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生活困窮者自立支援法等の改正法が成立

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2018年6月27日

 施行後3年の見直しに伴う生活困窮者自立支援法等の改正法案が6月1日、参議院本会議において可決・成立した。発展途上の制度であるため課題は多いが、誰もが社会的に孤立することなく自立できる地域づくりに向けて、大きな一歩となった。

 

◆ 社会的孤立にも対応、各種支援を拡充

 生活困窮者自立支援法は2015年4月に施行され、複合的な課題を抱えた生活困窮者に寄り添いながら包括的な支援が各地で行われてきた。その結果、相談から支援につながった多くのケースで一定の効果が表れている。一方で、まだ相談につながっていない方々も数多くいることや、自治体間格差の問題、就労支援など任意事業の実施率が低く支援の出口が十分に用意されていないなど、様々な課題も見えてきた。
 今回の改正では基本理念が新設され、「生活困窮者の尊厳の保持」を図りつつ、困窮の背景にある「地域社会からの孤立」も含めた個々の状況に応じた支援を包括的かつ早期に行うことや、困窮者支援を通じた地域づくりの視点が明確化された。制度創設時から謳われていたことであるが、法文上明記された意義は大きい。これまで任意事業であった就労準備支援事業や家計改善支援事業は努力義務化され、両事業と自立相談支援事業との一体的実施を促進するとともに、子どもの学習・生活支援事業や居住支援についても強化された。そのほか、自治体の関係部局が連携して相談支援窓口につなぐ努力義務や、支援関係者間での情報共有の仕組み、都道府県による市等への支援事業(研修や広域ネットワークづくりなど)も創設される。

 

◆ 3年間で集中的に実施体制を整備

 国会審議を通じて、就労準備支援事業と家計改善支援事業については、今後3年間で集中的に実施体制を整備し、全ての地方自治体において両事業の完全実施を目指すことが確認された。また、その他の任意事業も含め、各事業の実施率を高めつつ、次期改正における必須化に向けた検討を行うことが参議院の附帯決議に盛り込まれた。こうした目標に向かって、国や自治体、支援団体をはじめ、すべての関係者が基本理念を共有しつつ、一体となって取り組んで行くことが必要である。
 残された課題も多い。生活困窮者自立支援事業は、人が人を支えることを根幹とする制度である。しかし、事業の委託は多くが単年度契約であり、制度を担う相談員・支援員も1年契約で先行きの見えない不安を抱えている。制度を持続可能なものとするためにも、参議院附帯決議に基づき、委託契約にあたって支援の質や実績を総合的に評価することや、「相談員・支援員が安心と誇りを持って働けるよう雇用の安定と処遇の改善」を着実に進めるよう国・自治体に求めたい。
 また、支援対象者の社会参加や就労体験・訓練の場をより多く確保し、地域で支える体制を整備することも課題である。今回の改正で、国と自治体に認定就労訓練事業者への受注機会の増大を図ることが努力義務化された。こうした優先発注や税制優遇等の仕組みも活用しつつ、受け皿となる団体や企業が取り組みやすい環境を整備していくことが必要だ。
 中央労福協は改正法の成立を受けて、生活困窮者自立支援制度の発足前のモデル事業の段階から積極的に関わってきた立場から、更なる制度の定着・発展に向けて、就労支援等の強化に取り組んでいくとの談話を発表した。

 

◆ 問題を残した生活保護法改正

 改正法(一括法)に含まれている生活保護法の改正において、生活保護受給者にのみ後発医薬品が使用原則化されたことは、医療の平等の観点から極めて問題である。生活保護世帯の子どもの大学進学支援については、進学準備給付金(自宅10万円、自宅外30万円)が支給されることは一歩前進ではあるが、進学を後押しするには不十分であり、更なる拡充と改善に向けて進学時の世帯の取扱いも含めた検討を求めたい。

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