あるべき被災者⽀援戦略の策定研究会

災害大国と呼ばれる我が国では、地震、台風、集中豪雨、林野火災などの自然災害が毎年全国各地で発生し、その土地で暮らす人々に深刻な被害をもたらしています。しかし災害は「ある地域にたまにしか起こらない」という特性を持っており、社会的課題でありながらもさまざまな活動や人々の関心が一部にとどまってしまい、全国的な世論形成につながりにくくなっています。
また、普段私たちの暮らしを支えるさまざまな財やサービスは主として私企業や民間団体がその供給を担っている一方、災害発生時には慣れない地方自治体が急に担うことになります。ライフラインの復旧や救命救助が迅速に行われたとしても、「被災者支援」という側面が不十分では、被災地の安心した暮らしは取り戻せません。
この研究会では、平時から復興時までを一貫して見通しながら、被災者支援の問題点を洗い出し、体系的な改善案について整理します。被災者支援の構造転換を目指した具体的なステップを描き、被災者支援戦略のあるべき形を提言します。
新着情報

あるべき被災者支援戦略の策定研究会:第1回を開催しました
設置期間
2026~2027年度
研究会の構成

主査
菅野 拓
大阪公立大学大学院
文学研究科 准教授
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大阪公立大学大学院文学研究科人間行動学専攻准教授
人文地理学、都市地理学、サードセクター論、防災・復興政策、被災者生活再建支援手法のモデル化などを主として研究
内閣官房「防災庁設置準備アドバイザー会議」専門委員、内閣府「被災者支援のあり方検討会」委員、「令和6年能登半島地震復旧・復興アドバイザリーボード」委員などを歴任

委員
鏑木 奈津子
上智大学
総合人間科学部社会福祉学科 准教授
profile +
上智大学総合人間科学部社会福祉学科准教授、博士(社会福祉学)
生活困窮支援、地域福祉などを主として研究
厚生労働省「社会保障審議会福祉部会」委員、厚生労働省「生活困窮者自立支援制度人材養成研修 運営委員会」委員、公益財団法人社会福祉振興・試験センター「社会福祉士試験委員及び精神保健福祉士試験」委員等を務める。

委員
辛嶋 友香里
ピースボート災害ボランティア
渉外担当/現地コーディネーター
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公益社団法人 ピースボート災害支援センター(PBV)国内災害事業
現地コーディネーター
2011年、東日本大震災をきっかけにPBVの初期運営メンバーとして支援に携わり職員となる。被災地に向かう数万人のボランティアをオーガナイズ。
現在は、全国各地で講演や研修講師としても活動中。災害ボランティアや避難所運営の人材育成など各種「防災・減災」プログラムの開発、企画、制作、運営などを総合的に実施している。2024年「令和6年能登半島地震」以降、現地能登に入り、復旧・復興、被災者ケアに取り組んでいる。

委員
立岡 学
特定非営利活動法人
ワンファミリー仙台 理事長
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NPO法人ワンファミリー仙台理事長、一般社団法人パーソナルサポートセンター業務執行常務理事
「東日本大震災」の被災者支援に携わる。その後、災害ケースマネジメントノウハウ移転事業を休眠預金助成を受けて展開。2024年の「令和6年能登半島地震」では発災直後より、石川県にて自力での生活再建や住まいの確保に課題を抱える方々の支援に取り組んでいる。

委員
土岐 祥蔵
厚生労働省大臣官房
災害等危機管理対策室長
(元石川県能登半島地震復旧・復興推進部長)
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厚生労働省大臣官房厚生科学課災害等危機管理対策室長
障害者福祉、地域雇用対策、東日本大震災復興業務等
2021年4月より石川県庁出向中に2024年「令和6年能登半島地震」発災となり、2024年4月より能登半島地震復旧・復興推進部長となった。
2025年4月より現職

委員
吉江 暢洋
弁護士
日本弁護士連合会
災害復興支援委員会 副委員長
profile +
弁護士/川上・吉江法律事務所(岩手弁護士会)
東日本大震災復興業務、被災者支援活動に取り組む
盛岡市の重層的支援体制整備事業、岩手県の日常生活自立支援事業等福祉関連の業務にも携わっている
「日本弁護士連合会災害復興支援委員会」委員 (2021年~2024年は委員長)
内閣府「災害ケースマネジメント事例集作成有識者検討会」、「災害ケースマネジメントの手引書作成に関する有識者検討会」委員など歴任
設置趣旨
様々な社会的課題のなかでも災害はある特殊性もつ。環境問題・貧困・高齢化といった社会的課題は、あらゆるところに、いつも存在しているため、さまざまな活動が生まれやすく、問題のある法制度の改正を迫る世論も生じやすい。
しかし、災害はある地域にたまにしか起こらないため、活動や関心は一部の人や地域の問題にとどまりやすい。このような「ある地域にたまにしか起こらない」という特性を持つ社会的課題である災害が頻発するのが、災害大国と呼ばれる日本である。
災害大国であるのだから、当然、日本社会は災害対応が得意なのだと言いたいところだが、半分あたりで半分はずれだ。得意なのはハード整備や救命救助である。国や地方自治体が平時に実施していることを強化したり、早回ししたりしておこなっているからだ。いわば災害が起こると平時のプロが仕事を早回しして回復するのだ。
しかし、日本社会は被災者支援が得意ではない。一例をあげると、よくある避難所の生活環境水準は、難民支援などの人道援助の国際基準をはるかに下回り、長い間混乱が継続している。この理由はハード整備や救命救助の真逆で、人の暮らしを支えるさまざまな財やサービスは、市場に参画する企業や、ケアサービスを担う民間団体が供給しているのに、慣れない地方自治体が急に被災者支援を担わなければならなくなるからだ。
たとえば、食料を得ようと思えば人はスーパーマーケットやレストランに行くだろうし、家を買ったり借りたりしようと思えば不動産会社に行く。しかし、災害時には基本的な支援者は行政、特に地方自治体になる。地方自治体職員から見れば大きな災害対応は一生に一度あるかないかの経験であり、慣れない人が対応するためうまくいかないかも、これまでは個別法制度について立法・法改正がパッチワーク的に進められてきたため、平時のケアなどの支援原理とは異なる原理が貫徹し、運用も煩雑である。
このような状況であるから、個別の法改正を考える前に、平時から復興時までを一貫して見通しながら、被災者支援の問題構造を捉えたうえで、体系的な改善案について整理すべきである。この「あるべき被災者支援戦略の策定」を経ることで、混乱が継続する被災者支援を構造転換するための具体的なステップを描き、社会を変えることにつなげたい。
あるべき被災者支援戦略の策定研究会
主査 菅野 拓
(大阪公立大学大学院 文学研究科 准教授)