多重債務のない社会をめざして

改正貸金業法完全施行に伴う声明

2010年6月18日

労働者福祉中央協議会
会 長 笹森 清
  1.  本日、改正貸金業法が完全施行されることに対し、心より歓迎するとともに、今日まで尽力されてきた関係各位に心より敬意を表するものである。
     今般の完全施行をもって「脱・高利貸し」の新たな歴史が幕を開ける。しかし、残された課題は多く、多重債務社会からの脱却に向けた取り組みは、これからが本番である。
  2.  改正貸金業法は、サラ金(消費者金融)・信販会社・商工ローン業者らによる過剰な融資と脅迫的な取立てから多重債務問題を引き起こし、大きな社会問題となる中で「多重債務問題解決」を旗印とした世論の大きなうねりが法改正へと導いた。
     しかし、今日、この多重債務問題の背景には、1990年半ば以降推進された新自由主義・市場原理主義の行き過ぎた経済政策によって格差が拡大し、いまや貧困問題が大きく横たわる現実が存在する。貧困問題は、個人の努力のみによって解決することは困難であり、政府は今次改正貸金業法完全施行と同時に国民の貧困問題・生活問題を解決していく具体的な手立てを講じていかねばならない。
  3.  また、改正貸金業法完全施行を踏まえて、貸金業者に対する毅然とした管理・監督の強化が重要である。本法遵守の指導はもともり、脱法行為はこれを厳しく監視するとともに、違反業者は厳しく処分することを望む。同時に、先般の内閣府府令に盛り込まれた所謂「激減緩和措置」の的確性の是非、とりわけ所謂「おまとめローンの推奨策」について、既往貸付分を利息制限法による引き直し計算を前提としていない措置も含めて、「政府多重債務対策本部、有識者会議」において十分な検証・分析・指導という一貫した検討を求めるものである。
  4.  なお、今次改正でグレーゾーン金利が廃止され、利息制限法にまで上限金利は引き下げられた。しかし、市場金利の動向や借り手の支払うことのできる能力を考慮すれば、現行利息制限法水準でも依然高利であると認識する。引き続き、消費者保護の観点にたって適正金利のあるべき姿の検討に着手し早期の見直しを求めたい。
  5.  中央労福協は、改正貸金業法完全施行を明日への運動の大きな糧とし、今回の運動をとおして広がった法曹界や市民団体とのネットワークを一層強化し、「セーフティネット貸付の拡充」「高利貸しのない社会の実現」「貧困のない社会」を目指してさらに取り組みを強化していく。

以上

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