2026年度 中央労福協における政策・制度実現に関する申し入れ
1.SDGs(持続可能な開発目標)の達成と協同組合の促進・支援
(1)政府のSDGs実施方針の優先課題の一つである「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」の推進をはかるため、化石燃料に依存したエネルギー政策の抜本的な見直しと、「地域循環共生圏」の早期構築に向け、住民一人ひとりの主体性をもとに、これまで協同組合が培ってきた活動を活かし、国、地方が一体となり持続可能な地域づくりを推進する。
(2)労働者協同組合法の目的に掲げられている「多様な就労機会の創出」と「持続可能で活力ある地域社会の実現」に向けて、各省庁の地域づくりの政策に労働者協同組合を位置づけるとともに、設立の促進に向けた予算措置の拡充を講じる。2024年度より新たに実施されている厚生労働省の「労働者協同組合促進モデル事業」(3ヵ年・新規)の着実な実行と、さらなる充実(モデル地域の拡充など)をはかる。
(3)政府は、2025年5月に国会で採択された「国際協同組合年に当たり協同組合の振興を図る決議」や、国連が今後も10年ごとに国際協同組合年を宣言することを呼びかける決議を採択した趣旨を尊重し、協同組合の振興を図る。
- ① 協同組合に関する様々な施策を企画立案し、及び実施するに当たっては、国際連合の「協同組合の発展のための支援的な環境づくりをめざすガイドライン」(2001年)及びILO(国際労働機関)の「協同組合の促進に関する勧告」(2002年)に留意するとともに、ICA(国際協同組合同盟)の「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」(1995年)によって定められた協同組合の定義、価値及び原則を尊重する。
- ② 協同組合が相互扶助の精神に基づき地域社会の持続可能な発展のために活動している点を重視し、持続可能な地域社会づくりに当たっては、その有力な主体として協同組合を位置付ける。
- ③ 現代日本の経済社会において公共部門や営利企業ではない民間非営利組織が果たし得る役割を重視し、多くの人々が組合員として民主的に管理運営する民間非営利組織である協同組合の発展に留意する。
(4)労働者協同組合法は施行後5年(2027年10月)を目途に、必要に応じた同法の見直しを規定している(同法附則第三十二条)。労働者協同組合のさらなる活用促進と、それを通じた「持続可能で活力ある地域社会の実現」に向けて、法律上の様々なニーズに柔軟に応えるべく、同法の改正に関する作業を進める。
2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および防災・減災対策の強化
(1)被災者生活再建支援法による支援内容について、精査・拡充を行う。現行制度は主として住宅の損壊程度を基準としており、高齢者世帯や障がい者のいる世帯など、収入基盤が脆弱な世帯が直面する生活再建の困難さや、半島・離島・過疎地といった地域特性を十分に反映していない。また、支援金の最高額が300万円にとどまっていることは、建築費等の高騰を踏まえると著しく不十分である。被災地の実情に即した支援制度へ速やかに見直すことを求める。また、被災者生活再建支援法の支援内容について、被災地の現状に照らして適切なものとなっているか検証するため、5年を目途とするなど定期的な見直しの条項を追加する。
(2)行政が取り組む各種の災害支援施策を災害ケースマネジメントとして取りまとめ、個別世帯の実状に即した支援が実施されるようにする。その際の個別支援を行政だけにとどめず官民連携して民間も支援に協力しやすい体制を構築するとともに、この取り組みの中核を担う自治体の要員体制・予算を確保し、平時から災害対応力を強化する。
(3)今後の大規模災害に備えて、
- ① 現在想定されている避難所運営をイタリア等の諸外国並みに強化し、「尊厳ある生活を営む権利」を保障する避難所運営と被災者支援の改善をすすめる。
- ② 大規模災害の発災時は指定避難所や自主避難所数のみでは充足しないことから在宅避難者が多数見込まれるが、そのような在宅避難者の把握から必要施策の実施を想定した体制もあわせて構築する。
- ③ 2024年の能登半島地震でも県域を超えた広域な避難が発生し、被災者のニーズを把握することが難しい面があったことから今後の大規模災害に備えた体制づくりを行う。
- ④ 政府は地方自治体に対して、避難者間で感染症などの疾病が蔓延しないよう、大規模災害時の避難や避難所における感染症対策の備えを徹底させ、地域住民への周知・広報を徹底させる。
3.格差の是正、貧困のない社会に向けたセーフティネットの強化
(1)すべての教育にかかる費用の無償化を行い、社会全体で子どもたちの学びを支える。特に、高等教育の漸進的無償化に向けて、以下の3点について改善をはかる。
- ① 大学・短期大学・専門学校の授業料について、現在の半額程度まで引き下げる。
- ② 大学等修学支援制度の対象を拡大するとともに、授業料減免額も拡大する。
- ③ 奨学金返済に係る負担の軽減に向けて、貸与型を有利子から無利子へ、所得に応じた無理のない返済制度や返済困難な場合の救済制度を拡充する。特に給付型奨学金における学業要件について、GPA評価のみを基準として支給の打切りや停止を行う現行制度を改めること、所得連動返還型奨学金の金利の急上昇にともなう返済総額の急増に対して負担の軽減策を検討することについて緊急に対応する。
以上の実現のため、消費税に限らない幅広い財源の活用等を検討し、安定的な財源を確保する。
(2)生活困窮者自立支援については、就労準備支援事業、家計改善支援事業、居住支援事業について、未実施自治体への国の支援や広域連携を強化する。また、相談員・支援員の雇用の安定と処遇の改善等をはかるため、各自立相談支援機関に少なくとも1名以上の専任・常勤の主任相談支援員を配置できるよう国庫により予算を保障する。さらに制度を担う相談支援員の処遇改善や委託期間を5年以上とするなど委託契約のあり方を見直し、支援の質の向上や事業基盤の安定をはかる。
(3)生活保護基準については、下位10%の低所得者層の消費水準と生活保護基準を比較する方法を改め、新たな検証方法を確立し、健康で文化的な生活水準を確実に確保できる基準を確保する。また、生活保護基準額引下げを違法と判断した最高裁判決を真摯に受け止め、司法判断を尊重した対応を行うとともに、当事者への直接の謝罪・説明を含む誠実な対応を行う。
(4)フードバンクを食品ロスの削減のみならず福祉分野と災害時の食糧支援システムとして積極的に位置づけ、省庁横断的な施策を推進する。また、「食品ロス削減推進基本方針」にもとづき、フードバンクが継続的・安定的に発展できるよう、フードバンク団体の基盤強化(活動に必要な人件費への補助、事務所・倉庫・配送用車両等のインフラ整備への助成、人材育成など)への政府や自治体の支援策を拡充する。
(5)所得および世帯構成に応じて直接支給する住宅手当制度を導入し、恒久的な社会保障制度として位置付ける。また、支給水準については「最低居住面積水準」を満たす住宅の家賃を賄える額を確保する。公営住宅については低家賃住宅ストックを拡充するため、老朽化した公営住宅の改善・更新、既存の民間賃貸住宅の活用等を行う。さらに、公営住宅の入居要件を見直し、就労していても低所得に置かれている世帯や若年層など、より幅広い層に入居機会を保証する。
4.公正な労働条件の確保
(1)最低賃金は、生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準への引上げと地域間格差の是正に向け、中期的に最低賃金の国際標準を踏まえた水準である一般労働者の賃金中央値の6割水準をめざし、早期の実現に向けた一層の引き上げと環境整備をはかる。あわせて、監督体制の強化などを通じ、履行確保を徹底する。
(2)公的機関が民間企業などへ委託・発注するすべての事業において、適正な労働条件とサービスの質を確保するため、低価格入札に拘束された発注、不当な人件費や人員の削減、不安定雇用、下請け業者へのしわ寄せを排除する公契約基本法や条例を制定する。
(3)ILO「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約の批准に向け、ハラスメントそのものを禁止する規定を創設する。また、職場におけるハラスメントを行ってはならないことの規範意識の醸成に向け、カスタマー・ハラスメント(以下、カスハラ)および求職者等へのセクシュアル・ハラスメント(求職者セクハラ)対策についても、中小企業を含め、足並みを揃えて一体的に取り組むように厚生労働省が消費者庁、警察庁、業所管省庁などと連携し、各業界や企業の取り組みを支援する。あわせて、取引先の労働者などによるカスハラの相談窓口の整備、求職者等がハラスメントを受けた際の相談体制の整備・周知と事業主への助言・指導などを行う。
(4)性的指向・性自認(Sexual Orientation and Gender Identity:SOGI)の多様性に関する差別・偏見をなくし、すべての人の対等・平等、人権が尊重される社会の実現のため、まずは2023年6月に施行された性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律が定める「基本計画」および「指針」を早急に策定し、国民の理解増進に関する施策を実行するとともに、性的指向・性自認の多様性に関する差別を禁止する法律を制定する。
5.勤労者の福祉格差の是正、生活設計・保障への支援
(1)中小企業勤労者の福利厚生の促進に向けて、働き方改革、構造的な人手不足状況等を踏まえ、改めて昭和63年通達の見直しを行い、政府・自治体・事業主の役割・責務等を明確にした法整備を行うとともに、従業員の福利厚生に積極的な取り組みを行う事業主や、多様な働き方をする労働者等が福利厚生制度を利用できるよう、財政面を支援する補助金ないし助成金を設ける。
(2)改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が努力義務となったことを受け、非課税財形(年金・住宅)契約時の年齢制限(55歳未満)を引き上げる。
(3)財形年金貯蓄および財形住宅貯蓄の非課税限度額を引き上げる。
(4)企業合併・分割、事業譲渡や事業主における契約金融機関の見直し等による預替え需要に対応すべく、非課税財形貯蓄についても、転職等その他現行法令で認められている事由に限らず、自由な預替えを可能とする。
(5)財形関係帳票のデジタル化を促進するため、非課税財形の申告書・申込書等の規格を撤廃する。
(6)現行の生命保険料控除制度(一般生命保険料控除)を、国民生活の安定に資するため、また、国民の自助・自立のための環境を整備する観点から、制度を拡充する(子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充を恒久的な措置とする)。
6.安心・信頼できる社会保障の構築
(1)子どもの暮らしと育ちを支える施策を社会化し、体系的に整備・推進する。国庫負担による教育予算を拡充する。
(2)医療従事者の確保と育成、処遇改善について、勤務環境の改善や多職種連携(タスク・シフト/シェア)を含めた働き方改革を継続的に見直し、人材の定着を図る。特に医師・看護師等の地域偏在を是正し、適正配置と連携体制の強化を図る。また、人材紹介業者への依存を減らし、国や都道府県が主体となって安定的な医療人材確保策を推進する。
(3)マイナンバーカードの取得は本人の選択にもとづくという原則を遵守する。マイナ保険証に対する国民の不安が払拭されるまでは、資格確認書を存続させる。
(4)危機的な介護職員確保のための施策強化と財源を確保する。介護人材の確保・定着に向けて、やりがいや誇りを持って働くことがきる職場づくりをすすめるため、物価高騰や春季生活闘争での平均賃上げ率などを踏まえた介護報酬の十分な引き上げと、公費と介護保険料の負担割合の見直しを行う。また、在宅系サービス事業者の経営実態把握を正確に行い、介護報酬改定につなげる。
さらに、介護保険制度を持続可能な制度として継続していくため、地域づくりをベースとした仕組みと施策強化、そのための財源を確保する。各省庁横断で、高齢者の生活を支えるため、地域の「互助」の取り組み支援、生活支援サービス拡充と国・都道府県のプラットフォーム構築を具体化し、医療・介護・地域資源の連携で地域包括ケアを強化する。
2026年度 中央労福協の政策集
1.SDGs(持続可能な開発目標)の達成と協同組合の促進・支援
(1)政府におけるSDGs推進
- ① SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、協同組合や労働組合、労働者福祉に関わる団体などが連携し、地域における貧困・格差・福祉・教育・環境・自然災害などの社会的課題の解決に取り組み持続可能な社会づくりに向けて役割を発揮するために、政府による支援を強化する。
- ② 政府のSDGs実施方針の優先課題の一つである「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」の推進をはかるため、化石燃料に依存したエネルギー政策の抜本的な見直しと、「地域循環共生圏」の早期構築に向け、住民一人ひとりの主体性をもとに、これまで協同組合が培ってきた活動を活かし、国、地方が一体となり持続可能な地域づくりを推進する。
- ③ 労働者協同組合法の目的に掲げられている「多様な就労機会の創出」と「持続可能で活力ある地域社会の実現」に向けて、各省庁の地域づくりの政策に労働者協同組合を位置づけるとともに、設立の促進に向けた予算措置の拡充を講じる。
2024年度より新たに実施されている厚生労働省の「労働者協同組合促進モデル事業」(3ヵ年・新規)の着実な実行と、さらなる充実(モデル地域の拡充など)をはかる。 - ④ 政府が行うSDGs実施関連施策においては、重要項目として位置付けられている「貧困の根絶・格差の是正」について、政策の実効性や検証可能性を担保するため、貧困の削減目標を設定する。
- ⑤ 2023年12月に改定されたSDGs実施指針においては、協同組合をはじめとした公共的な活動を担う民間主体による地域の課題解決に向けた取り組みへの期待が明確に記載されている。
この点をふまえ協同組合をはじめ地域の各ステークホルダーが、よりスピーディーかつ積極的に取り組めるよう、行政との連携強化や支援の強化をはかる。
また、SDGsの達成に向けて「市民社会・消費者」がより参画していけるよう、啓発・広報を工夫し、実施体制・ステークホルダー間の連携強化に向けた施策を強化する。
あわせて、地球規模の主要課題である気候危機の回避に向け、再生可能エネルギーの技術開発支援についてさらに導入を拡大する。
これらの前提として、平和の持続と持続可能な開発の一体的推進、および包摂社会の実現に向けた人権課題への取り組みについて、社会全体で推進するよう一層強化する。 - ⑥ 政府はSDGsで掲げられている「全ての人の人権が尊重される、誰一人取り残さない社会」のために、外国人・外国にルーツを持つ人々が地域の中で安心して暮らせるよう、人権・労働基本権の保障、交通インフラの整備、保健医療サービスへのアクセスの保障、教育の機会均等など多文化共生社会への転換をはかる。
(2)政府による協同組合支援の強化
- ① 国会は2025年5月、「国際協同組合年に当たり協同組合の振興を図る決議」を採択した。これは、国連が2025年を「国際協同組合年」としたこと、政府が「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」において「協同組合をはじめ、地域の住民が共助の精神によって参加する公共的な活動を担う民間主体が、各地域に山積する課題の解決に向けて、自立と共生を基本とする人間らしい社会を築き、地域の絆を再生し、SDGsへ貢献していくことが期待されている」と表明していることをふまえたものである。また、国連は2025年12月に社会と経済の発展・開発を推進するために、協同組合の事業体モデルの効果的な活用を奨励する目的で、2025年の国際協同組合年に続き、「10年ごとに国際協同組合年を宣言することを呼びかける」決議を採択した。政府は今後も引き続き、この決議の趣旨を尊重し、協同組合の振興をはかる。
- ② 協同組合に関する様々な施策を企画立案し、及び実施するに当たっては、国連の「協同組合の発展のための支援的な環境づくりをめざすガイドライン」(2001年)及びILO(国際労働機関)の「協同組合の促進に関する勧告」(2002年)に留意するとともに、ICA(国際協同組合同盟)の「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」(1995年)によって定められた協同組合の定義、価値及び原則を尊重する。
- ③ 協同組合が相互扶助の精神に基づき地域社会の持続可能な発展のために活動している点を重視し、持続可能な地域社会づくりに当たっては、その有力な主体として協同組合を位置付ける。
- ④ 現代日本の経済社会において公共部門や営利企業ではない民間非営利組織が果たし得る役割を重視し、多くの人々が組合員として民主的に管理運営する民間非営利組織である協同組合の発展に留意する。
(3)協同組合の独自性や社会的役割を考慮した税制の適用
非営利の相互扶助組織としての協同組合の社会的・公共的な役割と持続可能な経営基盤の確立の重要性に鑑み、協同組合に配慮した税制を継続する。
(4)協同組合の法制度の改正
- ① 近年自治体や地域からは、生協がコミュニティの課題に柔軟かつ迅速に対応し、持続可能な地域社会の形成に一層貢献することが求められている。このため、消費生活協同組合法(生協法)を改正し、法の目的に「持続可能な地域社会の実現に資する」旨を明確に位置づけるとともに、員外利用・区域規制の緩和、出資金返還の円滑化、共済代理店制度の拡充等を通じ、規制の緩和と自治の拡大を進める。
- ② 労働者協同組合法は施行後5年(2027年10月)を目途に、必要に応じた同法の見直しを規定している(同法附則第三十二条)。労働者協同組合のさらなる活用促進と、それを通じた「持続可能で活力ある地域社会の実現」に向けて、法律上の様々なニーズに柔軟に応えるべく、同法の改正に関する作業を進める。
(5)持続可能な地域づくりに向けた非営利・協同組織と自治体・行政との協働関係の充実
持続可能な地域づくりのために、自治体・行政と非営利・協同組織との関係を、単なるコスト削減や下請け型の業務委託ではなく、目的や基準(公正労働基準)を明確にした上での対等なパートナーシップにもとづく協働の関係へと再編成する。そのため、地域福祉の向上と住民自治の促進をはかる目的で、指定管理者制度などの公共サービスを支え充実させるための制度・政策を総合的に見直し、充実させる。
特に、指定管理者制度においては①フルコスト・リカバリーの考え方をもとに一般管理費を含む間接経費全体を人たるに値する人件費(公正労働基準)を見込んだ積算とする、②一定額の利益、繰越金(あるいは積立金)を認めて「精算」項目を廃止する、③指定管理料の適正化、④印紙税や消費税の非課税扱いの徹底、⑤会計処理と監査の改善、⑥制度の趣旨に相応しい科目の創設、をはかる。また、公共施設の公募・選定にあたっては、①住民参加の評価と②選定基準の明確化と結果(理由)の公開、③「持続可能な地域づくりに資する業務運営」などの基準(項目)を設ける。
2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および防災・減災対策の強化
(1)大規模災害等の被災者への生活支援
- ① 被災者生活再建支援法による支援内容について、精査・拡充を行う。
現行制度は主として住宅の損壊程度を基準としており、高齢者世帯や障がい者のいる世帯など、収入基盤が脆弱な世帯が直面する生活再建の困難さや、半島・離島・過疎地といった地域特性を十分に反映しておらず、また支援金の最高額が300万円にとどまっていることは、建築費等の高騰を踏まえると著しく不十分であるため、被災地の実情に即した支援制度へ速やかに見直す。また、被災者生活再建支援法の支援内容について、被災地の現状に照らして適切なものとなっているか検証するため、5年を目途とするなど定期的な見直しの条項を追加する。 - ② 子ども・被災者支援法にもとづく「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」に関する各種施策など、原発事故被害者も含む被災者への支援を確実に実施する。
- ③ 原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出については、国際基準を満たすとの科学的根拠は示されている一方、漁業関係者をはじめ地域社会における心理的不安は依然として解消されていないため、引き続き地域住民及び漁業関係者等に対する丁寧かつ継続的な説明と理解醸成に一層努めるとともに、風評被害等の懸念に起因する影響が生じることのないよう、きめ細やかな状況把握と迅速・正確な情報発信を徹底する。
- ④ 二重ローン等の住宅等の既存債務問題について、政府方針を受けたガイドラインによる運用も進められているが、被災者の生活再建を柔軟に支援する観点から、政府による一層の施策の周知広報をはかるとともに、制度化を図る。
- ⑤ 近年、復興住宅での高齢者の孤独死が増えていることから、入居者の孤立化防止の観点から、相談員による見守り・相談などの寄り添い支援を充実させるためにも、既存コミュニティや自治会、社会福祉協議会やNPO等の支援団体との連携強化をはかり、引きこもり防止に向けた対応を進める。
- ⑥ 行政が取り組む各種の災害支援施策を災害ケースマネジメントとして取りまとめ、個別世帯の実状に即した支援が実施されるようにする。その際の個別支援を行政だけにとどめず官民連携して民間も支援に協力しやすい体制を構築するとともに、この取り組みの中核を担う自治体の要員体制・予算を確保し、平時から災害対応力を強化する。
(2)住民主体による復興・再生の取り組みの制度化
政策・方針など意思決定の場にダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の観点から女性をはじめ、障がい者、LGBTQなど多様な属性の方の参画を拡大し、特に防災・復興に関する方針決定、現場対応について早急に意見が反映できる体制の整備を進める。
(3)平時における防災・減災の対策
- ① 災害からのくらし全般の復興支援の備えを加速化して進めるために、地方自治体が平時から、行政・社協・NPO・企業等民間との多様な連携が促進されるよう、その要となる各県域ごとの災害中間支援組織の設立支援や機能拡充に向けた支援を行う。国・都道府県はそのための財源を確保し円滑な支援が進むよう取り組む。
- ② 将来起こりうる大規模災害に備え、燃料確保や物流網の維持確保等の課題に消費者ニーズを反映するため、政府の各種審議会等に、消費者団体等の意見を反映させる。
- ③ 災害時の災害対応拠点となる自治体庁舎・公共施設・医療施設等の耐震化を徹底する。
- ④ 災害時に手助けが必要な高齢者や障がい者、外国人などの迅速な避難が優先されるよう、改正災害対策基本法(2021年5月20日施行)にもとづく「避難情報に関するガイドライン」の実効性を高めるよう、自治体への取り組みを促進し、通信手段の確保や情報提供のあり方など情報発信に関する総合的な取り組みを強化する。
- ⑤ 学校教育はもとより全国民にとって防災教育や実効性のある避難訓練の充実が必要であり、どの世代も防災について学びやすい環境整備を行う。
- ⑥ 今後の大規模災害に備えて、
・現在想定されている避難所運営をイタリア等の諸外国並みに強化し、「尊厳ある生活を営む権利」を保障する避難所運営と被災者支援の改善を進める。
・大規模災害の発災時は指定避難所や自主避難所数のみでは充足しないことから在宅避難者が多数見込まれるが、そのような在宅避難者の把握から必要施策の実施を想定した体制もあわせて構築する。
・2024年の能登半島地震でも県域を超えた広域な避難が発生し、被災者のニーズを把握することが難しい面があったことから今後の大規模災害に備えた体制づくりを行う。
・政府は地方自治体に対して、避難者間で感染症などの疾病が蔓延しないよう、大規模災害時の避難や避難所における感染症対策の備えを徹底させ、地域住民への周知・広報を徹底させる。
3.格差の是正、貧困のない社会に向けたセーフティネットの強化
(1)教育の機会均等 ~奨学金制度等の拡充・改善と教育費の負担軽減~
- ① 幼児教育、初等教育、中等教育、高等教育に至るまで、すべての子どもに教育を受ける権利を保障し、教育費の無償化を漸進的にめざす。奨学金制度については、有利子から無利子へ、貸与から給付へと制度の転換を進め、既存の返済者の負担軽減や救済制度の拡充を通じて、学費を含む教育費全体の負担軽減につなげる。
- ② 社会人が学び直しのできるリカレント教育および生涯学習を推進するため、国公立職業訓練校の拡充をはじめ、高校卒業生や社会人を対象とした職業教育の充実をはかる。
- ③ 文部科学省における奨学金制度の検討の場や、日本学生支援機構の運営(運営評議会等)に、奨学金利用者、保護者、勤労者代表の参画を進め、当事者の意見が制度運営に適切に反映される仕組みを構築する。
- ④ 高等教育費の漸進的無償化に向け、教育の機会均等の確保、将来を担う人材育成、親・保護者の経済的負担軽減の観点から、教育分野における公財政支出をOECD平均水準まで引き上げる。その際、消費税に限らない幅広い財源の活用を検討し、安定的かつ持続可能な財源を確保する。
- ⑤ 「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」に定められた「高等教育の漸進的無償化」の実現に向け、将来的に授業料無償化の対象者を段階的に拡大することを展望し、ロードマップの検討・策定を行う。
- ⑥ 「高等教育の漸進的無償化」に向け、大学等修学支援制度を拡充し、さらなる支援拡大を進める。このため当面の措置として、大学・短期大学・専門学校の授業料について、現在の半額程度まで引き下げる。また、大学等修学支援制度の対象を拡大するとともに、授業料減免額も拡大する。大学の授業料引き上げに歯止めをかけるため、国立大学法人運営費交付金および私学助成を拡充し、高騰した大学等の授業料を引き下げることが可能となる環境を整備する。
- ⑦ 給付型奨学金における学業要件について、GPA評価のみを基準として支給の打切りや停止を行う現行制度を改め、柔軟な要件へ見直すとともに、個々の事情を踏まえた継続支援や救済措置を拡充する。
- ⑧ 貸与型奨学金については、全面的な無利子化をめざし、日本学生支援機構法を改正のうえ、一般会計からの支出とする。無利子奨学金の利用者が有利子奨学金を上回るよう貸与基準を緩和し、無利子奨学金を大幅に拡充する。
- ⑨ 返還期限猶予制度については、延滞があることを理由とする利用制限を撤廃し、猶予期間の上限を10年から15年へ延長するなど、返済困難者への緊急的な救済措置を講ずる。所得基準についても大幅に緩和し、将来的には一定期間または一定年齢到達後の残額免除制度の導入を検討する。
- ⑩ 減額返還制度については、対象者の拡大をはかるとともに、結婚、出産、疾病等のライフイベントに応じて柔軟に返還できる制度へ早急に改善する。
- ⑪ 延滞金は廃止を原則とし、廃止までの間は賦課率を引き下げる。返済充当順位は元本優先とし、支払い能力がないにもかかわらず繰り上げ一括返済を求める運用は是正する。延滞者に対しては救済支援を優先し、安易な信用情報機関への登録は行わない。
- ⑫ 所得連動返還型奨学金については、年収ゼロや非課税世帯であっても一律に返還を求める制度設計を見直す。返済開始の最低年収は300万円以上とし、当該水準に達するまでは猶予申請を要せず返済を求めない仕組みとする。金利の急上昇にともなう返済総額の急増に対して、負担の軽減策を検討する。有利子奨学金および既返済者への適用拡大も行う。
- ⑬ 保証制度については、人的保証から機関保証中心への移行を進め、保証料の引き下げなど負担軽減策を講ずるとともに、保証人に過度な返済を求めないためのガイドラインを整備・実行する。
- ⑭ 大学院修士課程および博士課程の学生に対しても給付型奨学金を導入し、高度専門人材の育成を支える。
- ⑮ 授業料後払い制度の導入にあたっては、現行の奨学金制度や大学等修学支援制度、将来的な高等教育無償化への影響を踏まえ、幅広い国民各層の参加のもとでオープンな議論を行うとともに、返済困難時の十分な救済策や一定時点での返還免除を組み込んだ制度設計とする。卒業後、年収ゼロであっても月額2,000円の返還を求める現行の設計は見直す。
- ⑯ 奨学金返済に対する税制支援、親・保護者の学費負担軽減のための政策減税、入学時費用への支援強化、制度説明および相談体制の充実、在学採用の通年化、周知徹底と事務負担軽減を総合的に進める。
- ⑰ 大学等修学支援制度の見直しおよび授業料後払い制度の導入により、日本学生支援機構における業務量および相談件数が増加しているため、制度運用の円滑化に資する十分な相談体制の拡充と人員・組織体制の整備をはかるとともに、申請書類の簡素化を進め、申請者および学校の事務負担の軽減をはかる。
(2)地域共生社会の実現に向けて
重層的支援体制整備事業を実効性あるものとして推進するため、補助金の一括交付の対象となっている生活困窮、高齢、障がい、子どもの各分野について、全体として十分な財政規模を確保し、安定的かつ継続的に予算を拡充する。あわせて、本事業の本来の目的である、制度・分野の縦割りを超えた包括的な相談支援や、当事者に寄り添う伴走型支援、社会参加や地域づくりの推進が十分に行われるよう、孤独・孤立対策や生活困窮者支援、子ども・若者施策等の関連施策との一層の連携をはかるとともに、自治体の創意工夫を生かせる柔軟な制度運用と支援体制の強化を行う。
(3)生活困窮者自立支援制度の拡充・体制整備
- ① 就労準備支援事業、家計改善支援事業、居住支援事業について、未実施自治体への国の支援や広域連携を強化し、福祉事務所設置自治体での完全実施を早期に達成するとともに、次期法改正において必須事業化を行う。
- ② 居住支援事業について、対象をホームレスに限定せず、居住支援を必要とするすべての人に拡大し、公営住宅、セーフティネット住宅、空き家の活用や居住支援法人との連携を制度的に位置づけ、実施率を高める。
- ③ 生活困窮者自立支援制度と生活保護制度が相互に重なり合いながら機能するよう、生活保護利用者の就労準備支援・家計改善支援・居住支援事業参加時におけるケースワーカーの継続関与を確保し、両制度の円滑な連携と十分な人員配置を法制度・運用の両面から保障する。
- ④ 支援会議の設置の努力義務化にあたっては、他の法定会議や支援調整会議も含めて現場に負荷をかけないよう留意し、機能的・効率的な運用ができるよう工夫を促し、好事例を横展開する。
- ⑤ 子どもの学習支援・生活支援事業の自治体実施率を高めるとともに、子ども食堂など地域の多様な居場所や多世代交流の場が広がるよう行政として環境整備を進め、教育関係者等との連携を強化することで、支援ニーズを抱える子ども・若者や生活困窮者が必要な支援につながるようアウトリーチ機能を強化する。
- ⑥ 就労支援期間中の生活支援給付や緊急時の小口給付・貸付の制度化を検討するとともに、就労体験時の交通費・昼食代、学習支援事業における食材費等を補助対象に含め、企業・団体へのインセンティブ施策を含めた地域の受け皿づくりを推進する。
- ⑦ 相談員・支援員の雇用の安定と処遇の改善等をはかり、寄り添い型支援が十分に行えるよう、地域特性や人口規模に応じた人的体制を整備し、自立相談支援の専任化を進め、各自立相談支援機関に少なくとも1名以上の専任・常勤の主任相談支援員を配置できるよう国庫により予算を保障する。あわせて、雇用の安定と賃金水準の引き上げをはかるため、政府の責任で実態調査を行い、処遇改善に応じた補助の加算、就労契約形態の全国基準化や賃金水準の目安を示すとともに、研修の充実や資格取得支援、専門性に見合った報酬水準の確保を進める。さらに、委託事業については最低5年以上の委託期間を基本とし、価格競争に偏らない総合評価方式を徹底するとともに、一般管理費を含めた委託費の対象経費の見直しを行い、事業の安定運営と支援の質の向上をはかる。
- ⑧ 引きこもりを対象とした貧困ビジネス「引き出し屋」による被害の実態調査を行い、消費者への注意喚起、相談体制の整備、悪質な業者の摘発等を行うとともに、被害発生防止のための法規制や被害回復のための民事ルールの整備等を検討する。あわせて、支援を必要とする人が適切な公的支援につながるよう、生活困窮者自立支援事業や引きこもり支援センター等の周知やアウトリーチを強化する。
- ⑨ 「生活困窮者自立支援制度」等社会的困難にある人々に対する自立・就労支援における社会的事業者の活用と雇用・就労創出策の充実
- a)生活困窮者自立支援制度」等で実施される「就労準備支援事業」「就労訓練事業(中間的就労)」等において、「社会的企業」や労働者協同組合を積極的に位置づけ活用し、地域における雇用・就労創出や社会的居場所の推進と連動させる政策を推進する。特に「就労訓練事業」においては、事業所認定の推進をはかるとともに、地方自治体による優先発注など公共調達の充実をはかるために特段の支援策を講じる。
- b)就労困難な若者や女性、高齢者、障がい者など社会的困難にある人々を対象に、地域における就労創出による社会参加と居場所づくりを目的に、労働者協同組合づくりを含めた社会的訓練などの公的職業訓練と公的に就労を保障する制度を組み合わせた「公的訓練・就労事業制度」(仮称)を新たに創設する。
- c)こども基本法・こども大綱において「悩みや不安を抱える若者や家族に対する相談体制の充実」が掲げられており、その推進のため、困難な状態にある若者の相談や就労を支えるような居場所機能の充実をはかる。また、「求職者支援訓練」においても、「生活困窮者自立支援制度」や「就職氷河期世代活躍支援プラン」との積極的な連携をはかるとともに、制度の抜本的見直し(※1)を行い、公的職業訓練の一層の充実と制度の弾力的運用(※2)、訓練メニューの創造的開発などをはかる。
※1:①求職を一律の目的としない、仕事おこしや分野別の縦割りを超えたカリキュラムの設計と弾力的運用、②就労に困難を抱える若者や高齢者、障がい者などに受講の枠を広げるためにも雇用保険財源から一般財源への移行等
※2:公共的社会サービスを担う地域の非営利組織、協同組合、中小企業等のコミュニティ事業者が実施主体となることが可能となる等
(4)人間の尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度への改善
- ① 生活保護基準額引下げを違法と判断した最高裁判決を真摯に受け止め、司法判断を尊重した対応を行う。原告に限定した補償や新たな減額措置を行うことなく、すべての生活保護利用世帯に対し改定前基準との差額を補償するとともに、当事者への直接の謝罪・説明を含む誠実な対応を行う。
- ② 生活保護基準については、特例加算に依存した対応にとどめることなく、生活保護基準について、物価動向を適切に反映した継続的な引上げを行う。このため、下位10%の低所得者層の消費水準と生活保護基準を比較する現行手法を見直し、生活実態に即した新たな検証方法を確立する。
- ③ 生活保護法の運用にあたっては、生活資金が逼迫している場合は速やかに保護を開始するとともに、生活保護の申請抑制や扶養義務の強化を招くことがないよう、現場に徹底する。
- ④ 生活保護の利用にあたって行われる扶養照会については、扶養照会を拒否する要保護者の意向を尊重した対応を徹底するよう、政府は地方自治体に指導する。また、要保護者が生活保護の利用をためらう一因となっていることに鑑み、扶養照会を撤廃する。
- ⑤ 生活保護の利用が自立を妨げることのないよう、最低生活費の3か月分程度までの現金・預貯金を認めるなど資産要件を緩和する。生活保護世帯の子どもが大学等に進学した場合の健康保険料免除など負担軽減を行う。受診抑制や最低生活費割れを招くおそれのある医療費の償還払いは行わず、生活困窮者全体の医療アクセスを保障する制度とする。
- ⑥ 住居のない要保護者について、無料低額宿泊所等の集団処遇施設に入居することを条件とする運用を改め、居宅保護を原則するとともに、居宅保護までの一時生活支援においても個室提供を原則とする。
- ⑦ 外国人に対する生活保護の準用については、根拠のない利用厳格化ではなく、国際人権規約等の趣旨を踏まえ、日本で生活実態のある在留外国人が排除されないよう、現行の在留資格による限定を見直し、生活保護の準用対象となる在留資格要件の緩和を行う。
- ⑧ 生活保護制度が国民の権利として適正に保障されるよう、生活保護基準の決定過程について厚生労働大臣の告示のみで行う現行の仕組みを見直し、生活保護基準部会への諮問・答申の尊重や当事者参画を含む透明で民主的な手続を確立する。あわせて、申請権の周知徹底、申請書等の常設・オンライン申請への対応を進めるとともに、申請や処遇をめぐる苦情・不服申立てを受け付け、調査・勧告権限を有する第三者機関を設置し、権利救済の実効性を確保する。
- ⑨ 生活保護行政の公的責任や業務拡大・高度化等を踏まえ、地方交付税の福祉事務所費の大幅な改善をはかり、正規公務員によるケースワーカーを増員するとともに、職員の専門性を高める。また、ケースワーク業務の外部委託は、申請・受給抑制を生じ、生活保護行政の劣化を招く恐れがあることから行わない。
- ⑩ 社会保障の脆弱さが生活保護制度に過度に負荷をかけている制度全般のあり方を見直すとともに、人としての尊厳や生存権を保障する観点から生活保護法を見直し「生活保障法」への改正を検討する。
(5)子どもの貧困・虐待対策の強化
- ① 2023年4月1日のこども家庭庁の創設、こども基本法の制定、その後2023年度末に制定された「こども大綱」および毎年策定される「こどもまんなか実行計画」をふまえ、当事者である子どもの視点を大切にし、「将来」だけでなく、「現在」の生活の支援、経済的支援、教育支援に取り組む基本姿勢をいっそう明確化する。また近年、物価高騰や家庭の孤立化、いじめの深刻化、児童虐待相談件数の増加、子どもの自殺など、子どもを取り巻く環境は一層厳しさを増している。「こども家庭庁」と関係省庁が緊密な連携をはかり、包括的な支援策を迅速に進める。具体的には以下の観点から根本的な貧困対策を推進する。
- a)市町村こども計画の努力義務化を受けて、具体的な対策実施の徹底
- b)多様な貧困指標と改善目標の設定
- c)教育無償化の中間層への拡大
- d)奨学金制度の改善(給付型の拡充、返還負担軽減)
- e)生活保護世帯の大学進学支援措置の拡充
- f) 妊娠期から乳幼児期までの切れ目ない支援強化
- g)保護者の就労支援における、所得の増大他、職業生活の安定向上支援策の実施
- ② 子どもの貧困は親・保護者の貧困に起因しており、特にひとり親世帯の約半数の子どもたちが貧困状態にあることから、ひとり親世帯に対して、公的手当や税額控除の拡大など、総合的な対策を実施する。その場合は、離死別・未婚を問わない。
- ③ 児童手当や児童扶養手当など公的手当の支給は、低所得世帯の収入の安定のため、毎月の支給とする。
- ④ 里親制度については、子どもの最善の利益を最優先に、家庭養育を原則とする方針の実効性を確保する。あわせて、里親と子ども双方に対する切れ目のない伴走型支援と権利保障を国の責任で制度的に確立する。
- ⑤ 相次ぐ児童の虐待死、児童虐待の増加という現状を踏まえ、児童相談所の体制強化や地方自治体における実態把握、関係機関の連携強化、社会的養護下にある児童に対する支援策の充実などをはかる。
(6)フードバンク活動の促進
- ① フードバンクを食品ロスの削減のみならず福祉分野と災害時の食糧支援システムとして積極的に位置づけ、省庁横断的な施策を推進する。生活困窮者支援に関わる行政や様々な民間団体を通じたフードバンク食品の提供や、パントリー設備の整備、食品ロス削減を通じた環境負荷の低減など、福祉・環境政策とも連携した施策を推進する。
- ② 「食品ロス削減推進基本方針」にもとづき、フードバンクが継続的・安定的に発展できるよう、フードバンク団体の基盤強化(活動に必要な人件費への補助、事務所・倉庫・配送用車両等のインフラ整備への助成、人材育成など)への政府や自治体の支援策を拡充する。
- a)地方公共団体が策定する食品ロス削減推進計画において、地方公共団体がフードバンク活動の支援策を盛り込むよう、政府からも必要な助言や支援を行う。
- b)フードバンク活動やフードロス削減、地方創生に対する政府および自治体の補助金、交付金については、フードバンク団体の基盤強化に柔軟に活用できるようするとともに、さらなる拡充と継続的な支援を行う。
- c)物価高騰等に対応し、政府備蓄米のさらなる提供や余剰農産物の活用などにより、フードバンクを通じた国民への食の支援を積極的に行う。
- ③ フードバンクへの食品提供を促進するため、寄附された食品の管理に関するガイドラインを作成し寄贈食品への社会的信頼を高めていくとともに、食品寄附に伴って生じる民事責任のあり方を検討し必要な法整備をはかる。
(7)自死・多重債務対策等
- ① 自殺総合対策大綱にもとづき、地方自治体や学校、地域の団体における実効性のある自殺対策に向けて、相談体制の拡充や、自殺予防教育の充実など、「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現」への十分な対策を講じる。
- ② 多重債務者対策本部が貸金業者による脱法行為や、弁護士・司法書士の大量広告事務所による不適切な債務整理の問題などを厳しく監視できるよう、都道府県・多重債務対策協議会における実態の検証・分析の強化と多重債務者対策本部との関係で有機的な連携をはかる。
- ③ 生活困窮者や多重債務者等の生活支援を目的とする生活再建支援事業(相談貸付事業等)を行う民間非営利組織が活用できる公的信用保証制度等のしくみを検討する。
- ④ 多重債務問題の誘発が懸念されるカジノ問題については、カジノ解禁の見直し・廃止について検討する。
- ⑤ 政府の多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会でも指摘されているとおり、総量規制の対象外である銀行カードローンに起因する過剰融資や、貸金業法等の適用を逃れSNS個人間融資・後払い現金化・先払い買取現金化等を行うヤミ金融などについて、多重債務防止の観点から啓発活動をはじめ法改正を含めた必要な対応をはかる。
- ⑥ 成人年齢の引き下げにより、18歳、19歳が 未成年者取消権を行使できなくなったことから、若者が過大な債務を負うことがないよう、学校・家庭等における金融教育の充実や情報発信の強化をはかるとともに、貸金業者に対し総量規制など貸金業法の諸規定を確実に遵守するよう指導を徹底する。
(8)住まいの安心、住宅セーフティネットの拡充
- ① 「住まいの権利」を基本的人権として明確に位置づけるとともに、分立している住宅保障の仕組みの統合をはかる。住宅供給や物件規制などのハード施策は国土交通行政、住宅困窮者への生活支援は厚生労働行政、刑余者等の社会復帰支援は法務行政と、所管が縦割りとなっている状況を踏まえ、省庁間の連携と一体的な運用を強化する体制を整備する。さらに将来的には、「居住支援基本法(仮称)」などの理念法を制定し、住まいの権利保障を柱とした省庁横断的な政策推進の枠組みを構築する。
- ② 一定所得以下の賃貸住宅居住者に対して、支払い家賃額20%(上限は24万円)を各年分の所得税額から控除する「家賃比例税額控除制度」を創設する。
併せて、低~中所得世帯に対し、所得および世帯構成に応じて直接支給する住宅手当制度を導入し、臨時的措置ではなく恒久的な社会保障制度として位置付ける。対象となる所得要件については、公営住宅入居基準(単身世帯の場合、月収15万8,000円以下)を参考に設定する。また、支給水準については最低生活保障の観点から、住生活基本計画に定められた「最低居住面積水準」を満たす住宅の家賃を賄える額を確保する。 - ③ 社会住宅・非営利住宅など低家賃住宅ストックを拡充し、若年・未婚・低所得層への供給を拡大する。
- a)公営住宅制度について、量的・質的な拡充をはかる。具体的には、公営住宅ストックの供給量を着実に増加させるとともに、老朽化した公営住宅の適切な改善・更新を行う。また、既存の民間賃貸住宅を活用しつつ、それらを住宅保障の観点から公的賃貸住宅として位置付ける制度の検討を進め、公的賃貸住宅供給の裾野を広げる。
- b)入居対象者の範囲の拡大をはかる。公営住宅の入居要件である収入基準を見直すとともに、従来の高齢者、障がい者、母子世帯といった福祉カテゴリーに該当する世帯にとどまらず、就労していても低所得に置かれている世帯や若年層など、より幅広い層に入居機会を保証する。その際、特定の層に偏らないソーシャルミックスの観点を重視し、地域社会の包摂性を高める公営住宅運営を推進する。
- ④ 生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金について、制度の実効性を高める観点から改善・拡充をはかる。
- a)住居確保給付金の支給期間(最大9ヵ月)の延長や、再支給に関する条件の緩和を行う。
- b)「離職・廃業後2年以内」という離職要件や求職活動要件を撤廃し、居住水準保障を目的とした制度に再編する。
- c)収入要件を公営住宅の入居基準と同程度まで緩和するとともに、支給額の引き上げを行う。
- ⑤ 住宅セーフティネット制度の見直しと拡充をはかる。
- a)セーフティネット住宅は目標を大幅に超える登録数にもかかわらず専用住宅や空室が極端に少なくほとんど利用できない状況にあることから、登録目的や基準等を見直す。
- b)民間賃貸住宅の供給主体である家主に対し、補助金の給付や税額控除などの税制優遇措置を講じることで、家賃および家賃債務保証料の低廉化をはかる。
- c)地方自治体、不動産関係団体、居住支援法人が連携する「居住支援協議会」のさらなる設置推進を行う。特に、住まいの貧困が深刻な大都市部では、すべての基礎自治体での設置を目指す。
- d)住宅確保要配慮者の居住支援を担う居住支援法人の収支状況を見ると、居住支援事業が赤字となっている法人が5割を超えていることから、財政的な支援を行う。また、居住サポート住宅が貧困ビジネスなどに悪用されることがないよう、万全の措置を講ずる。
- ⑥ 住宅施策と福祉施策を連携させ、住まいの確保と生活支援を一体的に提供する「居住福祉」の仕組みを構築する。また居住福祉の問題に対しては、社会福祉分野と住宅・建築分野の専門家の交流が十分に進んでおらず、学際的研究が遅れているため両分野の連携を促進し、居住と福祉を統合的に捉える研究・政策形成基盤の整備を進める。
- ⑦ 適正な住居費水準および住宅の質を客観的に判断できる指標と計測システムを整備する。具体的には、世帯の所得水準に応じた適正な住居費負担率の基準を明確化するとともに、住宅の居住面積、設備、安全性等を踏まえた最低居住水準の評価尺度を確立する。
- ⑧ 頼れる身寄りのない単身高齢者や、生活困窮者等が直面する保証人問題について、制度の見直しを行う。
- a)公営住宅における保証人要件の廃止を徹底する。公営住宅への入居に際して保証人を求めている地方自治体に対し、保証人確保の規定を廃止するよう技術的助言をさらに強化する。
- b)住宅確保を社会的権利として保障する観点から、営利性に左右されない非営利主体による家賃債務保証の仕組みを構築する。連帯保証人を代行し、家賃滞納が発生した場合に賃借人に代わって代位弁済を行う保証サービスを拡充することで、保証人不在を理由とした入居拒否の解消をはかる。
- c)民間の家賃債務保証会社による過度な取立てやいわゆる「追い出し行為」を防止するため、適切な規制法制を整備する。また、家賃滞納に関する情報のデータベース化や共有が、信用力の低い人々を民間賃貸住宅市場から排除することにつながらないよう、情報の収集・利用・管理に関する明確なルールを整備する。
- ⑨ 地域単位での学生寮の整備と税制支援を進めるとともに、自宅外通学生への家賃補助や給付型奨学金の拡充など、高等教育を受ける学生への住宅費支援を強化する。
- ⑩ 生活困窮者を食い物にする「貧困ビジネス」(追い出し屋、脱法ハウスなど)を根絶する。
- ⑪ 高齢者の居住用資産の有効活用により生活の安定・向上をはかるため、リバースモーゲージ制度の普及に向けた支援を講ずる。
4.消費者政策の充実強化
(1)地方消費者行政の充実・強化
「地方消費者行政強化交付金」の予算や消費者行政担当職員を確実に確保し、DX化の推進とともに地方自治体と二人三脚で消費者行政の充実・強化をはかる。特に30代や40代から長くキャリアを積める消費生活相談員の育成等の相談員確保・強化のための対策を重点課題とし、引き続き取り組む。なお、消費生活相談のDX化については、自治体との丁寧な情報共有・意見交換を行いながら進めるとともに、消費生活相談員の確保や働きやすさなどの環境改善もあわせて取り組む。
(2)消費者団体の公益的活動に対する支援
消費者庁は、現に公益的な活動を行う適格消費者団体、特定適格消費者団体および各地に設立されている消費者団体に対し、その意義を社会的にも評価し、財政面・情報面の支援を行う。
また、2022年に改正された「消費者裁判手続き特例法(以下特例法という)」附則第7条では、法の趣旨および内容について国民への周知をはかるよう努めるものとされており、引き続き国民への制度の周知をはかる。
さらに、改正特例法に盛り込まれた「消費者団体訴訟等支援法人」について、支援法人が期待される役割を発揮できるよう、必要な支援を行う。
(3)地域での消費者教育の推進に対する支援
消費者被害の未然防止に向けた取り組みを積極的に進めるため、成年年齢引下げに伴う若年者への消費者教育を行う教育機関や国民生活センターなどとの連携体制の構築、政府の重点施策における好事例の情報提供、「消費者教育コーディネーター」の活用等、消費者教育の充実に取り組む。
(4)その他
- ① 物価の動向を引き続き監視するとともに、電気料金・都市ガス料金、LPガス・灯油・ガソリン価格を含めて家庭用エネルギー料金がすべて自由化された状況を踏まえ、消費者の権利を確保するための新たな政策を検討する。また、電気の小売規制料金の値上げは、電力会社から時期や理由を分かりやすく丁寧な説明を行うとともに、適切な対応となるよう、消費者・需要家の意見を十分に聞きながら値上げ幅が適切なものとなるよう厳しく審査を行う。
- ② LPガス、石油製品(ガソリン・灯油)については、消費者のくらしに欠かせないものであることを踏まえ、公共料金に準じ、価格の決定過程の透明性、消費者参画の機会および価格の適正性など、様々な観点を踏まえた施策を行う。
- ③ 公正な取引を担保するため、サプライチェーン全体における労働環境への理解を促す消費者教育や、雇用・労働を含む人や社会・環境に配慮したエシカル消費を促進する。
5.ディーセントワークの実現
(1)最低賃金の引き上げ、公契約基本法等の制定
- ① 最低賃金は、生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準への引上げと地域間格差の是正に向け、中期的に最低賃金の国際標準を踏まえた水準である一般労働者の賃金中央値の6割水準をめざし、早期の実現に向けた一層の引き上げと環境整備をはかる。あわせて、監督体制の強化などを通じ、履行確保を徹底する。
- ② 公的機関が民間企業などへ委託・発注するすべての事業において、適正な労働条件とサービスの質を確保するため、低価格入札に拘束された発注、不当な人件費や人員の削減、不安定雇用、下請け業者へのしわ寄せを排除する公契約基本法や条例を制定する。
(2)障がい者雇用の促進
法定雇用率の引き上げを踏まえ障害者雇用率の達成に取り組むとともに、障がい者一人ひとりの特徴や場面に応じた合理的配慮の提供や差別禁止の徹底が適切に実施されるよう指導する。
(3)高齢者の就労環境改善
- ① 希望する高齢者の就労条件を整備するため、働きに応じた処遇を実現するとともに、高齢者の体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況に合致した職場環境を整備する。加えて高年齢者就業確保措置として業務委託契約など雇用契約以外の契約方式をとる場合であっても、安全および健康への配慮に十全を期す。
- ② 低所得高齢単身女性を生み出している主要な原因の一つである雇用における男女の不平等をなくすため、速やかに法的措置を講じ、体系的・計画的施策を進める。
(4)職場におけるハラスメントの根絶
- ① ILO「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約の批准に向け、ハラスメントそのものを禁止する規定を創設する。また、職場におけるハラスメントを行ってはならないことの規範意識の醸成に向け、カスタマー・ハラスメント(以下、カスハラ)および求職者等へのセクシュアル・ハラスメント(求職者セクハラ)対策についても、中小企業を含め、足並みを揃えて一体的に取り組むように厚生労働省が消費者庁、警察庁、業所管省庁などと連携し、各業界や企業の取り組みを支援する。あわせて、取引先の労働者などによるカスハラの相談窓口の整備、求職者等がハラスメントを受けた際の相談体制の整備・周知と事業主への助言・指導などを行う。
- ② 性的指向・性自認(Sexual Orientation and Gender Identity:SOGI)の多様性に関する差別・偏見をなくし、すべての人の対等・平等、人権が尊重される社会の実現のため、まずは2023年6月に施行された性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律が定める「基本計画」および「指針」を早急に策定し、国民の理解増進に関する施策を実行するとともに、性的指向・性自認の多様性に関する差別を禁止する法律を制定する。
(5)ワーク・ライフ・バランスの推進
- ① 仕事と家庭・子育ての両立を促進するために、特に男性の育児休職取得の推進や、短時間正社員制度の導入やテレワーク等の働き方改革を促進する。その際、テレワーク等になじまない職種に従事する労働者も含めて対策を講じる。
- ② 特に待機児童数の多い自治体を中心に保育士の人材確保、処遇改善を早急に進める。保育の質の向上、事故防止等の観点から教育訓練を実施・促進する。
また、働き方に中立的な社会保障制度等の構築に際して、働く意欲のある保護者のニーズに十分に応えられるよう質的・量的な充実をはかる。
(6)その他
社会保障の基盤である良質な雇用の安定と拡大をはかる。なかでも偽装請負契約・ギグ労働、フリーランス等の「雇用類似の働き方」の実態を調査し、高齢者を含む全ての就労者を保護する法制を整備する。
6.中小企業勤労者の福祉格差の是正
- ① 中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、政府・自治体・事業主の役割・責務等の明確化、ワーク・ライフ・バランスの推進、また、政府が進める「働き方改革」が勤労者の生活を「ゆとりと健康で充実したもの」とするため福利厚生の必要性を明確にし、政府・自治体等・事業主の責務を明確にした法整備を行う。あわせて、従業員の福利厚生に積極的な取り組みを行う事業主、非正規労働者等が福利厚生制度を利用できるよう、財政面の充実をはかる。
- ② 中小企業勤労者福祉サービスセンターの自立と再生に向けて、広域化を推進するとともに、中小企業の「働き方改革」を福利厚生面から支える総合的福祉センターを展望し、魅力あるサービス内容への抜本改革を進める。
7.勤労者の生活設計・保障への支援
(1)財形制度の改善
- ① 改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が努力義務となったことを受け、非課税財形(年金・住宅)契約時の年齢制限(55歳未満)を引き上げる。
- ② 財形年金貯蓄および財形住宅貯蓄の非課税限度額を引き上げる。
- ③ 企業合併・分割、事業譲渡や事業主における契約金融機関の見直し等による預替え需要に対応すべく、非課税財形貯蓄についても、転職等その他現行法令で認められている事由に限らず、自由な預替えを可能とする。
- ④ 財形関係帳票のデジタル化を促進するため、非課税財形の申告書・申込書等の規格を撤廃する。
- ⑤ 非課税財形において、申告書に記載すべき項目の見直しを行う。(例:「育児休業等をする者の財産形成非課税住宅・年金貯蓄継続適用申告書」における「子の氏名」、財産形成非課税住宅・年金貯蓄異動申告書における「変更前住所」の報告廃止等)。
- ⑥ 介護や子育て・教育に係る非課税財形の払出し時には利子等を非課税とし、遡及課税しない扱いとする。また、財形住宅の払出し時には自然災害等により被災した場合に限らず、本人と生計を一にする親族が所有している住宅の建替え、改修等にも利子等を非課税とし、遡及課税しない扱いとする。
- ⑦ 財形住宅の増改築(リフォーム等を含む)における適格払出しの要件を緩和し、本人が居住する住宅に係る屋根修理・外壁塗装や、災害に備えた増改築等(水道管凍結防止設備、家庭用蓄電池の設置など)を対象にすることや、適格払出しの費用要件(75万円超)を撤廃する。また、払出し時または解約時の必要書類を簡素化する。
- ⑧ 「NISA」や「iDeCo」などの資産形成手段が注目されるなかであっても、給与天引きによる積立である財形制度が資産形成の基盤となることを勤労者に積極的にアピールする。
- ⑨ 財形制度の導入および利用促進に向けて、これまで行った広報活動などを検証し、実効性のある周知広報活動および支援を行う。
- ⑩ 福利厚生の均等・均衡待遇の確保の観点から、パート・有期契約等で働く勤労者が財形制度を利用しやすいように対策を講ずる。
(2)共済制度に関する税制等の改善
- ① 現行の生命保険料控除制度(一般生命保険料控除)を、国民生活の安定に資するため、また、国民の自助・自立のための環境を整備する観点から、制度を拡充する(子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充を恒久的な措置とする)。
- ② 遺族の生活資金確保のため、死亡共済金の相続税非課税限度額について、現行限度額(「法定相続人数×500万円」)に「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算する。
- ③ 消費税等において、課税売上割合の算定に際し共済掛金などの非課税売上に一定の率を乗じる等の方法により、控除対象外となる仕入税額負担を軽減するための見直しを行う。
- ④ 協同組合の性質、歴史的経緯等を勘案し、引き続き、国税・地方税について協同組合税制を堅持する。
- ⑤ 急速に進む社会・経済情勢の変化の中で、共済活動に課せられた社会的役割を果たすため、勤労者・生活者の自主、自発かつ自律的な活動を阻害することなく、相互扶助や協同・連帯の理念を実現しうる法制度の改善を行う。
8.安心・信頼できる社会保障の構築
(1)子育て支援
- ① 子育てにおける親の費用負担の軽減のための施策を講ずる。
- a)児童手当、児童扶養手当、出産・育児休業給付など、子育て家庭への給付を拡充する。
- b)妊娠・出産期からの相談や支援につなげられるよう、自治体の相談窓口を地域の中に拡充するとともに、2021年に改正された育児・介護休業法の施行も踏まえて、両親学級などの支援について、男性も参加しやすく出産・育児について共に学べる内容に改善・充実させる。
- c)必要な財源を確保したうえで、良質な保育・幼児教育など子ども・子育て支援策を充実する。保育・教育の人材を育成・確保・適正配置し、処遇を改善する。
- ② 子どもの暮らしと育ちを支える施策を社会化し、体系的に整備・推進する。国庫負担による教育予算を拡充する。
(2)年金制度の信頼の確保
- ① マクロ経済スライド制度による年金額調整のあり方について、現受給者の年金を守るとともに将来の年金受給世代が貧困に陥らない年金額水準を確保する。また、基礎年金はマクロ経済スライドの対象外とする。
- ② 公的年金積立金の管理・運用にあたっては、以下の内容を重視する。
- a)公的年金積立金の運用については、専ら被保険者の利益のため運用する。
- b)GPIFにおいて、保険料拠出者である労使代表の意思の確実な反映を可能とするガバナンス体制を構築する。
- ③ 最低限の生活ができる年金給付制度の維持・検討や納付負担の軽減のための施策を検討する。
- ④ 年金制度について、国民的議論ができるよう、情報提供を強化する。特に、若年層への制度の理解をはかるために情報提供を強化する。
- ⑤ 短時間労働者の被用者年金保険加入を速やかにかつ抜本的に拡大する。企業規模要件は改正法の実施を繰り上げるとともに速やかに全面廃止する。
- ⑥ 年金・医療をはじめとする被用者保険について適用基準を拡大し、基準を満たす労働者に洩れなく適用させる。
(3)安心の医療・介護体制の整備
- ① 医療分野
- a)医療従事者の確保と育成、処遇改善について、勤務環境の改善や多職種連携(タスク・シフト/シェア)を含め働き方改革を継続的に見直し、人材の定着をはかる。特に医師・看護師等の地域偏在を是正し、適正配置と連携体制の強化をはかる。また、人材紹介業者への依存を減らし、国や都道府県が主体となって、安定的な医療人材確保策を推進する。
- b)医療機関の役割分担と連携、在宅医療・介護の接続を強化し、患者本位・医療安全と情報提供を徹底、切れ目ない地域包括ケア体制を確立する。
- c)医療機関の受入・連携を円滑化し、高齢者救急の増加に備え搬送困難を防ぐ受入環境と地域連携を整備する。
- d)在宅医療の受け皿拡充に向け、総合診療医・家庭医や訪問看護師等の確保・育成と勤務環境・処遇改善を一体で進める。
- e)難病指定されている人や難病指定をされていない慢性疾患を抱えている労働者やその家族へのさらなる支援と難病指定の拡大のための対策を講じるとともに、難病に対する国民の理解浸透に向けた周知・広報を進める。
- f)高齢者の自立支援と健康づくりの推進に向け、栄養・運動・社会参加を基盤とするフレイル対策を地域包括ケアの中で強化する。
- g)後期高齢者医療の保険料の引き上げ、窓口2割負担による支払いの増額は受診に影響がでると危惧されるため、状況把握と分析など長期的な評価を行う。
- h)マイナンバーカードの取得は本人の選択にもとづくという原則を遵守する。マイナ保険証に対する国民の不安が払拭されるまでは、資格確認書を存続させる。
- i)診療報酬や補助金・交付金等で、物価・賃金上昇を機動的に反映する仕組みを整備する。
- ② 介護分野
- a)危機的な介護職員確保のための施策強化と財源を確保する。介護人材の確保・定着に向けて、やりがいや誇りを持って働くことがきる職場づくりをすすめるため、物価高騰や春季生活闘争での平均賃上げ率などを踏まえた介護報酬の十分な引き上げと、公費と介護保険料の負担割合の見直しを行う。
- b)介護人材確保と「介護離職ゼロ」について、自治体・保険者の取組を国が恒常的に後押しする。処遇改善の機動反映、研修・資格取得支援、保育・住まい支援等の就労環境整備、介護DXによる業務軽減、地域間配分の是正と広域連携の強化を一体で実施する。
- c)介護保険制度を持続可能な制度として継続していくため、地域づくりをベースとした仕組みづくりと施策強化、そのための財源を確保する。また、介護保険制度の見直しにあたっては、サービス内容の低下を招くことのないよう、利用者本位の見直しを行う。
- d)地域支援事業・総合事業の機能不全を改め、介護予防・生活支援の量と質を拡充するため、評価指標の見直しと財源の重点配分をおこなう。地域の助け合いだけに依存せず、優良民間事業者の活用と多様なサービスの質保証を推進する。あわせて、国・都道府県のプラットフォーム構築を具体化し、医療・介護・地域資源の連携で地域包括ケアを強化する。
- e)認知症を含む要介護1・2の方に対する介護保険給付(生活援助を含む)を引き続き維持し、総合事業への一律移行や給付縮小は行わない。あわせて、ケアマネジメントの10割給付維持、LIFE等エビデンスに基づく専門ケアの質向上、在宅基盤を支える訪問介護等の報酬適正化と人材処遇改善、認知症の切れ目ない支援体制(医療・介護・家族支援の連携強化)を行う。必要な財源は、中長期的な制度安定化の観点で確保・拡充する。
- f)在宅生活の継続を支える要となる訪問系サービスに対し、各種交付金・助成金、地域医療介護総合確保基金等を活用した経営改善の施策をさらに強化・実施する。
- g)「定期巡回随時対応訪問介護看護」や「(看護)小規模多機能型居宅介護」などの地域密着型サービスの拡充のため、「第10期介護保険事業(支援)計画」での展開計画策定と各種補助金を増額する。
- h)被介護者の権利保障とともに、家族介護支援事業を含め介護者に対する支援を体系的に整備する。ヤングケアラーやビジネスケアラーなど介護課題をかかえる人の増加を踏まえ、当事者だけの問題とせず地域や社会全体で介護を支えるよう啓発・情報提供・相談支援など仕組みづくりを強化する。
- i)地域包括支援センターを医療・介護連携の中核拠点として機能強化し、恒常的な運営費・人員拡充を国・自治体の責務で実施する。基幹センター整備を促進し、ケアマネジャーの計画的育成・研修と適正配置を進める。地域包括ケアの推進と情報提供・医療安全の徹底により、切れ目ない支援体制を確立する。
- j)地域で認知症の方の見守り活動に取り組むNPOや市民団体等に対する支援を拡大する。
- k)介護利用者の2割負担の拡大は、利用者の生活実態を正確に把握し、慎重に検討する。
- l)ここ数年の介護事業者の経営実態調査結果が実態とかけ離れた内容となっていることから、調査対象事業所の適正なサンプリングや回答率の向上を含め、あらためて在宅系サービス事業者の経営実態把握を正確かつ詳細にわたって行い、介護報酬改定につなげる。
9.くらしの安全・安心の確保
(1)食品の安全性確保および表示問題
- ① 食品衛生法や食品表示制度の改正について周知をはかり、事業者・消費者双方に対して、食品の安全確保や食品表示に関する理解度を向上させる。
- ② 食品衛生行政の体制は2024年度から基準と監視が分離し、消費者庁、厚生労働省がそれぞれを所管している。一定の連携がはかられてはいるが、改正食品衛生法施行5年後の検討が個別に行われている等の実態もあり、将来的に施策の機動性や有効性が損なわれるおそれがあるため、体制のあり方を改めて見直す。
- ③ 紅麹サプリメントによる健康被害に関しては、プベルル酸の短期の毒性試験の結果が公表されているが、製品の毒性影響の全体像の解明には至っていないため、原因究明、被害者救済、再発防止のため徹底的な調査・研究を行う。
- ④ 消費者庁、厚生労働省でサプリメントに関する規制の検討が行われているが、製造工程管理(GMP)の導入や健康被害情報の収集にとどめず、含有成分等の安全性確保等についても検討対象とする。いわゆる「健康食品」について、消費者の誤認や誤解を招く表示や広告への規制を強化し、消費者に対して制度、利用方法、表示の見方等について適切な啓発を行う。
- ⑤ これまでに十分な食経験がない食品(いわゆる「健康食品」の原材料や、細胞培養食品等の新規技術を利用した食品なども含む)全般について、新規食品に対応した適切なルールがなければ、将来、消費者・事業者双方に不利益が生じかねないことから、新規食品としての安全性確保の枠組みと、消費者の選択を確保するための分かりやすい表示を含む適切な情報提供のルールの検討を行う。
- ⑥ 安心・安全で安定的な食料を確保(食料安全保障の確立)するため、貿易に過度に依存することなく、食料自給率の向上と生産基盤である地域農業の活性化をはかる。
(2)防災や環境に配慮した住宅整備促進等の住宅政策の改善
- ① 特例措置制度等の恒久化と要件緩和として、良質で低廉な住宅の安定供給や流通促進、国民の住宅取得支援をはかるため、制度の恒久化や軽減措置の導入等を行う。
- a)住宅ローン控除制度の恒久化ならびに床面積要件の引き下げ
住宅ローンを利用して住宅を取得または増改築等の場合、一定の要件を満たせば住宅借入金等特別控除が適用され、その取得等に係わる住宅ローン等の年末残高から計算した金額が所得税額から控除することができるが、本住宅ローン控除制度は特例措置であり、制度の恒久化をはかる。 - b)住宅取得支援、良質な住宅供給をはかる措置の恒久化として、ア)新築住宅に係わる固定資産税の軽減、イ)居住財産の譲渡に係わる特例、ウ)不動産取得税に係わる特例、エ)認定優良住宅を新築した場合の特例等について特例措置の延長から、措置の恒久化をはかる。
- a)住宅ローン控除制度の恒久化ならびに床面積要件の引き下げ
- ② 全国で頻発・激甚化する自然災害に対して、安全で震災に強い安心住宅や省エネルギー住宅が求められ、一部で義務化の動きもあり、すでに政府による補助金制度も導入されているが、さらに、a)高耐震・高耐久住宅、b)省エネ対応住宅、c)耐震・バリアフリー・省エネリフォーム、d)液状化地盤改良工事等への政府の補助金制度の拡充、をはかる。
また、対応する省庁が国土交通省、環境省など複数存在し補助制度が複雑化しているので、行政窓口の一元化をはかる。 - ③ 甚大な自然災害の復旧に際しては、地域の実情等を十分に勘案した施策をはかる。とりわけ過疎地域等は都市部とは異なり、土地売却が困難である事に鑑み、政府・地方自治体による買い上げや公的住宅の新設を行うとともに、生活援助一時金支給等を含めた制度の確立をめざす。当面、当該地域の自治体、地域代表者をメンバーに加えた有識者検討会を政府として設立し、具体的な施策を検討する。
- ④ リフォーム業者は近年様々な分野からの進出もあり、その競争が激化し、中には高齢者等をねらった悪質な事業者も未だに存在しているため、「住宅リフォーム事業者団体登録制度」の周知や相談窓口の充実など消費者を保護するための対策を徹底する。
また、新築住宅に義務化されている契約不適合責任の適用を一定規模以上(請負金額300万円以上等)のリフォームにも適用する制度の創設をはかる。
(3)環境およびエネルギー政策
- ① 現在のエネルギー政策基本法では、「安定供給の確保」、「環境への適合」、「市場原理の活用」の3つを基本視点として定めているが、今後はこの3つの視点にもとづく取り組みを推進していくことに加えて、「安全の確保」と「国民の参加」を基本視点に盛り込む。
- ② 原子力発電は、ひとたび事故が起これば、人々の生活や健康、国土・海洋など広範な環境に甚大な被害をもたらす可能性があるため、原子力政策の重要な事項における決定においては、特に「国民の参加」による理解と合意を前提として進める。
- ③ 中長期的な日本のエネルギー政策を展望し、以下の課題に取り組む。
- a)原子力発電への依存を段階的に低減し、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざす。
- b)省エネルギー(節電)による使用電力量の大幅削減に向けた施策を推進する。あわせて事業者の省エネルギーをさらに進めるための支援制度の充実をはかる。
- c)効果的な省エネルギー技術の開発と普及のための施策を行う。
- d)再生可能エネルギーの導入量増加による系統制約に対しては、合理的な利用と中長期の計画的な系統形成を進め、計画の進捗状況について公開する。また、系統整備費用の負担方式は消費者にとって透明性の高い仕組みとする。
- e)電力・ガスなどエネルギーシステム改革における消費者参画を広げ、消費者・需要家が多様な選択肢から選択できるよう推進する。
- f)次世代送電網(スマートグリッド)のような革新的技術の構築を積極的に推進する。
(4)友好かつ安定的な経済連携、経済連携問題への労働者・消費者・市民の意見反映
国内外で調達リスクが高まる中、将来にわたり食料等の安定供給を確保するため、平和な国際関係や信頼に基づく貿易関係の構築が極めて重要であり、世界の国々と友好かつ安定的な経済連携を行う。あらゆる経済連携協定において、また国内外の食料安全保障にかかわる課題に対して、労働者・消費者・市民を含めた幅広い関係者との対話の場を設けるとともに、広く情報公開を行う。