プレスリリース
2025.11.26
印刷する生活保護費基準額の違法引き下げに関する最高裁判決への政府方針について (談話)
労働者福祉中央協議会
事務局長 佐保 昌一
- 11月21日、厚生労働省は生活保護費基準額の違法引き下げに関する「いのちのとりで裁判」最高裁判決への対応策を公表した。公表された対応策は①最高裁判決で違法とされなかった「ゆがみ調整(2分の1)処理」の再実施、②最高裁判決で違法とされた「デフレ調整(-4.78%)」にかえて新たな「水準調整(-2.49%)」を行う、③原告については「特別給付金」として②の減額分を追加給付する、という内容になっている。
- この厚生労働省の対応策は、2013年から2015年にかけて行われた最大10%の生活保護費基準額引き下げに対して、最高裁が減額を「違法」とする初の統一判断を示したことを受け、厚生労働省が設置した「最高裁判決への対応に関する専門委員会」の報告書が示した選択肢のひとつである。この専門委員会自体、原告への直接の謝罪・説明のない中で設置されたものであり、進め方に問題があった。
- 厚生労働省の対応策は、専門委員会でも一部委員が指摘したとおり、紛争の「一回的解決」の要請に沿うものではなく、紛争の解決にはつながらない。また、原告か否かで補償額の差が出る不平等な扱いをすることによって、新たな訴訟を惹起しかねない。このような対応は、司法を明らかに軽視するものであり、法が禁じる「紛争の蒸し返し」に該当する可能性があるため、問題である。
- 本来、国はすべての生活保護利用世帯に対して改定前基準による差額保護費の全額補償を行うべきである。それを前提としつつ、国は最初に原告に直接謝罪の場を設けるべきであった。しかし、この間の国の対応は、謝罪よりも前に原告の「頭越し」に専門委員会を設置し、謝罪についても国会での発言等の間接的なものにとどまっている。この間の対応が、原告の不信感をさらに増大させていることを国は認識すべきである。
- 中央労福協は、この間、訴訟を支えてきた「いのちのとりで裁判全国アクション」と連携し署名活動などの取り組みを進めるとともに、生活保護費についても、物価高騰を適切に評価して大幅な引き上げを行うべきであるとして、国に対し要請を続けてきた。その立場から、今回の「いのちのとりで裁判」最高裁判決への対応策については速やかに撤回することを求めるとともに、国に対して、直ちに原告への直接謝罪の場を設けることを強く要請する。
以上