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あるべき被災者支援戦略の策定研究会:第7回を開催しました

 中央労福協は7月29日、くらし×福祉みらいプロジェクトの「あるべき被災者支援戦略の策定研究会」第7回研究会を開催しました。この記事では議事要録を公開します。

  • 日時 2026年7月29日(水)10:00~12:00
  • 場所 ZoomMeeting
  • 方式 Web会議方式

議事要録

1.開会

 事務局より、令和8年熊本地震への対応のため、土岐委員・辛嶋委員は欠席となり、後日録画によりフォローする旨を説明。

2.研究会

 冒頭、菅野主査より令和8年熊本地震はマグニチュード7.1、直下型で震源が浅く、シミュレーション上は数千世帯規模の全壊が想定されること、10年前の熊本地震と並ぶ災害規模として対応にあたるべき状況であることが共有された。

(1)「中間まとめ」に対する所見要旨

 ゲストスピーカー 野崎伸一氏
          厚生労働省 社会・援護局
          地域福祉課長/地域共生社会推進室長

  • 本年6月に成立した社会福祉法改正により、有事に備えた平時からの福祉支援体制の整備を進めている。DWATの平時からの登録の仕組み、市町村地域福祉計画への防災との連携の書き込み、包括的支援体制における防災の連携先としての明記などを法律上盛り込んだ。実務上も内閣府防災と共同で自治体向け説明会を実施したところであり、両府省の連携を深め、平時と有事をつなぐ取組みを進めていく予定である。
  • 中間まとめにある社会保障のフェーズフリー化、災害対応のマルチセクター化といった方向感は、我々も同じ方向を共有している。ただし中間まとめは発災時の対応まで見据えた実務的・具体的な内容であり、今回の制度改正は平時の備えを進める段階を中心としている。
  • OSとアプリケーションの概念整理が要る。平時の資源を1つのOSとし、有事特有の資源をアプリケーションとして整理した上で、それを動かすのは平時のOSであるという形をどれだけ実現できるかが重要。
  • 社会保障の相談支援をベースする方向性には賛同。同じ自治体が同じことを2度経験することはかなりレアであり、1,741の自治体に災害対応に特化したリソースを備えておくことは資源制約もあり難しい。平時で動いているリソースをどう有事にアクティベートできるかが重要で、その中核は生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関が筆頭に来るだろう。
  • 一方で、災害の規模にもよるが、困窮だけでカバーし切れるのかという問題意識がある。発災時の対応ノウハウを困窮の支援者だけに蓄積することで足りるかについては、個人的には楽観的に思えない。もう少し幅の広い包括的な支援体制をどう作るかを議論したい。
  • 支援対象の認定について、建物の全壊・半壊ではなく福祉的な要援護状況の確認によるという方向性は理解するが、これを誰がどのようなフローで行うのかは整理が必要ではないか。被災者1世帯でもトリガーとするのであれば、判定基準や判定事務の均一化が逆に問われる。
  • 市町村のキャパシティに制約が出ていることは全体としてその通りで、発災時にパンクすることをあらかじめ想定した業務設計が必要ではないか。広域化の先は市町村同士の横連携もあり得るが、隣接自治体も被災している可能性が十分想定されるため、災害の場合は一旦都道府県がバックアップ機能として適切と考える。
  • 災害時の協力を行う法人への加算給付による余力確保については、民間主体を有事に稼働させるような強制力をどの程度持てるかとあわせて検討することが必要ではないか。コロナ禍でも民間病院の受け入れで同様の課題に直面した。司令塔機能をどこが持つのかと併せ、有事に確実に稼働させる仕組みが要る。また、認定の地理的単位や、医療における社会医療法人のような公益性の高い法人類型の設計についても検討の余地がある。

 ゲストスピーカーとの討論要旨

  • 包括的支援体制の中で平時からの災害対策をどう進めるかが大きな関心。必要性は皆が分かっているが具体的なイメージが湧かず、モデル的な取組みを探しても全国的に数例しか出てこない。何を始めれば平時における防災の取組みと言えるのか、明らかでない状態にある。
  • 困窮者支援の枠で行うと、どうしても協働できる仲間の範囲が限られる自治体が多いだろう。医療や建築をはじめ多様な人とつながる必要を考えれば、包括的支援体制の枠組みの中で災害対応の体制を整備し、その中で困窮が推進していくという2段構えの方が理解が進むと考える。
  • この間、災害時に福祉専門職を含む各分野の人材が動けるだけのノウハウを持っていないという議論もあった。各分野の専門職が平時から発災時のノウハウを得ることも、分野を越えて行うことも考えられるが、人材育成について現段階でのイメージがあれば伺いたい。

 野崎氏

  • こうした議論では相談支援に目が行きがちだが、住民同士の地域の取組みも忘れてはならない。防災を入り口・テーマとすることで関われる人の裾野が広がる面もあり、地域づくりの取組みの中に防災を位置づけ、両輪としての相談支援を考えることになるのではないか。
  • 支援会議のような融通無碍に動かせる仕組みを含め、平時からケースベースで連携しておくことが大事。困窮者支援が軸になること自体は否定しないが、包括のメンバーとも日頃から顔の見える関係ができていれば、いざという時に強い。
  • 困窮者支援をこれをきっかけに強化する方向には賛同するが、社会・援護局の予算だけでは限界もある。また、平時だから福祉財源で見るという発想でなくてよいとも思う。例えば、個別避難計画も防災から地方交付税措置されている。防災の観点から機能強化できるのが一番よく、両方から財源を持ち寄る形を具体化できればよいのではないか。
  • 人材育成の具体像はまだ解像度が上がっていないが、重層的支援体制整備事業をはじめ包括的支援体制いうOSの上のアプリケーションの1つとして防災を位置づけることは重要と考えている。具体的な政策ツールも考えていきたい。

 各委員

  • 財源について、自治体ベースでは特交等と混ぜていくことになるが、国の枠組みとしては、事前防災推進事業のように防災庁に各省庁がモデル的なものを手を挙げる仕組みがある。ハードの防災に対するソフト版として枠を作れば、防災庁の予算が膨らめば各省庁がそこを取れる世界ができる。政権交代のタイミングや今回の熊本の状況を機に、その枠を拡幅させて国側の財源として使っていく方策もあるのではないか。
  • 困窮だけでは厳しいのは当然で、私はずっと重層に期待をしていた。重層で事前に動かすことになれば地域包括や保健師も含めていけるので、個別支援計画もその中で検討でき、困窮側と福祉側が絡みながら対応していける。プラットフォームとしては重層を平時にきちんと機能させておくことが大事だと考えている。
  • 田舎では個別避難計画を作っても対応できる福祉職が少ない。医療的ケア児等の避難を福祉の人だけで行うのは無理で、一部では近隣企業と提携し、有事に社員が避難を手伝う仕組みができつつある。こうした協力企業を災害対策基本法の登録被災者援護協力団体に指定し、個別避難計画の実現可能性を担保した広めの包括的支援体制を作ることを理想として考えている。

 野崎氏

  • 重層の立案当時、必ずしも防災という視点を十分に持てていたわけではないが、これは色々なことに使えるプラットフォームである。重層事業の法律効果として、属性ごとの補助金・交付金を一括交付することで各支援機関の制約を超えるということがあり、実施することで、包括的支援体制のプラットフォームとして機能させることができる。
  • 重層は令和8年度で581自治体、全体の3分の1まで手が上がっている。その中でモデル的な取組みをきちんと育てていくことが重要であり、そこで見えたノウハウを横展開のツールとしても使えるのではないか。
  • 民間企業や保健医療の関係者を含め、間口をどう担保できるかという意味でのプラットフォーム機能は非常に大事。自治体からは事業という一定の形があるからこそ取り組みが進む・旗印になるという声もあり、そこは大切にしていきたい。

 各委員

  • 困窮者支援を行う自立相談支援員が災害のことをやるのは間違いなく良いが、会計年度任用職員が担っている現状もあり、処遇がきちんとされているかという問題がある。能登半島地震の際、なぜ困窮の支援員を被災地に送らないのかと担当に尋ねたところ、財源の4分の1を自治体が出しているため自治体の了解が要るという話であった。国が10分の10であれば派遣させることもできるのではないか。
  • 高齢と障害はそれぞれの専門職が職域として確立しており、能登でも2つの団体が被災高齢者等把握事業にがっつり入った。一方、自立相談支援員には協会のような組織がないため、被災地で頑張らなければという意識になっていない。全国ネットワークに代わる自立相談支援員の協会のようなものが本来あるべきで、そうなって初めて自立相談支援が自分たちで何が必要かを考えながら制度を議論できるのではないか。
  • 自立相談支援員に研修として被災者宅を訪問してもらうと、普段から相談を聞いているのでスムーズに対応できる。ただし普段受けている相談はディープすぎるため、幅の広い被災者の相談では感覚のギャップが生じる。そうした違いを扱う研修も必要だが、一番は現場でなければ研修にならないと感じている。
  • 罹災証明については、税務関係の職員が判定するのは早くやめて、罹災証明判定士のような資格を作り民間に担ってもらった方が早く進むと考えている。
  • 居住支援については、重層のプラットフォームでも包括的支援でも居住支援協議会でも何でもよいと思っている。その地域のプレイヤーはほとんど同じであり、居住支援協議会が強い地域は協議会で、重層でやれるなら重層でという形で全く構わないのではないか。

 野崎氏

  • 困窮者支援が中心的役割を果たしていくということについては、全面的に賛同する。困窮者支援を含めて相談支援機関が全部乗っているのが重層というだけのことをお伝えしたかったもの。
  • 自立相談支援員の協会のような動きになるのが難しい背景のひとつには、困窮者支援は自治体からの単年度委託という仕組みのみであることがあるのではないか。一つのアイデアに過ぎないが、発災時に相談支援機能を果たすという要件を課す事業を防災側で設計できれば、防災と福祉のクロスが生まれ相談支援機関の安定性が向上することで、相談支援員の協会の動きにもつながっていくかもしれない。
  • 次の困窮法改正では困窮者の定義(3条)をどうするかが宿題となっている。平成30年改正で社会との関係性など様々な背景を書き込んだように、災害を社会的状況の1つとして明記することはあり得るかもしれない。提案いただくことが重要と考えるが、繰り返しになるが、平時の福祉制度ですべてを賄うことは難しいので、防災側からの財源を得るための仕組みも考えていただきたい。

 各委員

  • 最終的な生活再建の場面では家計相談支援の枠組みが必要になる。被災者の支援制度は特殊なので、日常の家計相談プラス被災者支援制度という枠組みで、給付や再建の選択肢を家計相談支援員が一定程度案内できるようになれば、通常の生活は自立相談が見るという形でも十分いける。
  • 被災地でやらなければと思った人が、防災庁系の予算で被災ケアマネのような資格を取り、通常の自立相談の現場に応援に入るという形で進められると非常に良いのではないか。
  • 応援の問題は災害対応にとって極めて重要な要素。被災者が被災者を支える構図が常に起こる中で、相談員自身も被災者になる。被災高齢者等把握事業と被災者見守り・相談支援等事業は老健局と社会・援護局が持ち、大きい災害の時だけ10分の10で国が出す枠組みになっているが、災害救助法との整理をどうするかは疑問として残っている。
  • 自治体間には地方自治法に基づく中長期を含む応援の設計があるが、委託事業者の世界はほとんど規定がない。困窮の委託先に職員を送り込む場合どうなるのかなど、ルールメイクをしておかないと自治体では判断できない。検討しなければならない部分だと考えている。

 野崎氏

  • 被災高齢者等把握事業にしても平時のリソースを使うのだから、例えば災害時に発動される事業は一部を共管にするなど、切れ目なく運営できるようにしておくことが重要。
  • 居住支援協議会のようなプラットフォームもあり、厚労省だけではなく色々なところに埋め込んでいくということ。プラットフォームは多い方がよく、選択肢は多い方がよいと考えている。各省庁が相乗りできるとよい。

 各委員

  • 特定非常災害になると国の10分の10で財源がつき色々と走り出すが、最後に平時に戻る時に苦労がある。平時にうまく戻せる体制を最初から作り上げられるかが本当に大事。今回の能登も、見守り相談支援員の雇用をどこに落とし込むかを検討している段階で、雇用のぶち切りでノウハウを持った人材が失われないよう、最初から考えながら議論していかなければならない。
  • 岩手が被災者支援総合交付金の終了時にその状況になった。見守り等に入っていた人の雇用が全て消え、重層で受けたいという地域も額面の減少で受けきれず、継続して見るべきケースも相談支援の終了により完了扱いとなった。断絶の問題は宮城よりも岩手の方が厳しい状況になったと感じている。
  • 岩手で事業が切れそうになった当時はまだ重層がなく、我が事丸ごとのモデル事業で手を挙げて、寄り添い支援のノウハウを持つ人材を雇用してはどうかという話をしていた。多少は続いたが、結局その後に雇用が切れてしまい、もったいない状況になっている。
  • 支援者としてのノウハウを持つ人がいなくなった後で、災害ケースマネジメントを担う人材を育てましょうとやっている。1回全員を手放してからまた育てるというのは本末転倒ではないか。

 野崎氏

  • 自治体をベースとした仕組みだけで雇用の継続や人材プールを担うのは、どの事業にも一定の期間があるため難しい。少し広域で設計できるとよいが、そこで人を抱えるのかという問題にもなる。自治体ベースの事業だけではしんどいかもしれない。

 各委員

  • 被災者支援をあまりに単品の事業で考えすぎてきたため、これまでのものにはフェーズフリー的な発想がほとんど入っていない。本来は関わりのあった良い人材を次の会計年度からこちらに来てもらうという余地もあったはずで、PSCはそれで動かした部分がある。最初からそれを考えていないとできない話であり、部局が縦に分かれる中で設計をしておくと違う効果がもたらされる。

 野崎氏

  • 課題が大きいということだけでなく、社会のインフラをどう整備していくのかという話であり、平時有事のシームレス化が今日の議論のような方向に向いていくようにしなければならない。単に連携している、事務連絡を流しているということではなく、現場の動き人に落とし込むことをんだことがどれだけできるかが重要ということだと改めて思った。
  • 概念や理念、思いだけでなく、その裏打ちとなるものは何かということになる。具体的に機能として制度の中にどう落とし込んでいくのか、具体的にどういう機能を持たせるのかが重要と改めて認識した。

(3)連絡事項

  • 評価委員会のメンバーが確定。第1回は8月18日に集合開催(5名のうち1名はオンライン参加)。研究スケジュールと中間まとめの2点について、第三者的・俯瞰的な立場からコメントをいただく。第2回評価委員会ではその取りまとめを行い、研究会にフィードバックする。菅野主査に説明や立ち会いをお願いしたい。
  • 第8回は8月10日に開催。以降の9月18日・10月6日も外部スピーカーのアポイントを取得済み。
  • 年末に向けた最終取りまとめ、政策提言や社会への発信の在り方についても、今後菅野主査と相談しながら検討していく。

(4)中間まとめに関する意見交換

 菅野主査

  • 本日の議論を受け、基準の作り込みの部分、また困窮ベースで書いていた箇所について、包括的支援や重層など複数の選択肢を持てる形に修正したい。自治体ごとにやりようがあることを書いた上で、法的・制度的に何を考えなければならないかを議論する必要がある。
  • 人材育成については、ゲストよりモデル事業を検討しているとの話があった。防災を含むいくつかのテーマで先進的な体制づくりを進め、それを見据えて財源面・制度面の協議が厚労省とできる体制に持っていきたい。

 各委員

  • 本日の指摘の中でトリガー論は非常に重要。被災者1人でも動くべきというのはその通りだが、補助率の問題で考えると難しい。どういう状態になったら国から10割の財源が出るのかが分からないと自治体が動けないという話になるため、ここはきちんと作り込む必要がある。
  • 現状では災害救助法や被災者生活再建支援法の適用がなければ、同じ支援を自治体予算で行うことになっており、横出し条例との違いを問われると説明が難しい。

 菅野主査

  • 原案では、困窮や重層、包括の世界で何らかの災害由来トリガーがあれば災害枠として別枠で財源が入るという設計をイメージしていた。そうすれば1人でも対応できるが、もう少しきちんと書き込む必要があるという指摘はその通り。
  • 自治体側が現ナマで出さざるを得ない状況はまずいという話であり、根拠や1人1人をどう見ていくのかという点にきちんと対応できるものにしたい。

 各委員

  • ちょうど困窮法の見直しの議論が始まった段階であり、よいタイミングで実り多い議論ができたと思った。
  • 災害が起きないと変わらないということを改めて感じる。今回も熊本で発災してまた動き始めるのだろうという状況で、能登の時に、西日本豪雨災害の時になぜ気づかないのかという思いがある。
  • 石川県では県庁で体制を設計した経緯があったが、今回はケアマネ協会が昨年夏から被災高齢者等把握事業に取り組んでいるため、その動きがあるだけでも違う。能登で知り合った関係から、既に準備しているという連絡も入っている。

 菅野主査

  • 福祉施設系の被害は今後見えてくると考えている。医療は既に県南の病院がかなり厳しく搬送をかけている状況で、福祉施設も同様の状況が想定される。熊本市は比較的被害が小さいとの情報があり、受け入れ側としての調整を行う予定。

今後のスケジュール

 第8回研究会:8月10日(月)牧先生ご講演・意見交換(2時間)
 第1回評価委員会:8月18日(月)集合開催
 第9回研究会:9月18日(金)ゲストスピーカー招請予定
 第10回研究会:10月6日(火) ゲストスピーカー招請予定

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