連載

第6回(166号/6月号)最終回

『ベンチャー気質と福祉の創造性』、先人の想いをつなぐために、伝え広げる努力を!

 この寄稿も最終回です。最後は、労福協の典型的な活動である「福祉強化キャンペーン」を取り上げました。2017年度は、「生活底上げ・共助拡大キャンペーン」と銘打ち、①格差社会への警鐘、②可処分所得の向上に資する運動の展開をテーマに取組みました。①については、格差の実態・問題点を多くの人に広めるべく労福協や労組内での学習会の開催、福祉基金協会主催のトップセミナーを特別編として首都大学東京・阿部彩教授の「豊かさの中の貧困」をテーマに講演会を開催するなど、我々がとるべき行動について学ぶ機会としました。その学習を通じて貧困問題を身近なものとして捉えてもらいフードバンクを取組む意味合いなどの理解が深まったと思います。②については、労金のローン「おまとめスリムキャンペーン」と全労済の「保障の点検見直し運動」を中心として会員ごとに取組みを図ることにしました。これは、2020年ビジョンの「事業団体と労組が共に運動する主体」の方針を意識して、事業団体と各労組がそれぞれとるべき行動を示し、利用拡大を進めてきました。この活動により可処分所得の向上につなげると共に、共助拡大として労金がおまとめスリム利用件数に応じて障がい者支援団体へ、全労済が新規利用件数に応じて慈善事業団体(フードバンク)へそれぞれ寄付する仕組みを取り入れてきました。

2017年度生活底上げ・共助拡大キャンペーンチラシ表
2017年度生活底上げ・共助拡大キャンペーンチラシ裏

 また、連合静岡と共にキャンペーン期間中に街宣活動も展開し、我々の運動を多くの市民に伝えると共にチラシ入ティッシュ配りを労福協役員・事業団体役員総出で駅頭・街頭において実施し、キャンペーンの効果を高める取組みも実施しています。

◎キャンペーン街宣活動

キャンペーン街宣活動

 この「福祉強化キャンペーン」は、現在も全国の方針も踏まえて県労福協の重要な運動として継続しています。本編第2回で触れていますが、労働者自主福祉運動は、運動への理解者と事業団体の利用者が多く存在することが生命線です。したがって、なぜその取組みをするのかを伝え理解してもらう、事業団体を利用する意味合いや必要性を正確に多くの方に伝えることが大切であり、そのためのキャンペーンです。そのことを疎かにすると、業者とお客様の関係に成り下がってしまう事態も招くでしょう。運動は、やはり伝え広げる努力をしないと萎んでしまいます。
 2020年のコロナ禍においては、集会などが一切できず活動も制限されましたが、各地域地区労福協は伝え広める努力は不変でした。静岡地域労福協は、労福協・労金・こくみん共済Coopが暮らしをサポートしていることを伝えるチラシを作成し、新聞折り込みで5万部、タウン誌への添付で12万部を配布、勤労者共済会会報への同封、市施設への配架など、コロナ禍でもできる活動を展開しています。

静岡地域労福協のチラシ表
静岡地域労福協のチラシ裏

 以上で静岡の労福協活動の報告とさせていただきます。断片的な大滝サイズの報告でしたが、ご容赦ください。労福協活動を語る最後として、先人から私が労金に入庫して間もなく教わった言葉をお伝えして終わりにします。それは、『ベンチャー気質(かたぎ)と福祉の創造性』という言葉です。常にベンチャーであれ、そして何事も福祉という基軸で創造しろ、自分なりに理解して進めてきたつもりでいますが、精神的な支柱として今も意識しています。後輩の皆様にもこの言葉は残していきたいと思います。
 私は、労福協役員退任後に東京に出向きビッグイシュー東京事務所でボランティアを経験しました。販売者でもあるホームレスの人達とも多く接する機会がありました。そして昨年10月に静岡県において読者会(「ビッグイシュー静岡読者会」で検索)を立ち上げました。何が起きてもどんな状態になっても、何度でも再スタート・チャレンジできる社会基盤は必要です。仕事をつくりチャレンジの場を提供することと情報メディアとして多様なテーマで問題発信するビッグイシューの役割は重要なものがあります。皆様も、路上で販売者を見掛けたら必ず購読してください。定期購読制度もあります。静岡県内では、フェアトレードショップと連携し委託販売も始めています。私は、今後も静岡で活動を続けていきます。皆様とは、違う立場でお会いする機会があるかもしれません。半年間、拙い報告にお付き合いいただきありがとうございました。

ビッグイシューのチラシ

大滝 正 さん

一般社団法人 静岡県労働者福祉協議会 前専務理事

静岡県清水市(現静岡市)生まれ。静岡県労金の役職員を経て、2016年6月から3年間、静岡県労福協専務理事に就任。2017年6月からは、福祉基金協会専務理事も兼務。労金在籍時から労福協活動に関わる。役員就任時には、フードバンクふじのくに副理事長や県ボランティア協会理事などを歴任。福祉の活動を会員と共に進めると共に、地域における福祉関係の団体との連携を重視してきた。
現在は、フリーな立場でホームレス支援のビッグイシューの活動をボランティアとして進めている。

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