の雇用関係は変更されていませんので、被保険者資格は継続します。ただし、日本の事業主が現地において採用する労働者は、その国籍のいかんを問わず、日本の雇用保険の被保険者にはなりません。

[2]国内の適用事業の事業主との雇用関係を残したまま、その事業主の命令により、一定期間、海外の事業主の下で雇用される場合
 このような海外企業への出向の場合、出向した労働者は、海外の事業主と新たな雇用関係を結ぶことになりますが、その出向が国内の適用事業の事業主の命令によるものであり、その事業主と雇用関係が存続している場合に限り、海外の企業に勤務している間も引き続き被保険者として取り扱われることになっています。

[3]国内の適用事業の事業主との雇用関係を終了させ、海外の企業に雇用される場合
 国内の適用事業の事業主との雇用関係を終了させて、海外の事業主と雇用関係を結んだ場合は、被保険者資格を喪失します。

 ご質問の場合は、上記の[2]に該当すると考えられますので、被保険者資格はそのまま継続することになります。
 また、雇用保険の被保険者となる海外勤務者の保険料や失業したときの基本手当日額の算定については、次のように取り扱われています。

[1]出向元の事業主から給与が支払われている場合
 その者に対して支払われる給与のうち、国内に勤務する場合に支給されるべき給与と同等の額を限度として、保険料や基本手当日額の算定の基礎となる賃金として取り扱われます。
 海外勤務手当などが別に支払われている場合には、その超過額に相当する額については、実費弁償的なものとして、賃金とは認められていません。

[2]出向元から給与の支払がない場合
 保険料の算定の基礎となる賃金はなく、海外出向期間中のその者の保険料は支払う必要はありません。また、出向元からの賃金の支払がないと、その被保険者が帰国して6か月を経過しないうちに失業した場合は、基本手当の受給資格を得られない場合があります。その場合の救済措置として受給資格の緩和措置が認められています。(参考→失業:「退職前に無給の期間があった場合の受給資格」

社会保険労務士 根岸 純子

Q2

海外勤務の者の健康保険の適用

 最近、海外へ出張することが多くなりました。
 今のところ、病気やけがなどにはかかっていませんが、もし、病気やけがをした場合、健康保険などは利用できるのでしょうか?また、海外へ出発の際、何か事前に手続きが必要なのでしょうか?

A2

療養費が支給

 海外へ出張中や旅行中に疾病や負傷等のため、海外の医療機関等にかかった場合は、海外では医療費は全額を支払わなければなりません。しかし、その費用についても健康保険から療養費として払い戻し(償還)を受けることができます。
 その際の手続き方法と支給される額は次のとおりです。

[1]手続き方法
 申請手続きは「療養費支給申請書」に診療内容明細書(Attending Physicianユs Statement)、領収明細書(Itemized Receipt)等、病院等が発行する診療内容を明らかにした書類(外国語の場合は翻訳文も)を添付して年金事務所や健康保険組合等に提出します。

[2]支給される額
 海外の病院等の医療費は治療内容やそのレベルが国によって異なるため、現地で支払った医療費が全額払い戻されるのではありません。
 日本国内の保険医療機関等において、疾病や負傷などで給付される場合を標準として決定した金額(標準額)から被保険者の一部負担金相当額を控除した額が支給されます。ただし、実際に支払った額が標準額よりも大きい場合は標準額を基準に、実際に支払った額が標準額よりも小さい場合は、実際に支払った額を基準に計算されます。
 支給は、支給決定日の為替レートにより日本円で支払われます。

 したがって、海外出張中であっても、事業主との使用関係は変わりないので、健康保険の被保険者資格はそのまま継続し、海外出張に当たっての事前の手続きは必要ありません。
海外療養費は、現地の病院で治療を受けた場合に、その病院が発行する診療等の内容を明らかにした費用の額に関する証拠書類に基づき支給されます。
 なお、この海外療養費は、日本国内における保険診療の対象になっているものに限られており、最先端医療、美容整形など日本国内で保険適用となっていない医療は対象になりません。
また、慢性病や歯科治療など民間の旅行保険では適用にならないものでも、海外療養費で払い戻される場合があります。旅行保険が給付されても海外療養費の支給額が減額されることはありません。

社会保険労務士 根岸 純子

年金

Q1

年金を受けるための必要な加入期間

 もうすぐ60歳で定年になります。
 過去に転職を繰り返していたので、年金がちゃんともらえるか不安です。年金をもらうにはどのような条件があるのでしょうか。

A1

原則として25年以上の加入期間が必要

 厚生年金保険に加入していた人は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受けることができます。
 老齢基礎年金を受けるには、以下の期間を合算した期間が原則として25年以上あることが必要です。

[1]保険料を納めた期間
[2]保険料の免除を受けた期間
[3]合算対象期間として認められた期間

[1]「保険料を納めた期間」とは、国民年金、厚生年金、共済年金のどの年金の加入期間でも算入できます
[2]「保険料の免除を受けた期間」とは、保険料を滞納していた期間は含まれません。
[3]「合算対象期間」とは、国民年金に任意加入できるのに任意加入しなかった期間をいいます。年金額を計算するときの期間には算入されませんが、受給資格をみる場合は加入期間に算入されます。

 また、この25年加入は、各制度ごとに、生年月日によって、15年から24年の加入期間でも受給できる特例があります。
 上記の要件を満たしていて、厚生年金保険の加入期間が1か月以上ある人は、65歳から老齢基礎年金に上乗せされて、老齢厚生年金を受けることができます。
 また、厚生年金保険の加入期間が1年以上ある人は、60歳から65歳まで特別支給の老齢厚生年金(生年月日によっては、「報酬比例部分相当の老齢厚生年金」)を受けることができます。
(参照→社会保険制度の概要/厚生年金/老齢厚生年金/特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢

社会保険労務士 根岸 純子

Q2

専業主婦の年金加入

 このたび、結婚することになり、会社を退職いたしました。
 結婚後は専業主婦になって、主人の扶養になるつもりです。今までは、会社で厚生年金に加入していたのですが、これからは、どのようになるのでしょうか?年金について何か手続きをする必要があるのでしょうか?夫は、厚生年金に加入しています。

A2

3号被保険者の届け出が必要

 国民年金の被保険者には「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類あります。

第1号被保険者 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の人で、第2号被保険者、第3号被保険者以外の人
自営業者、学生、無職等
第2号被保険者 被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者
サラリーマンやOL、公務員等
第3号被保険者 第2号被保険者の配偶者で、主として第2号被保険者によって生計を維持されている人(被扶養配偶者)のうち、20歳以上60歳未満の人

(詳しくは、解説:国民年金/被保険者

 ご主人が厚生年金保険の被保険者の場合、その被扶養配偶者は第3号被保険者となります。「被扶養配偶者」とは、原則として健康保険の被扶養者になっているかどうかで判断されます。
 第3号被保険者になったときは、その届け出をしなければなりません。
 平成14年4月からは、その届け出は健康保険等の被扶養者の届け出と一緒に、配偶者の勤務する事業主から年金事務所等に提出することになっています。
 したがって、ご質問の場合は、ご主人の勤務する事業主に届け出れば、健康保険の被扶養者の届け出と同時に第3号被保険者となる手続きを事業主がやってくれます。ご主人の勤務する会社に忘れず届け出てください。
 なお、この第3号被保険者の届け出は、平成14年3月までは自分で住所地の市区町村に行って第3号被保険者の届け出をしなければなりませんでした。すでに健康保険の被扶養者となっていて、第3号被保険者に該当するにもかかわらず、第3号被保険者の届け出をしていなかった場合は、2年前まで遡って第3号被保険者となることができますので、まだ届け出をしていない場合はできるだけ早く届け出をしてください。
 2年より前の届け出をしていない期間については、保険料未納期間となりますが、平成17年4月から特例制度が導入され、平成17年3月以前の第3号被保険者の届出もれによる、保険料未納期間については、届出をすることにより、第3号被保険者期間として、取り扱われるようになりました。
 平成17年4月以降、届出が遅れた場合は、第3号被保険者期間として取り扱われるのは、原則として、2年前までとなります。ただし、届出が遅れたことについて、やむを得ない理由があると認められれば、2年以上さかのぼって、第3号被保険者として取り扱われます。

社会保険労務士 根岸 純子

Q3

学生の年金加入

 学生も20歳になったら、年金に加入しなければならないそうですが、働いていないので、保険料を払えません。
 どうしても、保険料が払えない場合はどうしたらよいのでしょうか?

A3

学生納付特例制度の申請が可能

 以前は学生は、収入がないのが一般的で保険料を強制的に徴収することになじまないと考えられ、任意加入とされていました。しかし、スポーツや交通事故などで障害を受けたときに、国民年金に加入していないため障害基礎年金を受けられないケースや学生で加入していない期間がある分、老齢基礎年金が少なくなってしまう問題が出ていました。
 そのようなことなどから学生も20歳以上は国民年金に強制加入する制度に改正されました。
 しかし、ご質問のようにご本人の収入がなくてどうしても保険料が払えないという場合には、保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」があります。
 「学生納付特例制度」とは、本人の所得状況によって決められた基準を満たした場合(扶養親族等がいない場合で所得が年間118万円に、本人が申請をして保険料の納付が猶予されるものです。
 納付特例制度を利用できる学生とは、学校教育法に規定された大学、短期大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校等に在学する学生等をいい、海外の大学などの学生は除きます。なお、平成14年4月から夜間部・定時制課程および通信課程の学生等も対象となっています。
 学生納付特例を受けた期間の取扱いは次のとおりです。

[1]納付特例期間中の事故や病気により一定程度の障害が残った場合は、障害基礎年金が受けられます。
[2]老齢基礎年金の受給資格期間には算入されますが、年金額には反映されません。
[3]納付の猶予を受けた期間については、10年以内であれば、一定の金額を加算してさかのぼって保険料を納めることができる追納制度があります。追納をすれば、その分は老齢基礎年金の額の計算に反映されます。

社会保険労務士 根岸 純子

Q4

老齢基礎年金の受給額

 現在、50歳代になり今後の生活設計などを考えなければならないと思っています。
 大学を卒業して以来、ずっと会社に勤め年金の保険料を払ってきましたが、いったいいつからいくら年金がもらえるのかとても不安です。いったい、いつからいくら年金がもらえるのでしょうか?

A4

厚生年金は生年月日や今までの給与によって個人差

 年金は全国民共通に国民年金(基礎年金)が支給され、厚生年金保険や共済年金に加入していた人は、その上乗せに報酬に比例した厚生年金保険、共済年金が支給されるしくみとなっています。
 国民年金も厚生年金保険も原則として65歳から支給されますが、厚生年金保険に1年以上加入していた人は、生年月日によって例外に65歳前でも年金が支給されます。(社会保険制度の概要:厚生年金/老齢厚生年金/特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢(表)

 具体的にいくらもらえるのか、次のケースを例に計算してみます。

昭和31(1956)年4月25日生まれ(現在59歳)
22歳で大学を卒業後60歳定年まで会社に勤務
平成15年3月までの加入期間が300月・平均標準報酬月額40万円
平成15年4月からの加入期間が144月・平均標準報酬額45万円
妻有り(昭和32(1957)年8月12日生まれ(現在58歳))

 この方の場合、62歳から報酬比例部分相当の老齢厚生年金が支給され、定額部分相当の老齢厚生年金は支給されません。そして65歳からは老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給されます。特別支給の老齢厚生年金の受給権を取得した時に、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人で生計を維持している(扶養している)配偶者や一定の子がいる場合には、加給年金額が加算されます。さらに配偶者加給年金額には特別加算が加算されます。(社会保険制度の要点:老齢厚生年金

年金額

●62歳から支給される年金(報酬比例部分相当の老齢厚生年金)
総報酬制導入前 400,000 × 7.125 / 1000 × 300月 × 0.999= 854,145
総報酬制導入後 450,000 × 5.481 / 1000 × 144月 × 0.999= 354,814
854,145 + 354,814 = 1,208,959円

●65歳から支給される年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)
老齢基礎年金 780,100 × 444月 / 480 =721,593
老齢厚生年金 1,208,959(60歳からと同じ)
721,593 + 1,208,959 = 1,930,552 ・・・[1]
加給年金額 390,100 ・・・[2]
[1]+[2]= 2,320,652円

●66歳から支給される年金
1,930,552円
(妻が65歳になると加給年金額がなくなり、妻に振替加算が加算されます。)

参照→社会保険制度の要点:厚生年金国民年金

 以上のように年金の支給開始年齢は、生年月日により異なり、支給される年金の額も加入している制度や期間、現役時代の給与によって変わってきます。
 具体的な年金額は、支給開始時点にならないとわかりませんが、計算式にあてはめれば、おおまかな年金額を計算することができます。また、日本年金機構のホームページにも「自分でできる年金額簡易試算」がありますので、利用してみてください。

社会保険労務士 根岸 純子

Q5

障害基礎年金・障害厚生(共済)年金

 事故でけがをして入院をしています。
 年金に加入していると将来の老後の年金だけでなく、障害者になったときも年金がもらえると聞きました。万が一、障害が残った場合は、どのような年金がもらえるのでしょうか?現在は22歳で会社に勤めていません。年金に加入しているかどうか親にまかせきりでよくかわりません。

A5

保険料の滞納が多いと障害に関する給付は支給されない

 年金に加入している人が障害になったときに支給されるものは「障害基礎年金」「障害厚生(共済)年金」「障害手当金(一時金)」の3種類あります。
 「障害基礎年金」は、国民年金、厚生年金、共済年金の加入者が重い障害になったときに支給され、障害の程度は1級と2級があります。
 「障害厚生(共済)年金」は、厚生年金、共済年金の加入者又は加入者だった人が障害基礎年金(1級、2級)を受けられる場合に、障害基礎年金に上乗せされて支給されます。
 障害等級1級、2級よりも軽い障害の場合は、厚生年金、共済年金の独自の給付として、3級の障害厚生(共済)年金が支給されます。さらに、傷病の程度が軽く、障害厚生年金の障害等級に該当しなかった場合は「障害手当金(一時金)」が一時金として支給されます。
 (参照→社会保険制度の要点解説:厚生年金国民年金
 万が一、障害が残ってしまった場合には、以上のような年金等が支給されますが、それには保険料をきちんと納めているかなどの条件があります。これを保険料納付要件といいます。
 保険料納付要件は次のようになっています。

1.初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間がある人は、その被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が3分の2以上あること

2.初診日が平成28年4月1日前にある傷病による障害については、初診日において65歳未満で初診日の属する月の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと

 20歳以上60歳未満の人は必ずどれかの年金に加入していることになっていますので、会社に勤めていなくて厚生年金等に加入していなくても国民年金の第1号被保険者として加入しなくてはいけません。
 したがって、20歳から今までの期間で保険料を納めていない期間があり、上記の保険料納付要件を満たさない場合は、障害に関する給付は支給されなくなります。
 ただし、学生納付特例を受けている学生や30歳未満の者に係る納付猶予を受けている人の場合には、保険料を納めていなくても、障害基礎年金は支給されます。なお、国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない障害者の方について、国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情にかんがみ、福祉的措置として「特別障害給付金制度」が創設されています。

社会保険労務士 根岸 純子

Q6

遺族厚生年金

 先日、夫が亡くなりました。
 夫は43歳でした。大学を卒業後、ずっと会社に勤めて年金を払ってきました。遺族に対して年金がもらえると聞きましたが、何がもらえるのでしょうか?私は、ずっと専業主婦で現在41歳で子供はいません。

A6

遺族厚生年金と中高齢寡婦加算が支給

 年金に加入している人が亡くなった場合には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が支給されます。
支給要件はそれぞれ次のようになっています。

●遺族基礎年金
 次のいずれかに該当する人が死亡したときに、その人に生計を維持されていた子のある妻又は子に支給されます。

[1]被保険者が死亡したとき(短期要件)
[2]被保険者であった人であって、日本国内に住所がある60歳以上65歳未満である人が死亡したとき(短期要件)
[3]老齢基礎年金の受給権者が死亡したとき(長期要件)
[4]老齢基礎年金の受給資格期間を満たした人が死亡したとき(長期要件)

ただし、[1][2]に該当する人は、保険料納付要件を満たしていることが必要です。
(参照→国民年金/遺族基礎年金/保険料納付要件

●遺族厚生年金
 次のいずれかに該当する人が死亡したときは、その人に生計を維持されていた遺族に遺族厚生年金が支給されます。

[1]被保険者が死亡したとき(短期要件)
[2]被保険者であった間に初診日がある傷病が原因で、被保険者の資格を喪失した後にその初診日から5年以内に死亡したとき(短期要件)
[3]障害等級1級又は2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき(短期要件)
[4]老齢厚生年金の受給権者又は老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている人が死亡したとき(長期要件)

 ただし、[1][2]に該当する人は、保険料納付要件を満たしていることが必要です。

 夫が死亡した場合、子供のいない妻には遺族基礎年金は支給されません。したがって、ご質問の場合も遺族基礎年金は支給されませんが、遺族厚生年金は支給されます。
 (遺族厚生年金の年金額→厚生年金/遺族厚生年金/年金額
 さらに、次のいずれかに該当する妻が、遺族厚生年金を受給する場合、その妻が40歳から65歳までの間、中高齢の寡婦加算が行われます。

[1]夫の死亡当時、35歳(平成19年4月からは40歳)以上65歳未満で、子がいない妻
[2]35歳(平成19年4月からは40歳)に達した当時、死亡した被保険者若しくは被保険者であった人の子で、遺族基礎年金の支給要件に該当する子と生計を同じくしていた妻

 ただし、上記の遺族厚生年金の支給要件の[4](長期要件)にあたる人は、夫が厚生年金に20年以上(中高齢短縮特例に該当する人は15年から19年)加入していたことが必要です。
 中高齢寡婦加算の額は、585,100円となります。
 したがって、ご質問の場合は遺族厚生年金が支給され、中高齢寡婦加算が加算されます。

社会保険労務士 根岸 純子

Q7

在職老齢年金

 現在、60歳で年金をもらっています。
 会社を定年退職後は、無職で年金暮らしをしていました。先日、友人から就職の誘いがあり、まだ健康で働くことができるので、就職をしようと思っています。就職をした場合は、年金はどうなるのでしょうか?

A7

報酬によって調整

 老齢厚生年金の受給資格を満たしている人が在職をしている場合でも、老齢厚生年金は受給できます。これを在職老齢年金といいます。
 ただし、在職中の「総報酬月額相当額」と「年金月額」によって、年金の一部又は全部が支給停止されることになっています。
 65歳未満の人の在職老齢年金の調整は次のようになっています。

■原則
 年金額を12ヵ月で割った額を年金月額といいます。
 (老齢厚生年金÷12)

[1]年金月額と総報酬月額相当額の合計が28万円に達するまでは、年金月額の満額と報酬が同時に受けられます。
[2]年金月額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超える場合は、年金月額と総報酬月額相当額の額によって支給停止額が計算され、年金月額から引かれます。
(在職老齢年金=年金月額-支給停止額)

■支給停止額

●年金月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が46万円以下のとき
 (年金月額 +総報酬月額相当額 - 28万円)× 1 / 2

●年金月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が46万円を超えるとき
 (年金月額 + 46万円 - 28万円)× 1 / 2 + (総報酬月額相当額 - 46万円

●年金月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が46万円以下のとき
 総報酬月額相当額 × 1 / 2

●年金月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が46万円を超えるとき
 46万円 × 1 / 2 +(総報酬月額相当額 - 46万円

 加給年金額の支給要件に該当している場合、一部が停止になっていても加給年金額は全額支給されますが、年金額の全額が支給停止になっているときは加給年金額も支給停止となります。
 なお、この在職老齢年金でいう「在職」とは、厚生年金の被保険者であることをいいます。したがって、自営業で厚生年金に加入していない場合や、週の労働時間が少なくて厚生年金の被保険者にならない場合は、この調整は行われず、老齢厚生年金は100%支給されます。
 また、65歳以上70歳未満の在職老齢年金の調整には別の取扱いがあります。
(参照→厚生年金/老齢厚生年金/在職老齢年金

社会保険労務士 根岸 純子

Q8

60歳台前半の老齢厚生年金と雇用保険の基本手当との調整

 先日、60歳で定年退職をしました。
 長年、雇用保険に加入していましたので、失業給付を受給しようと思っています。年金も60歳から支給されますが、両方は受給できないと聞きました。具体的にどのようなしくみになっているのでしょうか?

A8

失業給付を受給中は年金は支給停止

 60歳台前半の老齢厚生年金を受給できる人が雇用保険法の基本手当を受給している場合、60歳台前半の老齢厚生年金は全額が支給停止となります。
 仕組みは、60歳台前半の老齢厚生年金を受給している人が雇用保険の基本手当を受給する場合、求職の申込みを行った日の翌月から、その申込みにかかる基本手当の受給期間(または所定給付日数)が満了した日の属する月までの間(調整対象期間)、年金の支給が停止されます。

 調整対象期間において基本手当を受けた日とみなされる日が1日もない月がある場合、その月については、60歳台前半の老齢厚生年金は支給されます。ただし、待期期間や離職理由などによる給付制限期間については、基本手当を受給した期間として取り扱われます。
 調整の対象となる人は、60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者(ただし、平成10年4月1日以降に受給権が発生する人に限られます。)です。
 したがって、ご質問の場合60歳から老齢厚生年金の受給権が発生しますが、雇用保険の基本手当を受給している期間は、年金は支給停止となります。

社会保険労務士 根岸 純子

Q9

高年齢雇用継続給付と在職老齢年金との調整

 60歳になり、いったん会社を退職しましたが、引き続き嘱託として再雇用されることになりました。
 60歳から年金が支給されますが、在職しながら年金を受給すると減額されると聞きました。しかし、会社が雇用保険に加入していたので、高年齢雇用継続給付が支給されると言われました。その場合の年金との仕組みを教えてください。

A9

原則として標準報酬月額の6%を限度とする額の年金が支給停止。

 高年齢雇用継続給付と60歳台前半の在職老齢年金を受給できる人については、一定の調整が行われることになっています。
 雇用保険法による高年齢雇用継続給付とは、60歳以上65歳未満の被保険者(被保険者期間が5年以上必要)について、その賃金が60歳時点の75%未満となった場合に、各月に支払われた賃金の最高15%相当額を支給するものです。
 (解説:雇用保険/雇用継続給付/高年齢雇用継続給付
 在職老齢年金とは、60歳台前半の老齢厚生年金を受給している人が厚生年金の被保険者となった場合、在職中の「総報酬月額相当額」と「年金月額」によって、年金の一部又は全部が支給停止されて支給される年金をいいます。
 この高年齢雇用継続給付と在職老齢年金を受給できる人について、一定の調整が行われています。
 仕組みは、在職老齢年金を受給している人が、高年齢雇用継続給付を受給する場合、標準報酬月額と60歳到達時の賃金月額(賃金日額×30日)との割合に応じた支給停止率により、標準報酬月額の6%を限度として在職老齢年金の一部が支給停止されます。

 つまり、60歳台前半の老齢厚生年金を受給できる人が厚生年金の被保険者として在職した場合、総報酬月額相当額と基本月額によって老齢厚生年金が支給停止され、さらに雇用保険から高年齢雇用継続給付が支給される場合は、標準報酬月額と60歳時の賃金月額との割合によって、標準報酬月額の6%を限度として在職老齢年金の一部が支給停止されることになります。

社会保険労務士 根岸 純子

労災

Q1

休業補償給付

 先日、仕事で手にひどいやけどを負ってしまいました。
 すぐに病院に行き、治療を受け、そのまま帰宅しました。しばらくは、仕事を休まなければならなかったのですが、次の日は仕事ができそうだと思い出社しました。しかし、仕事ができる状態ではなく、すぐに帰りました。業務上のけがをした場合、労災から給付がもらえると会社に言われました。どれくらいもらえるのでしょうか?

A1

休業4日目から賃金の60%が支給

 業務上の事由による負傷又は疾病に関しては、労働者災害補償保険(労災保険)法による給付が行われます。
 ご質問のように、病院で治療を受けた場合は、一部負担金なしで療養補償給付を受けることができます。
 また、療養のために労働することができず、賃金を受けられない場合には、休業補償給付を受けることができます。
 休業補償給付の支給要件と支給額は次のようになっています。

◆支給要件
[1]業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないこと
[2]賃金の支給を受けられないこと
[3]待期期間3日間が完成していること

◆支給額
 休業1日につき、給付基礎日額の60%
 (このほかに給付基礎日額の20%に相当する休業特別支給金が支給)
 一部労働した場合は、給付基礎日額から一部労働して得た賃金を控除した額の60%が支給。
 (給付基礎日額:社会保険制度の概要/労災保険/給付基礎日額等

 待期期間の計算は、所定労働時間中に負傷した場合はその日から開始します。したがって、通常は、翌日と翌々日休業をすれば、次の日から休業補償給付は支給されます。また、労災保険の待期期間は、連続、断続を問いませんので、例えば、負傷した次の日に1日、通常どおり就労した場合でも、その後2日休業すれば、待期期間は完成します。
 ご質問のように負傷した次の日に出社し、すぐに労務不能で療養のため休業した場合は、休業の要件は満たすと解され、待期期間の1日に計算されます。
 また、待期期間は賃金の支給を受けているかどうかは問いませんので、負傷した日に賃金を受けていたり、待期期間3日間を年次有給休暇としても待期期間の計算にカウントされます。
 したがって、ご質問の場合、休業1日につき給付基礎日額の60%の休業補償給付と20%の休業特別支給金が休業の第4日目から休業している間、労災保険から支給されることになります。
 なお、待期期間に賃金を受けず休業した場合は、労働基準法により事業主は平均賃金の60%の休業補償を行わなければなりません。

社会保険労務士 根岸 純子

Q2

休業補償給付と賃金との調整

 仕事中にけがをして、休業しています。最初の3か月は全く出勤できず、休んでいました。
 最近、少し良くなってきたので、週に1日~2日、3~4時間、リハビリを兼ねて働くことにしました。今、労災から休業の給付を受けているのですが、1日に少しだけ働いた場合はどのようになるのでしょうか?

A2

給付基礎日額と労働に対して支払われる賃金との差額の60%が支給

 労災保険の休業補償給付は、[1]業務上の負傷又は疾病による療養のため[2]労働することができず[3]賃金を受けない日の第4日目から支給され、その額は休業1日につき、給付基礎日額の60%となっています。
(解説:労災保険/休業補償給付
 労災保険の休業補償給付の支給要件である「賃金を受けない日」とは賃金の全部又は一部を受けない日をいいます。賃金の一部を受けた場合でも休業補償給付は支給されますが、平均賃金の60%以上の支給を受けた場合は、労働基準法による事業主の休業補償の事由が生じないため、労災保険の休業補償給付も支給されません。したがって、平均賃金の60%未満の賃金を受けた場合に労災保険の休業補償給付が支給されることになります。
 一部就労して一部賃金を受けた場合の休業補償給付は、給付基礎日額から当該労働に対して支払われる賃金の額を控除して得た額の100分の60に相当する額と定められています。

 したがって、ご質問の場合は、就労した日について平均賃金の60%未満の賃金を受けた場合には、給付基礎日額から支払われた賃金を控除した額の60%が休業補償給付として支給されることになります。

社会保険労務士 根岸 純子

Q3

通勤災害

 会社の帰りにスーパーに寄り夕食の買い物をしている途中で、スーパーの階段から落ちて骨折してしまいました。
 通勤途中でけがをした場合でも労災から支給があるとききましたが、途中で寄り道をした場合でも支給されるのでしょうか?

A3

通勤経路から逸脱した場所では支給されない

 通勤による負傷又は疾病に関しても労災保険から給付を受けることができます。
 通勤とは、「就業に関し、住居と就業場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くもの」をいいます。
 したがって、原則として往復の経路を逸脱し、又は往復を中断した場合においては、その行為中及びその後の往復行為も通勤とはされません。
※「逸脱」とは、通勤の途中で、合理的な経路からはずれること。
「中断」とは、通勤行為をやめて、他の行為をすること。
 ただし、逸脱又は中断が、「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き」通勤災害とされます。
 「日常生活上必要な行為」とは、次のとおりです。

[1]日用品の購入その他これに準ずる行為
[2]職業能力開発促進法に規定する職業訓練、学校教育法に規定する学校において行われる教育、その他これらに準ずる教育訓練であって労働者の職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
[3]選挙権の行使その他これに準ずる行為
[4]病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

 ご質問のようにスーパーで日用品の購入をした場合でも、その後の往復は通勤とされますが、逸脱又は中断の間は通勤とはされません。したがって、スーパーの階段でけがをされた場合は、通勤災害とはされず労災による補償は行われないことになります。
 もし、けがをされた場所がスーパーから通常の通勤経路に戻った場所で発生した場合は、通勤災害と認められ、労災保険からの補償を受けることができます。

社会保険労務士 根岸 純子

保険料全般

Q1

労災保険料と雇用保険料

 毎月のお給料から雇用保険料として天引きされていますが、雇用保険料はどのような計算になっているのでしょうか?
 また、労災はお給料から天引きされていないのですがどのようになっているのでしょうか?

A1

雇用保険は労働者と事業主が負担、労災保険は事業主が負担

●雇用保険
 雇用保険の保険料は、賃金総額に次の表に定められた保険料率をかけた金額が労働者、事業主それぞれ負担します。

事業の種類 保険率 事業主負担分 被保険者負担分
一般の事業 1000分の9 1000分の6 1000分の3
農林水産
清酒製造の事業
1000分の11 1000分の7 1000分の4
建設の事業 1000分の12 1000分の8 1000分の4

(注1)雇用保険料=賃金総額(賞与・手当を含む)×雇用保険率
(注2)事業主超過負担分は、雇用三事業に充てられる。

 賃金総額とは、事業主がその事業に使用する労働者に対して賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず労働の対償として支払うすべてのものをいいます。
(解説:労災保険/2.保険料
 したがって、毎月のお給料からは、事業主から労働の対償として支払われている賃金に対して上記の被保険者負担分をかけて計算された分が雇用保険料として天引きされています。賃金総額には、賞与も含まれているので、賞与からも同じ保険料率をかけた分が天引きされています。
 事業主の負担する保険料は、被保険者と同じ率の分については、被保険者にかかるものを事業主が折半して負担しています。超過分の保険料率については、雇用二事業にかかる保険料率となっています。

●労災保険
 労災保険の保険料は、すべて事業主が負担します。労災保険とは、労働基準法で定められている災害補償を保険でカバーしているもので、事業主が労働者に対して行う災害補償を保険料を支払うことによって労災保険から補償するものです。したがって、保険料は全額事業主が負担します。
 保険料の計算は、対象となる労働者の賃金総額に労災保険率をかけて計算します。(賃金総額は、雇用保険と同じです。)
 労災保険率は、事業の種類ごとに労災保険率表で定められています。(0.25%~8.9%)災害が多く発生する可能性のある事業の種類は保険率が高くなっています。労災保険率のうち0.6%は非業務災害率(通勤災害と二次健康診断等給付に係る率)となっています。
 なお、雇用保険も労災保険も保険料の納付は事業主が行うことになっています。納付する保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日まで(これを保険年度といいます。)の1年間を単位として計算し、保険年度の当初に概算で保険料(概算保険料)を納付し、保険年度末に賃金総額が確定したところで清算(確定保険料)する方法をとっています。この手続きを年度更新といい、毎年6月1日から7月10日までに行うことになっています。

社会保険労務士 根岸 純子

Q2

健康保険料と厚生年金保険料

 平成15年の4月からボーナスにも健康保険と厚生年金保険の保険料がかかると聞きました。
 健康保険と厚生年金保険の保険料はどのように計算されているのでしょうか?

A2

標準報酬月額及び標準賞与額に保険料率をかけて計算

 健康保険と厚生年金保険の保険料は、被保険者ひとりひとりについて、標準報酬月額と標準賞与額に保険料率をかけて計算されます。

●標準報酬月額
  標準報酬月額とは、被保険者が受けるさまざまな報酬(月給、週休、日給、歩合給等)を月額に換算し、その月額を一定の幅で区分した「標準報酬月額等級」にあてはめて決定したものです。標準報酬月額の区分は、健康保険は第1級58,000円~第50級1,390,000円、厚生年金保険は第1級88,000円~第30級620,000円となっています。その標準報酬月額は次のときに決められます。

[1]資格取得時決定
 被保険者の資格を取得したときにその後に受ける報酬の見込み月額で決定します。
[2]定時決定
 被保険者が実際にうける報酬と、標準報酬月額にズレがないように、定期的に標準報酬月額の見直しをします。毎年4月から6月に支払われた報酬の平均をもとに7月に決定し、原則として、その年の9月から翌年の8月までこの標準報酬月額が適用されます。
[3]随時改定
 報酬が大幅に変動したときに標準報酬月額を改定します。
(解説:健康保険/2.保険料

●標準賞与額
  賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、被保険者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、3ヵ月を超える期間ごとに受けるものを賞与といい、その支払ごとに1,000円未満を切り捨てた額を標準賞与額といいます。標準賞与額の上限は、健康保険は年間(4月1日~3月31日)の累計が573万円、厚生年金保険は150万円となっています。
 したがって、各月の給与等からは、標準報酬月額に保険料率をかけて計算された保険料が天引きされ、3か月を超える期間ごとに支給される賞与等からは、標準賞与額に保険料率をかけて計算された保険料が天引きされています。
 健康保険と厚生年金の保険料は、原則として被保険者と事業主が折半して負担することになっています。(任意加入者を除く)健康保険組合などは、事業主が多く負担している場合があります。
(保険料率→社会保険制度の要点(健康保険厚生年金))
(報酬とは→解説:健康保険/2.保険料

社会保険労務士 根岸 純子

Q3

国民年金の保険料免除制度

 ずっと一人暮らしをしていましたが、2年前に病気が発症し働けなくなりました。
 病気によって障害認定され、障害基礎年金を受給できることになりました。いままで、何とか国民年金の保険料を納めてきたのですが、これからずっと保険料を納めるのは大変です。何とかならないのでしょうか?

A3

届出によって保険料が免除

 国民年金には、保険料の免除制度があります。この免除制度には、「法定免除」「申請免除」「一部免除(4分の3免除、2分の1免除、4分の1免除)」があります。
(参照→国民年金 2.保険料 (3)保険料の免除

 「法定免除」とは、障害基礎年金を受けている場合や生活保護法の生活扶助を受けている場合など、法で定められている要件に該当すれば、届出をすることによって保険料の全額が自動的に免除されるものです。
 「申請免除」「一部免除」とは、前年の所得が低い人や障害者又は寡婦で年間の所得が125万円以下の人の申請に基づいて都道府県知事の承認を受けた場合に保険料の全額又は一部免除されるものです。

 したがって、ご質問の場合は、障害基礎年金を受給されていますので、届出をすることによって保険料の免除制度を受けることができます。
 「法定免除」を受ける場合は、条件に該当したときから14日以内に、年金手帳を添えて「国民年金保険料免除理由該当・消滅届」を住所地の市区町村に提出することになります。
 免除を受けた期間の取扱いは、年金を受けるための受給資格期間になります。また、老齢基礎年金の金額は、全額免除された期間については全額納付した場合の3分の1、一部免除された期間については全額納付した場合の4分の1免除は6分の5、2分の1免除は3分の2、4分の3免除は2分の1で計算されます。
 保険料の全額又は一部が免除された期間については、10年間の範囲内で保険料をさかのぼって納めることができる追納制度があります。ただし、一定期間を過ぎて追納する場合の保険料は、経過期間に応じて一定の率を乗じた額となります。
 なお、申請免除の場合は、申請は毎年必要になります。また、申請のあった前月から承認されることになっていますので、承認される前の期間は保険料をおさめなければ未納期間となりますので、申請免除の場合はご注意下さい。

社会保険労務士 根岸 純子

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