2025.07.29
印刷する第52回Web学習会「カスハラの現状とその対応について」

中央労福協は7月29日に第52回Web学習会を開催し、126名が参加しました。今回は、一般社団法人日本ワークルール検定協会理事の斉藤勉さんから、「カスハラの現状とその対応について」をテーマにお話いただきました。
斉藤さんは、各種ハラスメントの根拠法と定義を示しながら、カスタマーハラスメントにかかわる労災補償の支給決定件数が近年大幅に増加していることが報告されました。そのうえで、顧客等の要求の内容によっては、正当なクレームである場合もあるが、要求の妥当性が理解できない場合はカスハラになること、その一因が、行き過ぎた「お客様第一主義」による過剰期待にあることなどについて説明がありました。
北海道勤労者安全衛生センターが行ったカスハラ調査では、仕事に対する自己評価が高い人はカスハラを受けている可能性が高いことが明らかとなるとともに、カスハラのきっかけとなった理由の約6割が「不満のはけ口」など迷惑行為者の側に原因があること、カスハラを体験したのちに約9割が心身に悪変化があることが報告されました。
この調査の結果が、北海道では議員提案でのカスタマーハラスメント防止条例の制定につながり、2025年4月に施行となったことが報告されました。条例のなかでは、「顧客等は、カスタマーハラスメントを行ってはならない」と禁止条項が定められていることが特性になっていること、また、条例を踏まえて行われているカスハラ防止の啓発活動などについて報告されました。
2025年6月には労働施策総合推進法の改正によって、全企業を対象に、カスタマーハラスメント対策が義務化されていることなどが報告され、企業などの具体的取り組み事例が紹介されました。「うちの業界ではこれくらいは当然」という「矮小化」に注意が必要であること、また、カスハラかどうかの判断に悩む場合の対応や、BtoB(企業間カスハラ)の事例などが紹介されました。
講演の合間には講師による手品も行われるとともに、「カスハラロールプレイング」として、店舗での返品要求や、購入品に対する思い込み・勘違いについて、中央労福協の菊池さんと鈴木さんによる演技も織り込まれ、大変理解しやすい講座となりました。