連載

第5回(165号/5月号)

「つなぐ」役割と「つながる」運動のための財政基盤「地域役立資金」

 2030年ビジョン構築のワーキングに参加していた際、重要であるがなかなか取り組みが図れていないテーマとして注目されたのが、資金面の問題です。ビジョンとしてどこまで踏み込んで記載できるかが議論となりましたが、最終的に必要性を捉えて「財政基盤を確立する」と方針化されました。2030年に向けて各都道府県が検討を進めていると思いますので、今回は静岡の財政基盤である「地域役立資金」を取り上げました。
 静岡の「地域役立資金」は、静岡労金の会員が協働の力で生み出してきた果実(利用配当金の一部)を今後将来の長きにわたり静岡における自主福祉運動の一層の推進に役立てるため、労金第58回通常総会(2010年)で会員総意のもと創設した資金です。本資金は、会員勤労者はもとより、広く県下勤労者にも役立つ活用を目指しています。本編第1号で触れさせていただいたとおり、静岡の運動は「組織・未組織を問わず」「地域を活動の拠点」を大前提としていますので、正に運動を進める上での基軸を守るための資金の創設でした。
 その検討の際に、何が必要なのかをテーマとしてまとめたのが次の言葉です。「厳しい経済・雇用環境が続く中、人と人とのつながりが希薄になりがちな時代にあって、勤労者とその家族の生活の向上と安定を図っていくためには、お互いを支え合う仕組みをさらに地域社会に広げていくことが必要である。勤労者が生涯にわたって集い支え合う活動展開をしていくためには、いつでも気軽に立ち寄ることができる場づくりとその活用、立ち寄り・集うためのきっかけづくり、将来を担う若い世代への支援が大切である」。
その考えのもと、「生きがい仲間づくり資金」「本部・地域・地区活動拠点づくり資金」「人づくり資金」として組み立てを行うことになりました。資金の総額目標を30億円と定め、前述したように労金の利用配当金の一部を各会員が自らの意志により拠出するという手続きを経て積み立てに至っています。
 2012年からライフサポートセンター事業の「暮らし何でも相談会」と「ロッキーカレッジ」の実施、本部拠点「ロッキーセンター」の創設、各地域地区労福協の活動拠点として18箇所の事務所の設置と維持管理、労福協独自の奨学金である「ロッキー奨学金」の実施、労金教育ローンへの利子補給など、広く勤労者と家族に役立つ資金として活用しています。

榛南地区労福協事務所開所式

榛南地区労福協事務所開所式

 なお、「ロッキー奨学金」については、2020年のコロナ禍において、対象者を倍増(各校3名を6名)して困窮に陥っている学生への緊急支援策を展開しています。

ロッキー奨学金授与式

ロッキー奨学金授与式

 資金創設において一番大事なのは「何のために積み立てるか」であると思います。その必要性を捉えて「どうやってその資金を構築していくのか」を考えていくことになります。私は、「地域役立資金」により実現すべきこととして、我々の自主福祉運動を更に地域に定着させつなげていくこと、そして我々の運動と地域の福祉の活動とのつながりを更に高めていくことであると考え、労福協の活動を進めてきました。
 労福協の「つなぐ」役割と「つながる」運動を進めるためには、財政基盤は必要です。静岡も現状の福祉活動を続けるためには、「地域役立資金」をどう維持していくかが、今後の重要テーマとなっています。

大滝 正 さん

一般社団法人 静岡県労働者福祉協議会 前専務理事

静岡県清水市(現静岡市)生まれ。静岡県労金の役職員を経て、2016年6月から3年間、静岡県労福協専務理事に就任。2017年6月からは、福祉基金協会専務理事も兼務。労金在籍時から労福協活動に関わる。役員就任時には、フードバンクふじのくに副理事長や県ボランティア協会理事などを歴任。福祉の活動を会員と共に進めると共に、地域における福祉関係の団体との連携を重視してきた。
現在は、フリーな立場でホームレス支援のビッグイシューの活動をボランティアとして進めている。

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