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あるべき被災者支援戦略の策定研究会:第8回を開催しました

 中央労福協は8月10日、くらし×福祉みらいプロジェクトの「あるべき被災者支援戦略の策定研究会」第8回研究会を開催しました。この記事では議事要録を公開します。

  • 日時 2026年8月10日(月)10:00~12:00
  • 場所 ZoomMeeting
  • 方式 Web会議方式

議事要録

1.開会

 熊本地震の発災から10日余りが経過し、各委員がそれぞれの立場で支援活動にあたる中での開催となった。本日はゲストスピーカーとして京都大学防災研究所の牧教授を招請。冒頭、各委員より自己紹介を行った。

2.研究会

 冒頭、菅野主査より令和8年熊本地震の現地現況として、保健医療福祉調整本部やDMAT等の活躍について報告がされた。

(1)講義要旨および「中間まとめ」に対する所見要旨

 講義テーマ「都市復興から生活再建、なりわい再建に」
 ゲストスピーカー 京都大学防災研究所 教授 牧 紀男 氏

  • 災害復興政策は、支援対象を「地域/個人」、所有主体を「パブリック/プライベート」とする4象限で整理できる。関東大震災以来の日本の復興のメインストリームは、道路・公園・上水道といった公共のインフラ整備と、公営住宅の供給という右側2象限であり、これが「土建国家型復興」と呼ばれてきたもの。建築学会ではこれを近代復興と呼んでいる。
  • 阪神・淡路大震災以降、この構図が大きく変化した。区画整理等の面的整備がカバーできたのは面積で5パーセント程度、公営住宅も2、3割にとどまり、それ以外に何もないという反省から生活再建支援法が生まれた。行政は行政の所有物のみを支援するという原則から、個人への支援に一歩踏み出したことになる。
  • 面的整備は縮小傾向にある。国負担100パーセントであった東日本大震災と異なり、1パーセント、0.1パーセントでも市町村にとっては億単位の負担となるため、自治体が忌避する。国土整備が進み、やらなくても大丈夫になってきたという事情も大きい。
  • 仮設住宅は1953年に救助法へ位置づけられて以降、対象は生活保護世帯・母子世帯等に限られ、供給数も少なかった。雲仙普賢岳の警戒区域設定、奥尻島の事情を経て、1995年の阪神・淡路大震災で被害の程度にかかわらず希望者に供給する方針が示され、生活再建支援としての応急仮設住宅へと性格が変わった。以降、木造・賃貸型・ムービングハウス等へと多様化し、質も向上している。
  • 一方、前回の能登半島地震では仮設1戸あたり2,000万円程度になっており、2,000万円を出すなら仮設なのかという課題がある。借上型であれば月6万円、年70万円、敷金礼金を入れて100万円としても5年で500万円であり、コスト面からも借上型が合理的。仮設住宅と恒久住宅(公営住宅)をきちんと接続する制度設計が必要であることは、東日本大震災に関する建築学会提言でも述べており、一貫した考えである。
  • 被害認定の精緻化が最大の課題。阪神・淡路大震災当時の罹災証明は申請ベースで運用も相当に緩やかであり、義援金の配分程度にしか使われていなかった。それが生活再建支援法の基準となったことで精緻化を求められ、現在は内部調査で1日3件程度まで手間が増えている。生活再建イコール住宅再建なのか、建物の被災度が生活基盤への著しい危害を示すのかは、改めて考えるべき。あれだけの人員を投入するのであれば、被災者の話を聞くなど他にできることがある。
  • 公費解体も大きな問題。制度上の根拠は明確でなく、2007年に生活再建支援法の対象が広がった際に国が持つ形となり、以後デファクトとして続いている。実際には直せる建物が壊されており、統計上も「古い建物ほど壊す」という傾向が明確に出る。予算規模は生活再建支援法と同程度で、東日本大震災では数千億円単位に及んでいる。
  • 公営住宅は行政としてはできる限り量を減らしたい対象となっており、払い下げも一部行われている。前回の能登半島地震が公営住宅払い下げの第1号で、東日本大震災の相馬市にも同様の事例がある。払い下げ後に住民が自ら増築・改修して元気になるという効果も見られる。孤独死を防ぐ設計としてコレクティブハウジングやリビングアクセスといった試みも行われてきた。
  • 個人への支援と地域(まち)の支援が紐付いていないことが大きな課題。個々人への支援はどこで再建しても行われるため、実際には半分程度がまちを出ていく。あわせて、震災から4年後以降の「賑わい」の課題も重要で、有効求人倍率が0.32まで落ち込んだ阪神の経験を踏まえ、なりわい支援・グループ補助金と生活再建支援をどうつないでいくかが問われる。
  • 中間まとめについては、救助法を生活再建支援のツールと位置づけるのかが論点。救助法はあくまで最低基準を定めるものであり、仮設住宅・応急修理・生活再建支援法・公営住宅、さらに生業再建までを含めた全体の枠組みで考える方がよい。応急修理も行政発注で金額も低く、極めて使いにくい制度になっている。
  • 「住宅特化型支援への転換」という方向性には賛同するが、住宅を最前線に出すのかは検討の余地がある。住宅というとフィジカルな建築物の印象が強いため、「住まい」という言葉の方が生活も含む広がりがあってよいのではないか。
  • スクラップアンドビルド型からの転換にも賛同するが、公費解体の抜本的な見直しと一体で考える必要がある。半壊で解体するとみなし全壊となり支援が1ランク上がる一方、ある程度の収入があり公営住宅に入れば5年後10年後には家賃が大きく上がるため、本来は直した方がよい場合も多い。2007年の能登半島地震で修繕の枠組みが充実していたのは、公費解体がなかったためである。
  • 災害対策基本法関係について、市町村が被災者支援の役割を全て担うことは難しい。アメリカでは大規模災害時に避難所は赤十字、生活再建支援業務は連邦政府が担い、州政府間の連携システムも働くため、市町村職員がこれほど疲弊することはない。日本で国や都道府県がどこまで前面に出るのかは検討が必要。
  • みなし仮設を家賃補助的施策に統合する方向については、公営住宅側をどう考えるかと不可分。阪神の際には棟単位・部屋単位で行政が借り上げる仕組みが機能していた。生活困窮者自立支援法・住宅セーフティネット法とどうつなぐか、国交省住宅局にもさらに関与を求めたい。

ゲストスピーカーとの討論要旨

 各委員

  • 復興事業における面整備が減っているという指摘に関連して、東日本大震災では人口規模にかかわらず競うように面整備を行っていた記憶がある。一方、能登では朝市周辺程度で、珠洲の宝立なども入ると思っていたが今のところない。これは時代の潮流によるものか、土建型復興をやめようという流れなのか、あるいは能登が過疎地であるためかを伺いたい。

 牧氏

  • 印象での回答になるが、国負担100パーセントであった東日本と異なり、1パーセントでも0.1パーセントでも市町村には億単位の負担が生じるため、相当に忌避されている。法律も道路が狭く実施するかと思ったが、珠洲は人口1万人を切っており、最後は費用負担が理由だと土木コンサルからは聞いている。国土整備が進み、やらなくても大丈夫になってきたという面も当然ある。

 各委員

  • 住居確保給付金は資産収入要件等が厳しいといった点で、限られた方にしか届いてないという課題が指摘されている。一定所得以下かつ職を失っている方を基本的な前提として、最長9か月の家賃相当額を支給する仕組み。コロナ禍に支給決定が30倍以上急増した。有事のみならず平時も含め、対象拡大をどうしていくいくかが課題。
  • 住宅セーフティネット法は基本的に空き家対策であり、借りられない人を空き住戸に入れるという視点にとどまっている。拒まない住宅として登録するセーフティネット住宅は全く進まず、福祉的支援を付けた居住サポート住宅も、大家側のメリットがないため進んでいない。
  • 住居確保給付金の上限は東京23区で単身5万3千円、3人から5人世帯で7万円と非常に低い。
  • 生活保護の住宅扶助基準と同額であり、岩手では単身世帯3万1千円となる。あくまで補助額の支給上限であり、収入・資産要件と求職活動要件も課される。コロナ禍にはこれらの要件が外されたため、突発的に困窮した場合にも支給される運用となった。災害時に活用するのであれば、この要件をどう扱うかを議論することになる。

 牧氏

  • 災害時に活用する場合、9か月では足りないのではないか。位置づけとして仮設住宅の代わりなのか、恒久住宅の代わりなのかを伺いたい。

 各委員

  • 自分の中では仮設住宅の代わりでよいと考えている。仮設住宅扱いとすると全額を見る必要があり、三者契約による事務負担も膨大になるうえ、生活を見る人が誰もいなくなる。コロナ禍の運用では少なくとも相談支援が必ず介在する枠が維持されていた点がよかった。
  • 借家暮らしの方には2年間の仮設供給は本来不要のはずで、数か月だけ使って次に移るという摩擦を減らす施策として使えるはず。一方、持ち家が全壊し再建に時間を要する場合には長期の対応も必要で、罹災判定次第で一律となる現状には無理がある。相談支援が必ず介在する形が望ましい。
  • 災害時はやはり三者契約がよいのではないかと考えている。平時に住まいを貸してもらえない人は災害時も貸してもらえないため、最初の2年程度は三者契約としないと、建設型にしか行けない人が必ず出てくる。住まいの選択という観点から必要ではないか。
  • データ上は三者契約型のみなし仮設でも大家による選別が生じており、排除率は家賃補助と原理的に変わらない。一方で三者契約は行政側の事務負担が凄まじく、宮城では処理のために50人から60人規模の雇用を要した。
  • そうであれば、平時の居住支援協議会や居住支援法人が間に入り、拒まれない形をつくることで自治体の負担を減らす方法があるかもしれない。三者目が居住支援法人ということもあり得る。

 牧氏

  • 居住支援協議会がもっと仮設住宅の提供に関わるのがよい。熊本地震では関わったが能登では入っていない。プレ協と同様に、居住支援協議会が基本的な受け手となる形になれば非常によいと考えている。

 各委員

  • 住宅セーフティネット法を中間まとめに入れているのは同じ意識による。普段から住宅を扱っている人が担うこと、平時のスキームをそのまま使うことが混乱を最も減らす。住宅セーフティネット法には被災者が明記されており、源流は住生活基本法、さらに遡れば住宅建設五ヵ年計画にあると考えている。

 牧氏

  • 厚労省だけでなく、国交省住宅局の担当者にも研究会のメンバーに入っていただくことが重要ではないか。
  • 救助法について、市町村ではなく国・県が前面に出るというイメージなのかを確認したい。

 各委員

  • まずはそのように考えている。市区町村に持たせるにはあまりに重い仕事ばかりが降っており、今回の熊本でもオペレーションが機能していない。在宅・車中泊、広域避難、物資のラストワンマイル、市町村の機能不全といった課題は2016年に全て挙がったものであり、全くクリアされていない。
  • 住民サービスは市町村という理由で割り振られているが、避難所運営は市町村ですらやったことがなく、ノウハウのない業務の押し付け合いになっている。長期化する局面では県が一括し、民間団体と平時から組んでおいてソフト面にNPOや社協が入るスキームの方がよい。1,700に備えを求めるより47に備えてもらう方がやりやすい。

 牧氏

  • 熊本は災害廃棄物で県が前面に出た一方、石川県は広域解体で県が出なかった。環境省も広域解体は県が担う方向を進めており、生活支援も同様に県が担い、知事会等が後方支援する形が考えられるのではないか。

 各委員

  • 報告書案では都道府県の役割を少し増やす程度しか書かれていない。FEMAや赤十字が代わりに担うという仕組みを視野に入れることも考えてよいのではないか。地元の人は被災するため戦力にならない、させない方がよいという観点も含めて。
  • 世界的な潮流はすでにそうなっており、FEMAもイタリアも同様。市町村に全てやらせるのは根性論・精神論であり、物理的に動くはずがない。今回も保健医療福祉調整本部系のオペレーションで持ちこたえただけで、それがなければ被害はさらに拡大していた。
  • 生活困窮の分野で公営住宅の議論が出てくることは少ない印象。
  • 生活困窮者自立支援の居住支援の中で、公営住宅の目的外使用という形でシェルターとして使う方向を進めたいという程度で、あまり出てこない。

 牧氏

  • 本来、公営住宅が余っている地域であればそうした形で活用するのが本来の姿だが、行政としてはもう建てたくないというのが最も大きい。困窮者対策としての公営住宅をどう位置づけるかは、借上公営も含めて改めて議論があった方がよい。アフォーダブルハウジングのように、都市部で低廉な家賃で入居できる仕組みとの関係も含め、位置づけ直しが必要。団地型の公営住宅を続けている国はもうどこにもない。

 各委員

  • 戦後、住宅政策を厚生省と建設省のどちらが持つかという経緯があり、厚生省案である厚生住宅法案は住宅にソーシャルワークを組み合わせ生活指導まで行うものだった。結果として建設省案である公営住宅法に一元化され、社会保障の中で住宅施策が痩せていったのが日本の実情。久しぶりにできた家賃補助的施策が困窮の住居確保給付金ということになる。災害時は1953年に位置づけられた古い仮設住宅の枠組みが残っているため、齟齬が生じ続けている。
  • 岩手では沿岸部から内陸へ移った被災者向けの公営住宅を整備した。沿岸部には住む場所も産業もなく、企業も仙台に集約して撤退が進んでいた。広域避難で3年4年が経過すれば生活基盤ができるため、避難先に公営住宅があるとよいという話に自然となる。
  • 今回の熊本も広域避難はあり得るが、できるだけ近く、せめて熊本市程度でないと八代などは人口が大きく減るのではないか。避難先とその先の公営住宅をどこに作るかまで本来は考える必要がある。
  • 国が空き家対策を本気で行うのであれば、日本中の空き家を国が管理して全て公営住宅扱いにすればよいと考えている。管理する居住支援法人に税優遇を行い、災害時には積極的に提供することをあらかじめ確約しておくなど、さまざまな仕組みが考えられる。
  • 居住支援法人への公営住宅入居者選定に関する優遇や、自治体条例で定める入居者選定を抽選型以外にするだけでも利用は変わり得る。民間住宅を借り上げるアフォーダブルハウジング的な発想を平時から持っておけば、災害時にそれを使える。みなし仮設は仮設住宅扱いする民間賃貸住宅であり本質は同じであるにもかかわらず、連動もシームレス化もできていない。
  • 公費解体はもう少し書き込む必要があるというのが本日の大きな反省点。今回も大規模なスクラップアンドビルドとなる懸念がある。前回の熊本地震では参議院選挙前に半壊でも仮設入居が可能となったため、公費解体をせずとも住む場所が確保できたが、現在の運用では公費解体を前提に仮設へ入る流れとなる。
  • 修理でも相当額が出るという情報を早く流さないと、支援者間に公費解体を進める流れが一気に広がる。半壊でどうにもならない世帯が、公費解体により支援金を全額受け取る方向に流れがちである点を懸念している。
  • 県あるいは国として異なる方針を打ち出してもらう必要があり、政治判断を要する。公費解体するより使えるものを使ってもらう方が人口流出の観点からもよく、あるいは補修に特別な予算をつけるかのいずれかしかない。
  • 半壊でも改修中は仮設に住めることになっているのだから、その分を含めた仮設の必要数を考えておく必要がある。
  • 現状は応急修理しかなく、金額も70万円台にとどまるため水回りも直せない。ここを大幅に引き上げることは単純な方策としてあり得る。ただし住めるか住めないかは本人だけでは判断が難しく、建築等の専門家とケースマネジメント的な相談の枠組みが不可欠。

 牧氏

  • 建築としては基本的に全て直せる。あとは費用の問題であり、専門家によって意見が分かれる点が課題。

 菅野主査

  • おおよそ500万円なのか1,000万円なのかというオーダー感は出るはずで、それによって被災者の意思決定は大きく変わる。
  • 本日の議論を踏まえ、公営住宅を含む住まいの部分を一度連結し、家賃補助的施策や居住支援の関わり方も含めて改めて設計し直す。文章化した段階で牧氏に再度確認をお願いしたい。
  • 被災者生活再建支援法についても、全壊でいくら・半壊でいくらという基準が置かれていることが、罹災証明を出さなければならない根拠となってしまっている。当初その意図はなかったものが形骸化した結果であり、基準の見直しは不可欠。公費解体を含め、住宅ストックをどう見るかを書き込む必要がある。

今後のスケジュール

 第1回評価委員会:8月18日(月)集合開催
 第9回研究会:9月18日 ゲストスピーカー招請予定
 第10回研究会:10月6日 ゲストスピーカー招請予定

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