2025.06.13
印刷する絶望を少しでも希望に|大船渡林野火災被災地の声

| 「大船渡よりそい・みらいネット」にメーデーの売上金を寄附 |
5月23日、中央労福協は第96回メーデー中央大会で「ふくしまの農業を応援!」をテーマに販売した福島県産ブランド米「福、笑い」の売上金を寄附するため、大規模林野火災が発生した大船渡市を訪問しました。寄附先は、岩手県内のNPO法人や弁護士などで構成されている、「大船渡よりそい・みらいネット」です。
岩手県では、2011年の東日本大震災や2022年の豪雨による出水被害など、災害が相次ぐ中で、被災者支援に取り組む人たちのネットワークが形成されています。今回の大規模林野火災についても、そのネットワークを活かして、発災日の2月26日からひと月もたたない期間で、被災者の生活相談に取り組む任意団体「大船渡よりそい・みらいネット」が設立されました。3月22日には第一回目の相談会が行われており、以降、週1~2回の相談会が行われています。
最初に、相談会が行われている大船渡市役所を訪れ寄附金を手交し、相談会の状況などについて話をうかがいました。 共同代表を務める熊谷新二さんは「相談会では、支援格差の問題や、生活再建にかかわる相談が数多く寄せられています。特に、居住実態のない倉庫などは補償の対象ではなく、結果として焼失した漁具に対して補償がされていないことが、生活再建を行う上で大きな課題になっています。」と話されました。漁具については、地元の漁協で、他地域の漁協などから借りたり、漁具を一括で購入したりして、漁業者に提供する方向で準備が進められています。

しかし本来は、生活再建に必須な漁具などは補償が欠かせず、今後の課題であると感じました。
熊谷さんは「今後、仮設住宅への入居が進むと、また別の相談が寄せられることになると思います。私たちの役割は絶望を少しでも希望に変えていくことです。引き続き、被災者の相談を受けて、行政など必要なところと連携しながら、支援を進めていきたいと思います。」と語りました。


また、相談を受けている弁護士の富谷耕作さんからは「発災当初は『飛び火』などの情報が少なく、避難している人たちはNHKの空からの撮影でようやく自分の家の無事を確認しているような状況でした。林野火災の特性として、地域全体が被災しているわけではなく、被災している家のすぐ隣には無事な家がある、といった状況で、支援格差の問題が生じています。支援を受ける側が負担を感じることがないよう、地域再建の課題もあわせて考えていかなければなりません。」と話されました。


こののち、共同代表の阿部知幸さんの案内で、被災現場を視察しました。阿部さんにはまず、東日本大震災で津波被害にあった商工会議所をご案内いただきました。東日本大震災で被災して高台移転された方が、今回また被災されているという例もあるとのことで、改めて十分な補償の必要性を感じました。その後、被災の激しかった大船渡市三陸町綾里の周辺を訪れました。阿部さんは「『飛び火』というものは言葉としては聞いたことがありましたが、初めて現実のものとしてみています。狭い地域でも無事な家屋とそうでない家屋がまだらになっており、家屋が無事でも漁具の倉庫が焼けてしまっている世帯もあります。それぞれ必要とされている支援が異なる中で、相談会の役割は大きいと感じています。」と話されました。

今回の林野火災では必ずしも山全体が焼けているわけではなく、木の下部が焼け、上は緑のままという箇所が多くみられました。今後、木々が枯死していく可能性があり、山の保水力の低下や積雪による倒木が増えることも予想されます。早急な対策が必要とされています。




仮設住宅についても、現場を見せていただきました。仮設住宅は赤崎町と綾里地区に建設されており、訪れたのは翌日に入居予定の綾里の仮設住宅でした。旧綾里中学校グラウンドに建設されており、19世帯が入居予定だそうです。今後、入居にともなうさまざまな相談が寄せられることが予想される中、相談会は最低でも来年3月までは続けるつもりであると、阿部さんは話されていました。
なお、寄附については、相談会に来ることができない方を訪問する際のガソリン代や、制度説明会時の会場費、相談に来た方で生活困窮されている方への食料支援など、「大船渡よりそい・みらいネット」のさまざまな相談活動に利用される予定です。
あなたにもできることがあります。
大船渡林野火災被災地への寄付にご協力
東北銀行 大船渡支店
普通 5051659
大船渡よりそい・みらいネット 共同代表 熊谷新二
(読み方:クマガイシンジ)